【鉄拳8】震通相打ちの復活



震通 is 何

ここで云う「震通」とはニーナの震通掌破(4WP)の事で、鉄拳6時代にニュージーランドのニーナ使いZarzobが『相打ち(コンボ目線)』に極めて適した性能を持つ技という観点のもとで発見し、つまりは相打ち用途のニュアンスで指すものとする。

震通掌破は相打ち時の硬直がたったの8Fと、他の追随を許さない驚異的な"悪用性能"を誇り、これが判明して以降の鉄拳6関連のコンボ動画では盛んにこの技が「そういう目的」で用いられるようになったし、かくいう私もその一員に名を連ねていた側である。

そんな震通だが、この事態を開発サイドが重く見たのかどうかは定かではないにせよ、鉄拳7では相打ちに適さない改訂が施されてしまった事により、この時代(即ち前作の間)はブライアンの挑発(LP+WK、16F硬直)がうって変わって相打ち用途で台頭していたわけである。

震通相打ち、まさかの返り咲き

そう、まさかなのである。鉄拳8CNT版、CBT版、および製品版も発売から暫くの間は暴かれていなかったが、ほどなく海外勢のコンボ動画でこのギミックを活用する光景が散見されるようになり、何ゆえか震通掌破が鉄拳7を跨いで相打ち用途の王様に返り咲いていた事が判明したのである。

此度の鉄拳8で果たして誰が最初にこの事実に気付いたのかは定かではないが、ひとまず個人的には鉄拳6当時にこの発見を成し遂げたZarzobの名を現代にも今一度強調しておきたい。鉄拳8での震通相打ちもかつてと同様8F硬直という高性能ぶりをそっくりそのまま蘇らせ、鉄拳7時代とは一味も二味も違う相打ちコンボの世界が展開される事であろう。ある日しめやかに弱体化の仕打ちに遭わなければ、の話だが……。

もしもの時の為に……

今のうちからあまり先んじて考えたくない話ではあるが、万が一震通相打ちが没収されてしまった場合には改めて別の候補で相打ちコンボを構築していく必要が生じる。以下、洗い出しも不十分な私見ではあるがその候補をピックアップしていこう(記載の数値は発生Fではなく被弾時の硬直時間)。

・挑発(Bryan/LP+WK/16F)
前作鉄拳7でもっとも重宝され、もっとも愛用された相打ちコンボの王様。本来はブライアン自身にとって強力無比な地上コンボを少しでも抑制する為にシリーズを追う毎に硬直フレームを減らされていった技ではあるのだが、それはつまり相打ち目線にとって都合のいい話でもあったため、おのずと界隈の頂点へと上り詰めた。

壁やられの補正切れ判定にすら達する打点の厚みを誇りつつも、あまりにも低い姿勢との相打ちになると噛み合わないケースは出てきてしまい、ざっくり言えば相手を転ばすような下段技との相打ちには対応しない場面も決して少なくない。これひとつで万能相打ちと言えるほどではないのだ。

・フラミンゴバックハンド(Hwoarang/LFLPorRFRP/21F)
元レフトジャブorライトジャブと呼ばれていた技。技名に基き本作では裏拳気味のモーション。ブライアンの挑発に取って代われる材料はないため、そこまでの有利が不要かどうしてもあちらに頼りたくない場合に。

この技ののけぞり時間が短くされてる理由は、汎用のジャブよりも更にフォロースルーが短く設定されている為、そちらと同じ硬直(25F)を割り当てると有利フレームが大きすぎる故と思われる。初登場の鉄拳3当時は背面に当てたらそのまま背後投げが繋がるような性能を誇っていたわけで。

・連環拳・剛1発目(Leroy/WP/25F)
・パラベリウムコンビネーション1発目(Steve/6LKWP/25F)
25Fともなるともう汎用ジャブののけぞり時間と同等レベルではあるものの、これらの技はヒットバック量がとても小さいので相手との距離をあまり離したくない場合は挑発よりも使い勝手が勝る事もある。前作まではジャックのピボットガンも同様の使い方が出来ていたが、本作では技そのものが没収されてしまった。

