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涙に触れるような距離で。|「涙」をテーマにASMRを制作した理由

みなさん、お久しぶりです。
Re:eです。

突然ですが私は昨年仕事を退職して、何故か今ASMR制作というニッチ極まりない仕事に従事しています。
今回はそんな私が制作しているASMRのお話。

とても慌ただしい日々が続き、私が担当している作品についてなかなか発信する機会がなかったので、今回私がASMR制作に携わる上で作品にかける思いや、信念を少しでも多くの方に知っていただきたいという気持ちから思い切って記事にしました。

どうか最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

そもそもASMRとは「Autonomous Sensory Meridian Response」の頭文字のアルファベットからとった略称で、直訳すると「自律感覚絶頂反応」という意味になるそうです。

なんそれ。


難しい言葉でよくわかりませんね。
自律感覚が絶頂するなんて大変な事になりそうです。

私もこの仕事をするまで何も知りませんでしたが、ASMRは主に聴覚への近接的な刺激に対して、耳がゾワゾワしたり脳がモワッとしたりする感覚を覚えるような生理現象に近い身体的現象を本来指す言葉。

海外では医学的な研究が以前より進められていたようですが、日本では今から約5〜6年ほど前から様々なメディアで取り上げられはじめ、YouTuberを中心にバイノーラルマイクを用いた咀嚼音などの動画が爆発的に投稿されるようになったことで、広く周知されるされるきっかけになったかと思います。

その後、同人音声界でもその存在が注目され、バイノーラルマイク収録によるシチュエーションボイスが続々発表されるようになり、今ではAMSRはいちジャンル、いちカテゴリとして確固たる存在としてむしろ知らない人の方が少ないレベルまで認知されていますね。

以前のASMRシチュエーションボイス作品はニッチなマーケットでしたが、ここ数年で地上波放送アニメなど各方面で活躍されているプロの声優さんを起用した作品が多く発表されるようになったことで、それらの作品群がよりASMR音声作品の存在感を世に押し上げたと言っても過言ではないでしょう。

なんか知ってる風に色々ASMRについて書いていますが、正直私はこの仕事に携わるまでASMRについてほとんど何も知りませんでした。

ASMRをこよなく愛する友人は数名おり、彼らとの何気ない会話の中でASMR作品を激しい熱意をもって薦められたり、実際に試聴音声を聴かせられ…聴かせてもらったりしたことはあったのですが、正直な所あまり私にはピンとは来ず、ハマるには至りませんでした。

というのも、プロの声優さんを起用した全年齢向けの音声作品でもなんだかんだあってわりと際どめで男心をくすぐるような演出の作品が多く、私個人としてそういった刺激を求めていなかったことが原因かと思います。

今では仕事の資料として様々な作品をチェックしていますが、今でもそういった作品を好んでは聴いていません。

これは批判ではなく、バイノーラルマイクでの収録はそういった艶のある声や演出をよりリアルで、魅力的に表現する有効な技術だと認識しています。
ただあくまで私個人的に刺さらなかったというだけの話です。
(たぶん筋トレしかしてないので自律感覚が壊れてる)

はじめて友人に薦められた私が個人的にファンの声優さん出演のASMR作品を聴いた際、最初はたいへん驚きドキドキはしましたが、聴き進めるにつれてなんだか後ろめたい気持ちになり最後まで聴くことはできませんでした。


さて、そんな人間がなんでASMR作ってんの?
という話なんですが、涙なしでは語れないエピソード…
などはなく、ある日突然何故か作ることになりました。

本当に何もわからないゼロの状態から、企画、脚本、音声編集などほとんどの工程を担当することになり、今でも毎度試行錯誤を繰り返して死にものぐるいで制作に取り組んでいます。(当初想像してた50000000倍大変)

そんな何故だかよくわからないままASMR制作をすることになり数ヶ月。
あれよあれよと気づけばもう3作目の作品が先日販売開始されました。もちろん仕事として作品を制作する以上、個人的にASMR制作に熱い思いを持ち、私のすべてをかけて毎度制作を行っています。

