夢の話。その4

「わたし、お手洗い行ってくるから、席外すね。」
さて。
追及が緩んだ隙を突いて、考えを詰めなければ。
どこまで話せば良いのか、ね。
今、私の目の前にある「イメージ」をどうやって伝えようか。
唯物論と観念論から、切り出して。
社会主義は唯物論的な見方に依っていること。
宗教はアヘンだ、とかね。
観念論、全否定と来てる。
唯物論的な見方に立てば、「擬人化された狸」は真っ先に否定されるし、変化(へんげ)も同じく。
とまぁ、こんな感じで…。
かつて自分たちが傾倒した思想の、根本を成す見方を否定するのが、「ぽんぽこ」。
そして、思想や見方だけじゃない、
実践そのものも、否定するんだから、
高畑勲、徹底してるよ。本当に。

よし、まぁ、ひとまずこれで。
さて。
次はなni…。

「ねぇ、聞こえてるの?」
    「さっきからずっと話してるんだけど。」

ふぅ、現実に引き戻された。
「ごめん。全然聞いてなかった…。」
こういうときは素直に、ね。

「あのさ、デザートと飲み物、追加注文しようと思うのだけど。えるごすむはどうする?」

ありがたい…。糖分不足で倒れるとこだったから。
「私は別に構わないよ。」
「ここ、ジェラート美味しいんでしょ?」

「じゃあ、いいのね。」無言で頷いて、肯定。
手を挙げて、一言。「すみません。」

ジェラートのフレーバーはアールグレイ。
鼻に抜ける香りが心地いい。

「ねぇ、さっきのヒントも聞こえないフリも全部、 時間稼ぎでしょ?」
「考えをまとめるための。」


不意打ちとは、このことなんだろう。
ああ、お手洗い行ったのも演技か。
「お手洗いで、席外したのは演技だよね…?」

無言。わずかに口角が上がる。
これは肯定の意思表示か。

私の意図を全て読んだ上で、それに乗っかった、と。

そこまでして続きが聞きたいと言うなら、ね。
付いて来られる保証はしないけど。

そうね。まずは、ここから。
「唯物論と観念論っていう考え方があってね…」

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