小豆洗いのススメ

 妖町、ここでは十の年月を超えると妖怪の力が付与される。与えられる力は家系や性質によって異なるが九尾や天狗といった上級妖怪の力は専門の一族に先取りされてしまう。           

「おめでとう、化け猫の化身だよ。見事な中級妖怪だ。中々お目にかかれる代物じゃないよ、やったじゃないか!」

備え付けた祭壇の水晶に手を飾して拝むと妖怪の姿が現れて力の化身となって身体に宿る。バケネコは結構レアキャラらしい、言っても銀の卵だろうけど。

次は俺の番だ、水晶に手をかざして表面を覗く。暫くすると妖怪の姿が浮かぶ。

「出るぞ出るぞ!」「もう出んの?」

水晶に影が浮かぶ。小さな肌色の丸、頭だろうか。水晶と同じ形の肌色が見える。

『ヨウ!』「...え?」「小豆洗いじゃな」

小豆洗い!?             あの川で豆を洗うだけの人畜無害な妖怪か

『宜しくな。』自立してるし、何でなの?後で係のバアさんから聞いたら人に取り込ませ力として昇華させる程存在が大きくないらしい。そりゃそうだ、小豆洗いだもの

『お前、名前は?』「イカダ。」『ほう』当たり障り無い会話、そりゃそうだ。なんてったって小豆洗いだもの。

俺の新章は、簡素な絶望で始まった。

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