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『虎に翼』で描かれる呻き

『虎に翼』がけっこうすごいと思うのは、いわゆるマイノリティの言葉にならない叫び、呻きというものをしっかり描いていることだ。
 寅子の穂高先生に対する憤怒もそう、よねの寅子に対する一見不条理に見える怒りもそうだ。あのシーンだけを見ると、寅子もよねも八つ当たりに見えちゃうし、見境がなく、「なにも怒らなくても・・・」「かわいそうな人だな」と見ている側はついそう思いたくもなる。
 通常、テレビドラマではこういうシーンは描かれない。観ている側が引いてしまうからだ。脈絡がなくて真意が伝わりにくいからだ。
 けれども、現実の様々な場に立ち会ったとき、一見脈絡のない怒り、憤怒みたいなものに出くわすことがある。こちらにはなんの心当たりもないものだから、戸惑うし、「なんでそんなに怒られなあかんねん」と叫びたくもなる。しかし、「脈絡がない」「わけがわからん」とみるのは、この社会でわりと居心地よく生きてきた側の受け止めなのかもしれない。
 虎に翼はこうした呻きのようなものをしっかりいれてくる。この社会の歪みのなかを力いっぱい生き通すことで生み出されたマグマのようなものを。

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