ワンピース面白!

最近ワンピースを読んでいます。めっちゃ面白い。読む前のぼくはワンピースという漫画を、悪く言えば子供だましな、人口に膾炙するような薄っぺらい物語が展開されるのだろうと思っていたんですが、読んでみると全くそんなことのない、むしろ大人が読んだ方が楽しめるんじゃないかという気すらする作品でした。
個人的に好きなのは、ルフィ達主人公サイドは決して正義のヒーローなんかではないという描写が明らかなところですかね。たしかに勧善懲悪的な物語であることは間違いないのですが、ルフィは決して厳正に正義を全うする、誰の目から見ても正しい人間ではないんですよね。少年漫画を見ていると感覚はマヒしてくるんですが、ルフィって異様に喧嘩っ早いんですよ。すぐ手が出ると言うか。これって言い換えると何でも暴力に頼って解決しようとする、まあ「輩」なんですよ。もちろん、ワンピースの世界では汚職も普通にまかり通ってますし、権力が基本的に腐敗しがちなので現代的視点から一方的に糾弾するべきではないと思いますが、しかしそういう粗暴で我儘な側面は確実に、意図的に盛り込まれていると思います。なんてったって「海賊」だしね。

そんな野蛮人みたいなルフィ達麦わら海賊団メンバーなんですが、でもすっごいいい奴らなんですよね。その辺のバランス感覚が上手いと言うか、ワンピースが傑作である理由の一つだと思うんですが、「良いヤクザ」なんですよ。仲間のために命を懸けて戦い、仲間を害する人間は絶対に許さない。その仲間を助けることが社会にとって害を与える可能性があろうとも、そんなことはお構いなしなんです。権力からは嫌われるんだけど、市井の民たちからは慕われる義賊というか、決して「正義」ではないのだけれど、彼らは間違いなく「善人」です。本当にこの多様な視点の入り組みが見事というか、この辺のテーマは「インペルダウン編」に顕著だと思います。ルフィの仲間を愛する心が、社会にとってどれほどの危険を孕んでいるかということが如実に表れています。
それでも、ぼく達は仲間のために命を懸けるルフィの姿に心を揺さぶられるんですね。

あと、これは敵によりけりなところはありますが、基本的に敵が救いようのないクズなところも大好きです。ここは本当に好きです。最近の漫画って、「悪には悪なりの理由がある」とか「絶対的な正義なんてない」みたいな相対化が流行ってるじゃないですか。まあこれはそれまでの純粋な勧善懲悪物に溢れた漫画界へのカウンターではあると思いますが、ぼくは最近あんまりそういうものが好きではありません。擁護しがたいクズというのは事実存在しますし、たとえ悲しい過去を背負っていようとも悪は悪です。一方的に善悪を判断することはたしかに危険性を孕んでいますが、相対化も同様のものだとぼくは思います。ましてやこれは漫画です。現実ではないのですから、そこには厳然たる悪がいて、打ち倒されなければならないのです。少年漫画の役割とはそこにあると思います。

いやーワンピースおもしれーわ!

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