リロイ体型は軽量級+男性寄りの複合、スティーブは標準男性陣やポール、シャヒーン辺りよりももう一声ガタイが大きい部類なので、そのへんの材料を加味しながら用いるといいだろう。

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他はまだめぼしい相打ち向きの技は見つかってない。単発のLP(ジャブ)はカウンターヒットでのみ派生が連続ヒットするケースもままあれど、それでも概ね25Fのけぞりなので芸がないと言えばそれまででもこれを用いるのが結局は無難。

ただしLPはそこそこ判定高めの上段なので潜られやすいというデメリットはあり、その場合は3LPの左アッパーでも25Fのけぞりで済むキャラに白羽の矢を立てる必要がある(麗奈、ヴィクター等)。3LPが相打ちに適さない性能を振り翳すならwsLPで代用できる場合もある(フェン、ドラグノフ等)。

なお、ついつい似たような観点でしゃがパンを用いたくなる心境に駆られるが、そちらは30Fのけぞりのほうが主流なので実際には適していない。安直に頼らぬよう注意したい。

および、のけぞり時間の短さが即ち相打ち用途として最良とも限らない別の目的があるなら、これらの選択肢は一旦視界の外に追いやってしまおう(硬直が少々重くても相手が遠のく方が好都合とか、ダウンを奪わせてそこからの固有技を出したい等)。

付録:相打ち温故知新

さて、ここからは今すぐ有効活用する為にとかそもそも対外的に有意義な情報であるかというよりも、自身の記憶がどこまで呼び起こせるかの挑戦も兼ねた情報を出して行こうと思う。現行の鉄拳8ではなく、旧作の相打ちシーンで活躍してきた技を可能な範囲で紹介する。

鉄拳1

元祖にして、鉄拳シリーズのみならず数多の格闘ゲームの相打ちシーンが垂涎モノの技がここにある。意外や意外、初代鉄拳は投げ掴みと打撃技の相打ちが認められており、うち打撃技を出した方のキャラは投げが成立せずにたったの「1F」硬直しただけですぐに動ける状態になるのだ。

流石に設置型の相打ち芸当が豊富なゲームには敵わずとも、弾を使わない方式の相打ちとしては極めて優れた性能と言って過言ではないだろう。そうでなくとも、一般的な2D格闘ゲームのように弱・中・強のボタンに分かれていて弱判定なら元々数フレームしかのけぞらないようなタイプの作風でもないため、殊更に異質であると言える。

出番過多。動画の序盤から積極的に用いてマス

鉄拳2

若干仕様が変わり、投げ掴み被弾によるフォロースルーのキャンセルは攻撃判定発生が過ぎた後に、体にカスるように命中した時のみの成立となった。いわばヒット硬直ではなく、スカ硬直を助ける性能へと変化してしまった。

相打ちとは関係ない事だが、空中判定の刻みに投げ掴みを用いる芸当は鉄拳2でも引き続き継承されており、特にロウ(のドラゴンダイブ。爪先に投げ判定が出る)はこれが実に有効に作用するコンボもあった程で、投げ掴みの秘めた価値はむしろそちらにスポットが当たった格好。

本題に戻ると、鉄拳2で相打ちに適していた技はリーの2RK、生ローではなくレイザーズエッジキックコンボ一発目。下段判定のローキックながらほぼ立ち状態と変わらない上体を保ち、被弾硬直は18F。リーチも意外なほどに長く、相打ちで噛み合う技がとても多かったのも魅力のひとつ。

大袈裟ながらも、当時私はこの技を「魔法のローキック、略して魔法ロー」と称して扱っていた。この技が如何にして相打ちに適してしまう仕打ち(≒弱体化)に至ったかは、前作のレイザーズエッジキックコンボは3発目のローキックを経由せずとも締めのミドルキックを任意に出し分ける方法があった事に起因すると捉えている。

