大都会に僕はもうひとりで

スラムダンク。伝説的なバスケットボール漫画だ。漫画を読んだことない人でもアニメOPの「君が好きだと叫びたい」は知っていると思っている。
噂によるとバスケットボールが受けなかったらヤンキーものにシフトするつもりだったらしいが中盤からはバスケ一筋な青春と戦いを描いている。

この作品の終わり方を知っているだろうか?
全国大会(ここまで行くのがまず大変)でめちゃくちゃ強い山王高校と戦い、文字通り死闘を繰り広げ、選手生命が危うくなり、ずっと欲しかった熱い仲間に囲まれ、ライバルだったチームメイトとハイタッチをし、タイトルにあるわりにスラムダンクではなく地味なゴール下シュートでナントカ勝利を収めた主人公たち。
雑誌のカメラマンに呼ばれてチーム全員で写真を撮り、そして、モノローグで語られる。
『山王戦ですべてを出し切った湘北は次の試合で負けた』

エーッ!?!?!?
ああ、あん、あんなに頑張っ、そんな、そんなのってないよー!!(魔法戦士レイアース)

打ち切りだったのか書きたくなかったのかここで終わらせるつもりだったのか実は知らないんですが、そこは問題ではない。
とにかくなんにせよスラムダンクはここで終わる。一応その後エピローグはあるけど割愛。

初見のときは結構衝撃的で、ラスボスに行く前に負けたような……優勝はしないのか……まだロンダルキアにも着いてないじゃないか……などと悲しみつつも、次第にこれはこれで美しいし、弱小な湘北にとってはリアルかもしれないと思えるようになった。
ところがスラムダンクが残した傷は意外に深く私を育てていた。

私は画面外で死んでる演出が結構好きである。ニンジャスレイヤーでいうとスローハンドのシーンが好きだ。
エリミネイト・アナイアレイターでやんわりとふんわりと離散したシマナガシには悶えまくった。その、なんていうの、文章化できないような乾いた関係の、離散というより剥離、経年の……ただ……日付のない別れ……
そういった、悲しい(と言うべきか分からないけど)出来事が起こったということだけが書かれると、俄然その様子について想像が膨らんでしまう。

同人的なものに関しても、イチャイチャ甘々して終わったものの、その後離別したことがサクッと書かれたり、別れることが分かっている状況のほうが萌える。
ハピエンがいいのはいいんだが別れてはほしいという複雑なこの……メリバとかそういう呼び方ないし……なんなんだよこの萌えツボ、一体どこから……スラムダンクだ!!!!

漫画のスラムダンクを読んでいたのは小学3年生ぐらいだったと思う。あまり記憶していないが少なくとも小5のときには確実に読んでいた。
そして湘北の負け試合の様子を、多分また三井は謝ったりするんだろうなとか、花道は出場もできなかったかもなとか、流川は涼しい顔でいそうっていうかアイツ一年だからまだ先あるよな、などそのような、疲労と涙に暮れ思うように動かないズタボロな湘北のことを考えていた。
これのせいだ……まさかあんな青春漫画にこんな落とし穴が……
いやそもそもそんなこと考えてる時点で何かが歪んでいたのでは?

ところでこのような画面外のモノローグだけで話を想起させるのは、形式としてはSCPになっていくと思う。
資料形式な作品が好きな人は画面外モノローグが好きではないか、ちょっと教えてほしい。