その話はまた後ほど。
まずは今まで担当した作品について簡単に紹介させてください。

第一作目

【筋トレ・ダイエットASMR】お〜るあうと!〜甘え上手な妹と おうちで自重トレーニング〜【CV.田中美海】

第一作は音声を聴きながら誰でも簡単に全身を鍛えられる「筋トレ」をテーマとした作品です。

せっかくASMRを制作するのであれば癒やしや、ゾワゾワとした聴覚体験ではなく、実際に自分の体で何かを体験できる新たな価値をASMRに付与できないかと思い、この作品を制作しました。

時期としてもコロナ渦真っ只中の時期に企画を進めていたこともあり、久々に話した友人や知人から口々に「最近太ってきてなんとかしたい」「痩せたいけど何をすればいいかわからない」「でもどうせ続かない」といった声を本当にたくさん聞いていました。

そういった悩みを持つ方も、かわいいキャラクターに近い距離感で応援してしてもらいながら実践できるトレーニングプログラムがあれば、自宅でも筋トレを続けられるのではないか。そう思い、私の今まで約10年のトレーニング知識をすべて詰め込み、筋トレに全く触れてこなかった筋トレ初心者の方でもこの作品1本で全身を鍛えられるASMR作品に仕上げました。

作中では実際に体を動かしながら全16種目の自重トレーニングをキャラクターの解説を聴きながら実践し、継続することでしっかり基礎筋力を向上できる内容になっていて、トレーニング初心者の方でも手軽に実践できながらも作品タイトル「お〜るあうと!」の通り、余力を残さず出し切るギリギリのレベルでトレーニングプログラムを組んでいます。

もちろんASMR作品としてもリアルな距離感にこだわって、とてもかわいい妹の結花ちゃんと日常パートを挟みながら時にキュートに、時に厳しくトレーニングを教えてくれるシチュエーションボイスとしても楽しめる作品を意識して制作しています。

そんな結花ちゃんを演じていただいたのは田中美海さん。

本当に奇跡のような出来事なのですが、この作品の脚本作業中に何気なく聞いていた田中さんのラジオ番組で「筋トレのASMRがあったらいいよね、私やりますのでオファー待ってまーす!」といったお話をされており、即オファーをさせていただきました。(そんなことある!?)

無邪気な妹設定で作品を詰めていたので、田中さんの役作りとの相性も本当にバッチリで、とてもいじらしくかわいい素敵なキャラクターに仕上げていただきました。

田中さんのファンの方はもちろん、なかなか運動が続かない方にもぜひオススメしたい作品になっています。


第二作目

【筋トレ・ダイエットASMR】お〜るあうと!〜世話焼き幼馴染と ダンベルトレーニング〜【CV.佐伯伊織】

筋トレASMRの第二弾作品として制作した本作では1作目の自重トレーニングから少しだけ内容をレベルアップし、ダンベルを用いたトレーニングが学べるASMRとして制作。

作品コンセプトの「実際に体を動かしながら体験できるASMR」としての軸はぶらさず、100円均一ショップなどでも購入できる低重量(2〜3kg程度)のペアダンベルさえあれば自宅の1畳ほどのスペースで全17種目のトレーニングが実践できる作品として制作しました。

作中ではヒロインである幼馴染の山本 好乃ちゃんがソフトにツンデレな面を見せながらダンベルを用いたトレーニングを指導してくれます。

第一作目からはまた違う新しいチャレンジがしたいと思い、本作では筋トレと絶対に交わることがない要素をかけ合わせたものをテーマにしたいと考えた結果、「筋トレ」×「純愛」という出会うことのない2つが出会ってしまいました。

あーだこーだ言いながらも密かに主人公を想い、優しく筋トレを教えてくれる好乃ちゃんがとにかくハチャメチャにかわいい……!

特にラストの筋トレ後のご褒美トラックは圧巻で、思わずこちらが泣いてしまうほどに切なく、感情のこもった素晴らしい涙の演技を堪能できます。
筋トレのASMRなのに何言ってんだと思われるかもしれませんがマジです。

そんな好乃ちゃんを熱演してくださったのは佐伯伊織さん。
キャラクタービジュアルやシナリオのイメージにぴったりどころか、それを遥かに超える演技で約3時間に及ぶ本作のヒロイン、好乃ちゃんに命を吹き込んでいただきました。

なお、お〜るあうと!ダンベル編ではリスナーの性別を限定しないよう考慮して脚本制作していますので男性向けカテゴリにはなっていますが、男性のみならず、女性の佐伯さんのファンの方にも楽しんでいただきたい作品になっています。

実際のトレーニングだけではなく食事や生活習慣などの深堀りした知識も好乃ちゃんが解説してくれていますよ〜!