これが大変にガードを翻弄する代物だった事から、そもそも2発目からでもミドルキックに移行できるルート自体が削除され、更に1発目と2発目が繋がらないようにのけぞり時間が調整を受けた形であろうと推察。

1:58

1:27

鉄拳3

リーは不在になったが、新キャラのオーガ(&トゥルーオーガ)が「強い魂を吸収し同時に力をも奪う」という設定のもとリーのリーキックコンボ(2RKnRK)を取得し、これが相打ち用途として前作同様の価値を有したまま扱えた。いずれも平均サイズと比べて巨躯である事も利用価値に拍車を掛けた。

この他、ジュリアの迅脚1発目(生RK)が魔法ローを上回る16F相打ち技として発掘、同ジュリアの前掃腿(2RK)が18F相打ち&しゃがみやられ併用用途として発掘、ポール(と平八)の瓦割り(2LP)がしゃがみ帰着用途の19F相打ち技として発掘。

今にして思えば、これらは鉄拳2時点でも同じ性能で機能していたのではないかという疑問も湧くが、真偽は不明。特に瓦割りは、前作で既に空中コンボで扱いにくくするデバフが施されている以上、のけぞり性能もこの段階で弱体化していた可能性を睨んでしまう。

なお、当時私自身は自力での発見に至らず、自前の動画では一切出番がないのだがレイの龍声一発目(6nLP)がこれらを更に凌駕する13Fのけぞりを誇り、盛んに素材収録を進めていた頃にこの事に気付いていれば間違いなく幾つかはこれを反映させたコンボを残したものと思われる。惜しかった。

1:23, 3:35

鉄拳タッグトーナメント

私個人、相打ちに適した技を焙り出す事に精を出したのはこの鉄拳タッグトーナメントが原点であり、そのためここより遡った作品でも扱える可能性のある相打ち用途技も、ようやくここで発見できたという経緯も幾分含まれる。決め手となったのは、鉄拳ライター集団卍党が発行した紫色のカバーが目印のフレーム本

この本を熟読し、ガード時のフレームとヒット時のフレームが大差ない技を洗い出した結果として、新たにロウとリーのスピンキックコンボ2発目(RKLK)、同様の技モーションであるペクのスマッシュキック2発目、ロウの左連拳2,3,4発目(LP,LP,LP,LP)、同様の技モーションであるリーのレフトジャブラッシュ、更に三島家の10連コンボ右踵落とし部分、ポールの10連コンボ瓦割り部分、レイの10連コンボ背刃落部分等が相打ち用で扱える性能と判明。

性能を大別すると、スピンキックコンボ類は16Fのけぞりでカウンターヒットでも背面ヒットでも効果を損ねないという点に秀でる、一方で左連拳とレフトジャブラッシュは同じく16Fのけぞりではあったがそれらと行使できるキャラが全く被っていた&判定もさほど強くなかった関係で日の目を見る機会はすぐに訪れなかった。10連コンボ類は該当部分の攻撃発生まで時間が掛かり、技を合わせるのがどうしても容易ではなかったのが運の尽き。それらはどれも瓦割りと同じくしゃがみ帰着の19Fのけぞり。

結果として、私個人が映像でネット上に残したTTT1の相打ちコンボ類は相変わらずリー(オーガ達)の魔法ローと、心意六合拳ズ達の生RKの出番に偏ってしまっている。鉄拳3の項でも触れたレイの龍声一発目は本作でも同様の性能であり、これも深堀りしていれば何かしらの発見には繋がったのではなかろうかと思う。つくづく惜しい。

1:05, 3:01, 4:07

2:42, 4:13, 6:55

鉄拳4

この時代に新たに発掘した相打ち技は、残念ながら記憶にない。思い出せないだけなのか実際なかったのか。自前の動画ではスティーブのジャブを相打ちに使ってるシーンをひとつ発見したものの、これが何フレームのけぞりだったのかとか単なるLPなのか6LPなのかも思い出せないレベル。

