コスプレイヤーがコスプレに費やす金は平均で年間3.7万円なのか?

この前、こんなツィートが流れてきました。

このツィートにはオタクの年間消費額として「コスプレの年間平均消費額は3.7万円」と書かれた雑誌の画像が添付されています。

出展元は「矢野経済研究所」とあり、出版社が出版している雑誌だけあって、これは確かなソースのように思えます。

しかし、本当に正確なデータなのでしょうか?

結論から言えば、このデータには二つの過ちがあります。

まず矢野経済研究所の過ち…というか、データの誤解されてる面を説明します。

矢野経済研究所曰く「コスプレ市場規模は435億円!」

「2015年度のコスプレ衣装市場規模は前年度比1.2%増の435億円であった。」~矢野経済研究所『「オタク」市場に関する調査を実施(2016年)』より引用~

私もコスプレ活動してますが、その肌実感から言えば「衣装だけでなくカメラとかスタジオロケ代、工具代とか含めりゃそれぐらいいくんじゃね?」という気がします。

しかし「矢野経済研究所」のデータは「コスプレ市場」ではなく「コスプレ衣装市場」を指してます。

つまりコスプレは衣装市場だけで435億円の巨大市場だというのです!…これは、ちょっと実感がわきません。

また、この数字を「年間平均消費額3.7万円」で割ると、日本国内にコスプレイヤーが117万人もいる計算になってしまうのです。

明らかに何かがおかしいです。

例えばコスプレ最大SNS「cure(現worldcosplay)」の登録人数がは2013年時点で95万人でしたが、コスプレイヤーに限ると14万人しかいません。

また国内向けコスプレ最大SNS「コスプレイヤーズアーカイブ」の登録人数は2014年時点で27万人、コスプレイヤーに限ると14万人です。

両サイトとも、(肌実感では)活動休止や引退してるユーザーが多い一方で、ツイッターがコスプレイヤーの主戦場になってからは両サイトに登録してないレイヤーも多いのでデータとしてはの信頼性は今一つですが、とりあえずこの数字を元に国内にコスプレイヤーが14万人いるとします。

そうすると今度は435億を14万で割った結果、コスプレイヤーは「衣装代のみで」平均31万円を年間消費してることになります。

それぐらい金かけてる方も、わりとよく見ますが、それでも31万円は「平均」と言われると…的な数字です。

コスプレ市場≠コスプレイヤー市場

一体、矢野経済研究所は何を根拠に市場規模と年間平均消費額を出しているのでしょうか?

これを資料から読み解きますと、どうやら矢野経済研究所は「コスプレ衣装市場」をコスプレイヤー向けの衣装ウィッグだけでなく、ハロウィンで仮装するようなパリピ向けのパーティグッズとしてのコスチュームも市場にカウントしているようです。

とすると、当然コスプレ人口117万人には「パリピ」が含まれてると考えるのが妥当です。

つまり矢野経済研究所の「コスプレ(衣装)市場は435億円」「年間消費平均金額は3.7万円」はコスプレイヤー含めた「コスチュームを着る人達」の市場データなのです。

ですが、この雑誌は色々と勘違いをしてしまい

「オタクはコスプレに年間平均3.7万」

と書いてしまったのだと思います。

これには「コスプレ衣装のみのデータ」を「コスプレ」と表記してしまったこと。

「コスプレイヤーやハロウィンで仮装するパリピ含めたコスプレする人」をオタクと表記してしまったこと。

二つの過ちがあります。

これを正しく表記するならば

「コスプレや仮装する人達はコスチュームに年間平均3.7万」

ということになると思います。

余談:コスプレ市場規模を正しく把握する事の困難さ

コスプレ衣装市場は無許可で衣装販売してる業者(所謂、中華衣装)や、個人で衣装販売及び制作代行してる方もいます。

当然こういった方の下に流れる金は基本表に出ることはありません。

またコスプレイベント団体も、税務署に事業開始届け無届けの団体などもいたりします。

更にコスプレ活動で収益上げていても無申告…そもそも「経費」「売り上げ」「収益」「所得」の概念を正しく理解してない方もウヨウヨいます。(私がそうでした)

こういった面があるので、衣装に限らずコスプレ市場の実態を金額で把握するのは現状では困難じゃないかと…。