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町田康自伝とギケイキ

町田康が遂に自伝を出した。自分語りはカッコ悪い事として今まで語るつもりはなかったらしいが、影響を受けた作家、笑いについて、作詞方法等かなり赤裸々にわかりやすく語っている。これは必読の一冊だ。

そんな町田が書いた「ギケイキ」はギャグ色満載の歴史小説で、曰く歴史の勉強を趣味でやってた延長からできてしまった作品という事で、INU時代の「牛若丸なめとったら〜」にもわかる通り義経には若い頃から相当な思い入れがあったのだろう。

司馬遼太郎のお堅い「義経」とは異なり、ジョンレノンやハルクホーガンが登場し、言葉遣いも茶目っ気たっぷりでとても読みやすい。

まるでサーカス団員かのように義経が早業を使い、マッハのスピードで走ったり、私達がイメージしてる武蔵坊弁慶とはかけ離れた気色の悪い弁慶との闘いは、山田風太郎の忍法帖シリーズのようで笑ってしまう。

そして興味深いのが、例えば義経は源義朝の九男として産まれ九郎と呼ばれているのは一般的だが、

実は八男として産まれ祖父為義の八男、鎮西八郎為朝に遠慮して九郎と名乗った等、王道説よりマイナーな説で描いているのも面白い。

そもそも歴史上の人物や事柄は、有名な作家による推測が、あたかも事実であるかのように広まってしまっている場合が多いので、色んな説を知ったり覚えたりするのも偏った見方にならずに、自分なりの楽しみ方ができていいと思う。

歴史ものが苦手な人にも、町田康を読んだ事ない人にもお薦めの一冊だ。

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