リーとヴァイオレットの魔法ロー、ジュリアの生RKが引き続き通用している事はすぐ掴めていた。

1:35

3:11

2:31

0:45, 2:42

鉄拳5

ニューフェイスのフェンは旋風連捶一発目(1RP)が18F相打ちで機能、久々に返り咲いたブルースはバレットコンビネーション一発目(3WK)が16F相打ちで機能。鉄拳5では専ら後者が出番多めだった。レイの龍声一発目(6nLP)は、もうこの時代では相打ち用途で機能してなかった気がする。

一八の双殴腿砕き(LPRPRK)の三発目が、しゃがみヒット時に限り19F相打ちで機能してた憶えがある。技自体は鉄拳4時点で既に搭載されてるけど、気付いたのは鉄拳5時代。鉄拳4でそのように扱えるかは不明。

ロウとリーのスピンキックコンボ二発目が相打ち用途で機能しなくなり、リーのみリーキック経由のスピンキックコンボ三発目(2RKnRKLK)が「背面ヒット時」だと性能健在、だったような……? これも曖昧。ロウの相打ち技はこの事情を経て左連拳の利用価値が浮上。他のラインナップと異なり、カウンター付の相打ちでも使えるのは優位性。

この記事の題名でもあるニーナの震通掌破はこの鉄拳5時代に加わった技だが、果たしてこの時点で既に相打ち用途でイメージ通りの挙動を起こしていたのかは分からない。他のあやふやな要素と比べれば割と気になる部分ではある。

0:34, 0:39

0:21, 1:30

0:15, 1:12

0:55。自分の動画では稀な、前掃腿相打ち

0:32, 1:49

鉄拳6~鉄拳タッグトーナメント2

この時代は、相打ちに関してはさしたる新発見は思い出せない。冒頭でも触れた震通相打ちが使えるうちは存分に使い倒し、旧作で使い分けてた他の相打ち技も一気に出番が薄れていった。

他のコンボメーカーの動画では、アイテム技を用いた相打ちが時折扱われた覚えがあるが、自身はそっち方面の開拓をほぼ放棄してしまい、自身が手を染めなかったが為に子細は思い出せる思い出せない以前の問題で純粋に「分からない」が忠実なる回答となる(笑

鉄拳7

相打ちの仕様が「両者カウンターヒット」に変わった事で、旧作の時点でノーマルヒット時のみ対応だった相打ち技は一斉に全滅。ここで一気にブライアンの挑発(LP+WK)が16F相打ち技として台頭。性能面ではロウの左連拳は健在だったのでどこかで出番を作りたかったが、家庭用鉄拳7を嗜んだ7年間でついにその機会が訪れる事なく幕を降ろしてしまった。

一方で、鉄拳のキャラクターでは実現できなかった「飛び道具を打ち、それを自ら追い越す」という動作が可能なキャラ、早い話豪鬼がそういったアプローチの相打ちを可能とさせてくれたのがこの鉄拳7なのだが、これも自身の観測範囲ではもりもとサンが取り入れてた以外ではロクに思い出せず、むしろ自分は手順を教えてもらったにも拘らず一切活用できなかったクチで流石に申し訳ない気分も。フロアブレイクで尋常ならざる有利を獲得していた光景はどうにか思い出せるのだが……。

おわりに

何やら、題名に比して実態は旧作の相打ち技紹介こそが本命かの如く佇まいになってしまった。最初からそれが狙いだったと疑われてもやむを得ず、そしてあながち間違ってるとも言い切れない。

そして今後もこの先も、今回のようにテーマは手掛かりに過ぎず自分自身の記憶の旅である側面が強すぎる、そんな記事を気ままに上げていくnoteアカウントになってしまうのではないかと薄々自認。ホントは少しぐらい、現行の鉄拳世代にとって有益有意義な話が綴れればとイメージだけは膨らませていたのだが、実現は尊かった。

ロートルが知った口を叩いても生存が許される為の戦略、答えはまだまだ遠そうだが足掻いてみる。

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