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それでも世界は回っている

元々小説の続きものが苦手で、なかなか触れる機会はないのですが、吉田篤弘さんだけは別格。
実は入院する時に読もうと思ってたけど、入院する前に読みきってしまった(笑)

『月とコーヒー』から生まれた新しい世界線。
「奇妙な惑星」博物館の<保管室>に勤務する14歳のオリオは
師匠、ベルダさんの突然の死によって室長を引き継ぐことになった。
ところが保管の記録に必要不可欠な万年筆のインク<六番目のブルー>がないことに気づく。
幻のインクを求めるオリオの旅が始まった。

あらすじだけでワクワクしてしまうのは吉田マジックだと思う。

3巻分通してとんでもなく大冒険というわけではなく、静かに穏やかにでもじわじわと熱く旅をしていく人物たち。

主人公のオリオは14歳にしてはとても静かに物事を見る少年。ベルダさんが亡くなり博物館を引き継ぐ流れもとても静か。
インクを探す旅に協力する自由奔放なジャン叔父さんは自由すぎながらも、要所要所で大人目線でオリオを見守ります。

個人的にぐっとなったシーンをひとつ。
2巻の終盤でリリボイという駅の町での出来事。
ホテルから駅構内を見下ろした時、亡くなったはずのベルダさんを見つけ探しにいくオリオ。
実際には幻なのですが、
何事も冷静に受け続けてきたオリオが唯一取り乱すシーンであるものの、1巻から読んでいる身としては、オリオは大人ではなく、14歳の幼い子であると気づかされる。オリオにとってベルダさんがどれだけ大事な人であるか、人が亡くなることがどれだけ悲しいことかオリオの心中に泣かずにはいられず、そのオリオを受け止めたジャン叔父さんにはとても救われる。

旅の目的である<六番目のブルー>、この世で一番深い海の底のような青色のインクといわれています。
オリオにとって<六番目のブルー>はどのようなものなのか、何故必要で、何故探しているのか、
<六番目のブルー>の存在が分かった時、オリオが向き合うこととは。
ベルダさんが日頃言っていた、
「それでも世界は回っている」
全ては優しくこの言葉に繋がっているなと思いました。

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