【感想】仮面ライダー鎧武1~11話

『舞台 鎧武外伝 仮面ライダー斬月』から入ってしまった仮面ライダー鎧武ですが、ようやく本編を見始めました。先に舞台を見てしまったがために本編序盤では出番が少なく、たまに出てきても悪役ムーヴが目立つ呉島貴虎に早々に肩入れしてしまっているのはご愛嬌ということで……。

・雰囲気は明るい

 聞けば脚本側のイメージとしてはカラーギャングの抗争だったものの、子供番組にはふさわしくないとダンスバトルにすり替えられたとのことで、出だしの雰囲気は同じ世界観を共有しているはずの舞台で、開幕早々貴虎が撃たれて落ちたとは思えないほど明るいですね。とはいえ、戒斗や舞の過去、ユグドラシルの暗躍、インベスゲームに潜む危険といった不穏な要素は随所に垣間見えている……。

・紘汰さん

 20歳のフリーターで、姉からちゃんと働きなさいと言われながらも「子供の遊び」ことビートライダーズのダンスバトルには未練たっぷりのご様子。チーム鎧武のメンバーの前では「子供遊びはもうやめた」と言いながら、部屋には鎧武のポスターを貼っているような煮えきらなさ。戦極ドライバーを手に入れた紘汰がチームに戻ってくる際、舞は「いつも人のことばっかり考えて!」と怒りますが、正直私としては紘汰はチームへの未練がもともとあったところに「戦力になる」という大義名分を得て、渡りに船と戻ってきたような印象があるので、舞の怒りは少々好意的解釈がすぎるような気がしました。穿った見方かもしれませんが……。

 とはいえ、自分に力があれば人のために使える人なのは間違いない。自分たちを「モルモット」呼ばわりしたにも関わらず目の前で情けなく震えている大人でさえ、結局助けましたし。周囲の登場人物に比べると屈折が少なく、どうあれ正直で善良な印象は受けるので、これから周囲に揉まれどうなっていくのか……?

・戒斗

 ビートライダーズの中でも1人だけやたら「強さ」に対するこだわりが苛烈だなあと思っていたら、かつて自分の家族の平穏を「力」で蹂躙したユグドラシルを前に、踏みにじられないためには力を持つしかないと考えたよう。設定的には紘汰とまさかの(?)同い年で彼もまた20歳ですが、紘汰がチームを「子供の遊び」と呼び、どこかややこしい大人の世界とは違うぬるま湯のように思っているのと対照的に、どこまでもまっすぐ真剣に、力を証明するための唯一の場と捉えている感じ。

 悪人ではないものの、信念がハッキリしているだけ強さのためならかなり手段を選ばない姿勢が明らかになっていて、紘汰にも「あいつとはとことんやり合うしか無いのかも」と言われていますが……? ところで紘汰の「窮屈な生き方してんな、あんた」との言葉に同意しかない。

・光実

 現状一番よくわからない。どうしてあそこまで自分の境遇に関して屈折した感情を抱くようになったのか。利口なのは超よくわかるのですけど、小賢しいという言葉がよく似合ってしまう。特に兄に対してやっていることが、もう10歳若ければ「やんちゃな弟のいたずら」で済んだかもしれないけど、もう高校生になっていることを考えると正直ドン引きしてしまうような常識のなさで、一体どうしてこうなってしまったのか非常に気になる……。今後の展開で自分が彼を理解できることに期待です。

・呉島兄弟

 シドの口から「親はユグドラシルの重役で~……」との言及はあったものの、まず親の影が全然感じられない兄弟ですね。兄の弟に対する無理解もなかなかのものではあるのですが、それでも弟として気にかけ期待している兄に対する、弟の悪びれもなく仕事道具をくすねるあの食い違い方は本当にどうなっているんだ。そして兄の弟に対する無理解が「まさか身内が盗むまい」という信頼を含む、という点があまりにも酷い。

 普通兄弟ならここまで食い違う前にもうちょっとその都度ぶつかり合って軌道修正できそうなものですが、それが出来ずに来てしまったのは、現状身内に対する態度に一番問題があるように思う光実だけでなく、呉島家の家庭環境全般に根深い問題があったのだろうなあ……。第一子と第二子の間に10の年の差って結構なものだと思うのですが、ひょっとして腹違いとかそんなことありませんか……?

 しかし光実、これ兄が相手でなければ変わり種のロックシード盗むなんて真似、リスクを考えてしなかったと思うんですよね。自分に甘い兄だから自分を疑わないだろうという読みと、万が一バレても兄だからという打算の上にやってる気がして、本当に「小賢しい」と言いたくなってしまう。

 弟が兄の正体にグングン迫る一方で、兄が弟に迫る機会を尽く潰す脚本ですが、この食い違いが決壊するのはいつなのでしょうね……。きっとろくなことにならないよ……。いやあ、兄の名が「貴”虎”」で弟が「”龍”玄」に変身するなんて、実に含みがありますね。

・貴虎

 貴虎の率いる「プロジェクト」が何であるかは舞台で予習してしまっているので、彼に課された重圧を思って本当に必要以上に肩入れしてしまうわけなんですが……。しかし本当に強いですね。無駄と容赦がない。ビートライダーズの戦いにプロの傭兵が首を突っ込んだことに対して眉をひそめていましたが、そのプロの傭兵をあっさり変身解除に追い込む圧倒的な強さ。主人公のトラウマ。

 現状悪役的な立ち回りが目立つ貴虎ですが、まあちょっと彼の気持ちもわからないことはないのですよね。きっと貴虎は名家の嫡子としてエリートコースを歩んできた人だと思うのですけど、そんな人からすれば20歳にもなってどっちつかずにふらふらしている紘汰のような生き方はまあ、基本的に心証は良くないでしょう。ひょっとしてここで「自由」を感じて憧れてしまうと光実みたいなことになるのだろうか……?

 それにしてもあまりにも部下に恵まれないわ弟はかなり悪い子だわで、既に不協和音が響いていてこの先どうなってしまうのか大変心配です。

・呉島貴虎と戦極凌馬

 戦極氏の「他”の”モルモット」という言葉選びに不覚にもゾクゾクしてしまったことからまず白状しましょう。ビートライダーズを「モルモット」呼ばわりしている貴虎ですが、自らもまた実験のモルモットであるということは戦極氏との共通認識な模様。なんかこういうところが難しいんですよね、貴虎。生まれや己の能力に付き纏う責任に殉じる覚悟があまりにも苛烈で、「感じの悪い良家の御曹司」というふうには到底片付けられない気高さなんだよな。それはそれとしてプロジェクトのトップを一番危険な実験の被検体にしちゃうの大丈夫なのかい?

 「俺は人類の未来を切り拓く」とまで決意を固めている貴虎に対し、戦極氏の「何が君をそこまで駆り立てる?」という興味深そうな様子。

・大人と子供

 主に子供で構成されるビートライダーズ、大人と子供の間にいる主人公、大人の集まりのユグドラシルという構図になっているのかなーと思いますが、その「子供側」と「大人側」が11話にして完全に接触。自分たちのゲームが大人の手のひらの上であったことに当然怒りを顕にする一方で、「大人というのは、ただ子供でいられなくなる、それだけだったんだ」という言葉と共にゲームを主導している呉島貴虎と戦極凌馬のカットがくるの、なんとも意味深。続きを見ようか。

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