日本人の海外旅行

 3年ほど前、ニューヨークの親戚に会いに行った。5回目のニューヨークだった。この時にハーレム地区で看板にソウルフードと明記されていたレストランを見つけた。店の中を覗くと、店主は韓国系人のようだった。まさか、韓国の首都ソウルと魂のソウルをかけて看板にソウルフードと書いて、韓国料理を売っているのか?たまたまアジア系だけどアフリカ系アメリカ人のソウルフードを売っているのか?非常に不思議だった。

 じろじろ中を見ていたら、店主が手招きで中に入りなさいと指示してきた。中に入ったら、店主が自分は韓国からの移民だと教えてくれた。セルフサービスの店で、数十種類のバットにいろいろな料理が入っていて、自分でお皿に好きな物を入れて、最後にレジで料金を計算してもらうシステムだ。

 店主は食べなくてもいいから、興味があるなら見ていきなさい!と言ってくれた。観光客であることはバレバレで、どこから来たの?と聞かれたので台湾からと伝えた。お腹が全く空いていなかったので、韓国語で「どうもありがとうございます」と言って店を後にした。

 結局、料理は韓国料理ではなく、アフリカ系アメリカ人の好きなソウルフードのようだった。お腹が空いていたら、食べたかったけど、食事したばかりだったので、申し訳ないことをした。それにしても、韓国人がハーレムでも店を開いていることに非常に驚いた。

 自分はたまたま両親の出身地が東京から遠かったのと父が仕事の関係で韓国に駐在したことがあるので、幼少時に飛行機に乗っているし、13歳から17歳まで韓国と日本を行ったり來たりした。また、25歳の時にニューヨークの親戚に会いに行った。自分が20歳以前に知り合った友人で飛行機に乗ったことがあると言っていた友人は2、3人ぐらいしかいなかった。

 20歳頃に知り合った友人達はみんな僕が飛行機に乗ったことがあることと、外国へ行って、外国人と外国語で話したことがあることを非常に驚いていた。

 僕自身が自分のお金を使って、一人で始めて海外へ行ったのが25歳の時に行ったニューヨークだった。一ヶ月滞在するということもあったのか、仕事関係の何人もの人達が「しっかり勉強してくるんだよ!」と言ってくださり、それぞれの人から五万円や十万円といったお小遣いを頂いた。

 それ程、まだまだ個人で海外へ行くということが珍しかった。ニューヨークから戻って、一、二年経った頃から、周りの友人達も出張や個人旅行で海外へ行くようになっていった。

 それが、ここ20年ぐらいの間で知り合った僕より一回り歳下の世代の友人達になると、日本人も台湾人も海外旅行や海外留学、海外駐在の体験を持つ人が非常に多い。中には50カ国以上も行ったことがある人が数人いる。

 実は一ヶ月のニューヨーク滞在から帰って、三年後、28歳の時にヨーロッパ(パリとロンドン)に二ヶ月間行ったのに、その時は誰からもお小遣いは頂けなかった。わずか三年で個人の海外旅行は珍しいことではなくなり始めていたのだろう。

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