これから夏場に向けてお〜るあうと!2作でトレーニングを始めるといい感じに絞れてくるかと思うので、可愛いヒロインたちに追い込まれながらトレーニングデビューしてみてはいかがでしょうか!


最新作

【涙声ASMR】ナミダノオト。〜頬を伝う君へのキモチ〜【CV.遠野ひかる】

ここまで筋トレASMR2作を紹介してきましたが、今回リリースした最新作、【涙声ASMR】ナミダノオト。では180度テーマの違う作品になっています。

本作ではタイトルの通り「涙声」にフォーカスした新しいジャンルのASMRとして制作しました。

涙声とは何かというと、涙や泣くといった生理的行動そのものではなく、涙を流す際の震える声です。

涙声を全体的な作品テーマとして打ち出した作品は調べた限りおそらく初。
ASMRとしてもかなり尖ったテーマになっていて、企画段階でも前例のない試みに非常にハードルの高い挑戦ではあったのですが、なぜ涙声をテーマにしたかったのかというと、それは

「演技」を耳で最大限に体験し、キャストさんの新たな魅力に出会える作品を作りたかったから。

筋トレASMRを制作する中でバイノーラルマイクでの収録は非常に感度が高く、感情の揺れや細かいニュアンスまで聴き取ることができ、聞き手にとって声の「演技」をこれ以上に深く堪能できる技術は他にないと確信しました。

通常の音声では体験できないような立体感やレンジの広さによって得られる細やかな音像はもちろんですが、プロの声優さんが「演じる」という技術力の高さと、アニメやゲームなどの作品では聞き取れないレベルのテクニックの緻密さ、そしてその力強さをASMR制作を通して改めて実感し、リスナーが「演技」そのものをもっと深く味わえる作品を作りたいと思いこの作品を企画しました。

そしてそれが「涙声」である理由は、キャストの「演技」を未体験の魅力として引き出せる演出だと思ったからです。

アニメやゲームだけでなく映画やドラマなどの作品において、涙のシーンは視聴者の胸を締め付け、感情を揺さぶるだけでなく、物語のターニングポイントとなる重要な場面がほとんど。

だからこそ涙のシーンは印象的で心に深く刻まれ「好きな作品の好きなシーンは?」と問われると涙が関連するシーンを思い起こす方も少なくないと思います。

もちろんその効果故に涙の演技を聴ける場面は限られていますし、涙を流す登場人物はあらゆる作品でごく一握り。非常に貴重な演技です。

そして特にその中でも声で涙を表現する「涙声」の演技は、言葉では表現が難しいほどの力強さを秘めていると私は思っています。

この涙声ASMRのアイデア、実は『筋トレASMRお〜るあうと!ダンベル編』収録がきっかけになっていて、先にも少し触れましたがラストトラックのヒロイン好乃が涙を流すシーンで、本来であればすすり泣く程度の場面を想定していたのですが、演じていただいた佐伯さんがヒロインが語る感情に合わせてじわじわと涙声を変化させ時間をかけてとても感情的な涙のシーンに仕上げていただきました。(ここから多少ネタバレ要素が含まれており本当にすみません!!!!!)

【筋トレ・ダイエットASMR】お〜るあうと!〜世話焼き幼馴染と ダンベルトレーニング〜【CV.佐伯伊織】

当時サウンドエンジニアさんとモニターしており「こここんなに泣いちゃって大丈夫ですか…?」と問われたのですが、その涙声の演技が訴えかける力強さに「このままお願いします!」と収録を続行しました。まさに「カ◯ラを止めるな!」状態です。

そして涙のシーンが終わった時には私とサウンドエンジニアさんはぽろりと涙を流していました…。そのたった1発で決めていただいたテイクが本編に収録されています。

本来女の子に耳元で泣かれるという事はそうそう経験することではないですし男女問わず誰であっても苦しい事だと思います。

ですがなぜかこの時、苦しいほどに胸を締め付けられながらもどこか心地いいような感覚があり、私も自然と涙を流していました。
(女の子を泣かせるのが趣味のサイコ野郎とかではないです……)

