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亀戸大根(江戸東京野菜)のこと。

 皆さんは、「江戸東京野菜」をご存知だろうか?? いわゆる現代の大量生産品種であるF1種(1代限りで、種を採取して蒔いても発芽しない)ではなく、江戸時代から昭和40年代までに在来固定種として育てられていた野菜のことです。
 もっと簡単に言いますと、昔から食べられていた江戸で収穫した野菜で、食べた後の種を蒔けばまた来年も収穫出来るのです。
 しかし、昭和中期から東京では耕作地も激減し宅地化されていきます。それにしたがい東京(江戸)古来からの野菜を育てる農家は減り、狭い土地で効率よく、病気に強く、収量が多いF1種に取って代わることになるのです。
 しかし、近年この「江戸東京野菜」を復活しようじゃないかという機運が高まり、数少ない東京の農家さんや、東京近郊での栽培が復活しているのです。
 種探しや、途切れず育て続けてる農家を探すことから始めたそうですが、そこでわかったのが出荷はしてなくても先祖代々受け継いだ作物を、その家の食べ方で自家消費している農家がそこそこあるということだったそうです。

 私は「江戸東京野菜」の存在は知ってはいたのですが、本当に興味を持ったのは今年の春にJA東京スマイル(足立、江戸川、葛飾の3エリア)の直販店、柴又にある「葛飾元気野菜直売所」で「亀戸大根」を購入し、大好きな浅漬にした時からなのです。

 亀戸大根は、名前の通り、かつて亀戸で盛んに栽培されていた小ぶりの大根です。姿形はひょろっとした人参のようで、いわゆる大根と比べればかなり小型で細く茎も葉も長く、丸型じゃない辛味大根のようです。
 買う時も直売所のおばちゃんに「細くて辛そうに見えるけど甘くて美味しいわよ、お味噌汁とかトロッとして美味しいよ」と言われました。煮てトロッとする根菜といえばカブが有名ですよね。

 ですから亀戸大根の浅漬は、大根とカブの間のような味で、わずかな辛味と、ほんのり甘みがあり、皮はきめ細かく柔らかなので皮は剥かずにそのまま薄切りにして浅漬にしました。それはそれはとても美味しいものでした。旬は短く2月〜4月くらいまで。その間に3回ほど買いましたね。大根やカブの茎葉が大好物な私にとって、かなり長く立派に育った葉っぱをたっぷりと食べられるのも魅力でした。

 しかし、栽培農家が増えたとは言ってもスーパーなどではお目にかかる事はまず無いと思います。ちなみに私が購入したのは、本当の亀戸の地場物ではなく、葛飾で栽培しているものでした。現在の東京では厳密な産地での栽培はかなり難しく、もちろんその土地でも栽培はされてますが、東京近郊で天候や風土が近ければ良しとしているのです。
 当然、それでも自分が生まれ育った東京でかつては盛んに育まれた野菜を食べられるのは幸せなことだと思うのです。

 江戸東京野菜の事を調べていくと、中々に興味深い歴史的な話に行き着きます。東京の種苗問屋がかつて、なぜ中山道に集まったのかです。
 正確には巣鴨のとげぬき地蔵の近辺です。その昔、徳川家が尾張から取り寄せた大根の種を、練馬の地で栽培させたところ立派な大根が収穫されました。これが練馬大根のルーツなのですが、その大根は北区の滝野川の他、板橋、練馬で盛んに栽培される事となり、種を取って販売する種屋が近くの街道である中山道に出来たのでした。そして明治中期をピークに「たね屋街道」と呼ばれるようになるのです。

 亀戸大根の他にも現在では52種類の復活された野菜が登録されているので、順にご紹介出来たらいいなと考えてます。それはもちろん私が食べてみたいからなんですけどね(笑)。
 ご近所で買える機会があったら是非とも買って調理して江戸の昔に思いを馳せてみるのはいかがでしょうか?

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