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価格設定の妙。

 世の中には色々な高級お持ち帰り商品がある。デパ地下や駅ナカ、百貨店、ゴーストレストランなどなど。いまや巷にこのような類のお店がどこにでもある印象です。

 特にコロナの流行において、テイクアウト業界の需要は加速度的に増えましたよね?
 和食系だと、海鮮丼や寿司、和牛系の弁当やはたまた海苔弁まで…。

 以前関わった飲食店の母体の親会社が高級海苔弁のお店を経営しています。価格は1,000円オーバーで、季節による限定海苔弁ですと2,000円近くします。
 一体誰が千円以上の海苔弁を買うのか? と思ってしまったのですが、これが意外と人気となるわけで、支店も増やし、フランチャイズ化もしているようです。

 海苔弁と言えば、学生や若者などが安く食べられる庶民の味方です。基本的な具材構成は、おかかと醤油を混ぜてご飯の上にまぶした上に海苔を敷き詰め、さらにその上に白身魚フライやコロッケ、きんぴら牛蒡、卵焼き、などのおかずをを乗せた日本の超メジャーなシンプル弁当です。誰でも一度は買ったり、家から持たされて食べたことがあるでしょう。

 で、私はこの高級海苔弁を1度頂いて食べる機会がありました。

 その頃はちょうどコロナ禍で求人がなく、スーパーの惣菜部でも仕事をしておりました。惣菜部では弁当専属ではなかったものの、弁当調理も持ち場の1つです。
 惣菜ですので、もちろん海苔弁も何個かお昼に合わせて作ったりしていました。
 店舗調理とはいえ、もちろん全てを1から作るわけではなく、大体が、冷凍食材やら調理キットみたいになってるものを使います。

 海苔弁の場合はシンプルですので。単品売りする惣菜から少しずつ共通具材を集めるようにして作り、卵焼きなどは業務用のパックになってるものを使うのです。
 少し考えればわかることなのですが、スーパーでの値段と製造する種類が多い状況でいちいち玉子焼きを手焼きで作るわけがないのです。当然のことです。

 しかしながら、スーパーのお弁当でさえ、ボーっと考えなしに「店内調理」というポップや表示を見てしまうと、いかにも全ての具材を手作りしてるのではないかと消費者は勝手に思い込みがちです。まぁ、たしかに一部の具材は手作りではありますが、殆どが出来合いの食材をプラモデルを組み立てるかのように、説明書通りに配置したり盛ったりしているのです。

 それでもそこには企業の多くの工夫や努力により、如何に労働力(人件費が一番高いですからね)をかけずに価格より美味しいものを作ろうとする姿勢があるわけです。

 海苔弁の話に戻りますと、激安とはいかなくても450円ほどで少し豪華な海苔弁かスーパーで買えます。

 ここで私が1つ頂いて、試食した高級海苔弁の感想を述べたいと思います。

 それは、スーパーの500円以下の海苔弁と大差ない、というか同等かヘタをすればスーパーの方が美味いのです。
 何故か、そりゃ、大手スーパーが企画開発したのものです。それなりにおいしいのですよ。
 それを売れる物の隙間を見つけて金儲けしか考えてない得体のしれない会社とでは目に見えた差があります。

 しかしながら、消費者の皆さんはあえてのこの高価格設定に騙されるのです。「いやいや、この価格なのだから材料も国産の良い物を使ってるはずだし、丁寧に具材も手作りしてるんだよ」なんて簡単に思っちゃうのです。
 ここでよく考えてみて下さい。その弁当屋は一日で何個売り上げますか?? 何人の従業員がいてどれだけ人件費がかかってる上でその会社は存続しているのでしょうか?

 1日30個限定とかなら納得できます。しかし、1日にかなりの量を製造販売するとなると人数も必要となりますし、人数が多ければ人件費が多くなり、必然的に材料費を安くするしかないのです。
 説明書きに〇〇県産の材料をどうたらこうたら、なんて文章があったりしますが、こんな大雑把な表示は危ないと思いましょう。〇〇県▢▢産などと具体的だったらそれは間違い無いでしょう。でも大概はお米や海苔などと一部の具材などの産地は具体的に書いてありますが、残りは「ふっくらと揚げた白身魚」などと曖昧な場合が多いです。ここで国産の真鱈を使ったらそれだけで500円ほど上乗せになります。おそらくは輸入物の深海魚(これが不味い、悪いと言ってるわけではないですよ)などです。それでも消費者は値段と店からの情報によりひどく高価な海苔弁を買わされてるわけなのです。

 売値が高いからと言ってそれなりのものが出てくるとは限りません。売る方も商売です。初めから高いものが高いのは当たり前ですが、一般的にそんなに高く無いものが高級になって現れた時には非常に注意が必要だと思うのです。

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