見出し画像

空區地車の力学 24.曳き手が盛り上がる時

ここまで、おおよその曳き方は書きました。
祭りといえば”春のパンまつり”という方にも、ぜひとも住吉のだんじり祭を体験していただきたいと思います。勘所さえ押さえれば曳けるようになります。心に健全な不良性を持つ方は虜になります。
まずは子供と一緒に曳いてみてください。子供会には世話役のお母さん方もいます。お気軽にお問合せを!

本blogの20、21で空區地車の巡行コースの難所をご紹介しましたが、この章では、「地車を曳いていて、こんな時に盛り上がる~♪萌えベスト5」を挙げてみましょう。私などは、ただ地車を曳いてさえすれば嬉しく楽しいのですが、以下の「ベスト5」は曳き手の私が二重丸のキュンとくるシーンです。

第一位:宮入
住吉の町に住吉の幸せを願って降臨された神様がお役目を終えられ昇天されるのを感謝を持ってお見送りする神事「だんじり祭り」最大の目的である「宮入」に燃えない曳き手はいないでしょう。

第二位:とばせ、もどせ
地車が全速力で轟音を立てて走る「とばせ」は圧巻、豪快そのものです。「とばせ」は、パフォーマンスの一つであるにもかかわらず、このために参加している曳き手もいるほどです。

第三位:ちどり
苦しくもあり楽しくもある。しかし、よほど曳き手が結束していないとうまくいかないのが「ちどり」です。それゆえモチベーションが有形無形に作用し、地車が力強く優雅に見えます。

第四位:まわせ
道幅の広い交差点で右折時に行なう「まわせ」も面白い所作ですが、危険が伴うので、指示を出す四隅責任者がベテラン&好き者の時のみ(?)。町曳き(5月4日)でしか見られないシャレオツ(お洒落)なパフォーマンスです。
私が最後に体験したのは15年ほど前です。もしかしたら、かっては若中のイチビリの所作だったのかも・・・次に行えるのはいつの日か!?

以上がベスト4ですが、道中で曳いていても何かしら楽しめることがあります。以下総てまとめて第五位としましょう。

第五位-➀:狭い道
地車がギリギリ通れる狭い道や、電柱や標識が邪魔になりこまめな方向転換を必要とする時は、全員が”全集中”なので盛り上がります。

ガードレールで横に逃げられない+電柱や道路標識がせり出す道

第五位-②:高架下を通過
高架下もなぜか盛り上がります。阪神電車住吉駅の高架下やJRの高架下は、屋根に取り付けられた「山形」を外してギリギリ取れる高さです。子供会の綱も曳きすぎないよう「ゆっくり!」「じわじわ!」の指示が飛びます。
また、指示の声が聞こえるように鳴り物もナシで通過します。緊張の一瞬、じわり、じわ~り通過します。

阪神電車・住吉駅横の高架下を通過する山形を外した空區地車

上記の阪神電車住吉駅横の高架よりもさらに難しいのがJRの高架下です。ここはアンダーパスになっているため高架下が谷底で、下りと上りが軒高の低い高架と相まって、空區屈指のカオスな高架となっています。

空區屈指のタフなJR高架下

第五位-③:危機が行く手を阻む
新緑の5月は木々が成長する時期でもあります。その木々が行く手を阻むのです。また電線も厄介です。木々や電線が行く手を阻む時は屋根方が手に持つハタキでよけながら進みます。屋根の上で木々や電線と戦う若い屋根方に、下の曳き手はヤンヤの喝采と怒声を浴びせます。
怒声は提灯に危機が迫る時です。「提灯あたるど~」の怒声に「命に代えて提灯を守る」と燃える屋根方。なんだか前時代的ですが、氏子の財産で維持する地車ですので、大切に扱わねばという思いからなのです。
しかし、怒声もまた屋根方にとっては応援歌。せっせと木々や電線を払いながら、地車は進みます。

木々を払いのけながら坂道を上っていく

第五位-④:駐禁道路に駐車する車やバイクを人力で移動させる
事前に地車が通る道路には駐禁看板を出して告知しているのですが、開催が5月の大型連休ということもあり、看板の前に堂々と駐車している車やバイクもあります。傷つけてはいけないので、曳き手が総出で車やバイクを持ち上げて、撤去(もしくは少しずらせて移動)します。
地車ではないのですが、車を持ち上げる時にはなぜか曳き手は結束し、盛り上がります。私もアドレナリンが出てしまいます。
しかし、本住吉神社のだんじりも最近はメジャーになり、まったくと言ってよいほど駐車する車はなく、このパフォーマンスが見られることはなくなりました。

第五位-⑤:観客の多い通り
観客の多い通りでは屋根方が異常に盛り上がります。そもそも目立ちたがり屋さんが多い屋根方は、観客がいないと燃えないのです。屋根方のドーパミン大量放出は、観客数と比例するようです。

JR住吉駅北側ロータリ、通称シーア前には観客が多く集まる

第五位-⑥:地車の練り合わせ
街中で何度か他の地車と出会います。三礼をして練り合わせが行なわれます。屋根方は命綱を使って可能な限り屋根からせり出して踊ります。
住吉地区には公立小学校が2つ、公立中学校が1つしかありません。したがって地元民のほとんどが顔見知りです。中には幼稚園からお友達という人々も多くいます。祭りは同窓会でもあるのです。屋根方だけでなく曳き手も練り合わせで再会を喜び合います。

空區と西區の地車

第五位-⑦:雨の日
雨の日はたいてい中止になるのですが、責任者の判断で曳くこともあります。かくゆう私が20年ほど前に副責任者に任命された年は土砂ブリの中、地車を曳き大盛りでした。ただし後日、年寄り連中から「飾りが雨で色落ちした!」と𠮟られました。実は当時、私世代よりの年齢が上の方も大盛り上がりだったのですが(笑)。悪いのは雨の中、GOを出した私共四役です。お許しを。

雨をも楽しさに変えてしまう

いずれにしても祭りは「同じアホなら踊らにゃ損々!」と徳島の阿波踊りの唄にもあるように、見るより参加したほうが圧倒的に面白い!
しかし、全国では祭りに対してのクレームもよく聞きます。
「うるさい」「ゴミが出る」「交通渋滞を起こす」「無理やり祝儀を取る」「騒ぐ若者が出る」「タバコや空き缶のポイ捨て」など批判的な声もSNSにはUPされています。

地元の住吉小学校の校外学習

お祭りは「酒盛り」「どんちゃん騒ぎ」のイメージを持たれる方も多いと思いますが、住吉地区にある「神戸市立住吉小学校」では本住吉神社のだんじり祭りを授業に取り入れ、子供たちの地車参加を促しています。
祭りは単なる娯楽ではありません。春には豊作を願い、秋には豊作に感謝する。さらに町の人々の安全や健康を祈り、コミニティーの一貫にもなります。老いも若きも集う中で子供たちが感じる良い意味での「敬う」という上下関係も肌身で体験できます。ふれあいを通じて、生きる喜びを分かち合い、地域社会の意義を学ぶ場でもあります。
東灘区のだんじり祭りでは、非常識な行ないに対しては、執行部も若中も協力して対応しています。自画自賛ではありませんが、空區の若中は行儀がいいというのが伝統です。
空區で屈指の酒好きの私は、子供会の綱の世話役だからというわけではないのですが、蔵入・宮入後の夜の打ち上げの時にしか吞みません。その代わり半端ないくらいに呑みますが(笑)。

#神戸市東灘区 #空區地車 #空區