川合大祐「スロー・リバー」3

 川合大祐「スロー・リバー」の一句観賞3回目です。わたくしごとですが、すっかり春ですね。では、早速観賞に移りましょう。


中八がそんなに憎いかさあ殺せ
 まず、中八とは575の真ん中が八音あることだ。この句も真ん中が八音。中八は現在、川柳や俳句では嫌われている。さまざまな方に理由を訪ねたことがあるが、リズムが悪い、伝統的に575だから、分からないけど禁止されているなどが理由であった。掲句は句集冒頭三句目に配置されている。やはり、川合大祐の挑む姿勢がここでも見れた気がする。中八を嫌っている方々を納得させるには、これしかないという理想的な句だ。ただ、リズムとして中八をさらりと使って見せているだけではなく、この句には中八である必然性がある。中八に寄り添い、さらに中八という存在を自身に取り込んでいる。殴られている右頬の代わりに左頬を差し出さず、左頬で相手を殴っているようなものだ。これには一音や一語一語に句として必然が伴うかという読み方をする方々も認めざるを得ないだろう。この句のすごさは専守防衛の姿勢にも見受けられるが、中八というだけで批判する人には強烈なカウンターとなるだろう。
 しかし、勘違いしてはいけないのは、川合大祐自身、575の定型を信頼し、愛しているということだ。それは句集を一読すれば分かる。


川合大祐「スロー・リバー」あざみエージェントより
https://www.amazon.co.jp/dp/4906849261/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_T1PBCFB38CP6833WKH7K


川合大祐さんが2021年4月9日に第二句集を出します。書肆侃侃房さんより「リバー・ワールド」です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4863854536/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_MVSVADFECPQ4B9W1J2HV
(了)

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