ではなぜそこまで胸を打たれたのか、感動とも違うこの感覚を言語化するのはとても難しいのですが…ヒロインの感情の動きに合わせて繊細に涙声のニュアンスが変化し、まるでその場の空気まで張り詰めたかのような零細に表現された演技、そしてその高いレベルの演技がバイノーラルマイクを通して耳に伝わるリアルさ、その2つが調和して聞き手にとって涙声の演技を未体験の感情が溢れるほどに引き出したのだと思います。

ここまで「演技」に対して心を奪われたのは初めての感覚でした。

そして、キャストさんの「演技」のプロフェッショナルとして技術力の高さを改めて思い知るとともに「演技」と「バイノーラル収録」この2つが混ざり合い、もたらす底知れない可能性を体感した瞬間でした。

作品を購入し、聴いていただいているみなさまにも「演技」を通してこの言葉にできないほどの感覚を体感していただきたい。そしてキャストさんのファンの方にはキャストさんの新たな魅力を発見できる作品作りがしたいと思うようになり、「演技」にフォーカスした作品の企画を決心したのです。

そして最も心揺さぶられる「演技」の表現が「涙声」であると確信し、今回ナミダノオト。を制作しました。

本編ではヒロイン露崎日菜の喜怒哀楽4つの感情を涙声で表現した合計4トラックで構成。それぞれの感情によるキャストさんの「涙声の演技」の変化とテクニックの緻密さを体感できるような設計をしています。

そして本作では「演技」の繊細さを最大限活かすためリアリティにとことんこだわり、可能な限り音声作品特有の誇張した表現を排除しました。

今回ヒロインとの関係性は恋人設定ですが、シチュエーションもただ甘いだけの恋愛関係ではなく、どちらかが我慢を強いられるようなうまくいかないであろうありふれた恋愛関係をテーマにしています。

そのため、人によっては視聴していて困惑するようなシリアスな場面もあるかと思いますが、聞き手が思わず「どうしたらいいんだよ…」と困惑してしまうほどの「演技」の力を味わってほしいと狙ってシビアな設定にしています。

そんな本作のヒロイン、露崎日菜を演じていただいたのは遠野ひかるさん。
あえて個人的に涙のイメージが少ない方に演じていただきたいと思い、遠野さんにオファーをさせていただきました。

本作の制作が終わって、改めて遠野さんの「演技」のバリエーションの多さに驚かされました…。本当にすごいです…。

日菜は感情のコントロールが苦手ながらも、心を許している主人公に対しては非常に多彩な感情表現をする女の子として設定しました。ですので可愛らしく笑いますしよく泣きます。わがままも言います。

そんな普通の女の子らしさと様々な感情を実にリアルに表現していただきました。

可愛らしい声が震えながら涙に変化する過程、その技術と圧巻の「演技」を是非涙に触れるほどの距離で確かめていただきたいです。

本作、遠野さんのファンの方には特に絶対に聴いていただきたい作品になっていますし、ASMRファンの方にとっても未体験の音声作品になるかと思います。

今までにない新しいジャンルの作品であるため、「【涙声ASMR】ってなんだ…」とためらっている方がもしいらっしゃったら、この記事を通して是非ナミダノオト。がどんな意図を持って制作され、どのような気持ちで聴くと楽しめる作品であるか少しでも参考にしていただけると幸いです。

そしてキャストさんの演技はもちろん全3作共通してイラストをご担当いただいたのはなかむら先生。お〜るあうと!では健康的な結花と好乃を可愛く描き上げていただき、ナミダノオト。では瞳から溢れ出す日菜の感情を細やかに表現していただきました!

なかむら先生の素晴らしいイラストにも注目です!!

https://twitter.com/mmnummn

最後になりますが、音声サークルEXCEED VOICEでは今後もキャストさんの新たな魅力に出会えるような感動とASMRの新たな可能性を追求できるような作品を作っていきますので、是非応援いただけると嬉しいです!!!!!

それではまた!!!!!





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