ふつおた（いじめ）

　文田さん、根建さんこんばんは！
　私には後悔していることがあります。それは、高校時代に同級生をいじめていたことです。そのことはとても恥ずべきことであり、また罪深いことでもあると思っていて、今も反省しています。自分の過去の過ちを償うためにも、今回メールを送らせていただきました。

　私が同級生をいじめるようになったのは高校1年生になったばかりの頃です。ターゲットはシマムラくんという男の子でした。
　その日は学校が休みで、クラスの男子数人で初めて遊びに行く予定でした。クラスメイトの制服姿しか見たことがなかったので、皆の私服姿が新鮮だったことを覚えています。ふと私の目にシマムラくんの私服姿が目に映りました。私は彼の私服がどこか貧乏臭いと感じました。私は思い切って「お前の服安っぽいな！」と言いました。すると他の男子がゲラゲラ笑い出しました。シマムラくんは苦笑いを浮かべていました。私は、自分が毒を吐いて皆を笑わせたことに快感を覚えました。
　その後休みが明けて学校でも、私はシマムラくんに対して「おお！服が安っぽいシマムラじゃん！」などと執拗にイジリ続けました。今思えば盛り上がっていたのは自分だけで、周りはとっくに冷めていた気がします。私はそれにまったく気づかず、イジリを続けていました。
　そんなある日、私は自分の好きなアニメのコラボTシャツを買うため、ファッションセンターしまむらに行きました。ところが入店するやいなや店員が駆けつけてきて、私に出禁であると告げました。私は店内で迷惑行為をはたらいた記憶がなく、出禁になる理由が理解できませんでした。
　コラボTシャツを諦め店を出た私ですが、店の方からふと何者かの視線を感じました。その視線の正体は、窓の奥から私を見て不敵な笑みを浮かべるシマムラくんでした。そこで私は、彼の家族がファッションセンターしまむらの創業者であり、彼をいじめたことで怒った家族が私を出禁にしたのだと悟りました。
　私のシマムラくんに対するいじめはなくなりました。しかし愚かな私は、別のターゲットに対するいじめを始めるようになります。

　次のターゲットは、マツモトさんという女の子です。自分の毒舌が面白いと思い込んでいた私は、教室で彼女に対し「マツモトさんって安い化粧品使ってそう」と最低なイジリをしました。
　後日私はワックスを買うためにマツモトキヨシに行きました。するとしまむらのときと同様に入店を拒否されました。帰ろうとした私は、店の奥からこちらを睨んでいるマツモトさんの存在に気が付きました。おそらく彼女の家族はマツモトキヨシの創業者だったのです。
　私は泣く泣く、遠くのドン・キホーテへワックスを買いに行きました。

　その後私は、イトウくんという男の子をいじめるようになりました。彼は音楽を聴いていることが多いのですが、専らザ・ビートルズの「Help!」しか聴かないことを皆の前でしつこくイジりました。
　私はイトーヨーカドーを出禁になりました。私はイトーヨーカドーの店内に流れる「Help!」が聴こえてきたときに、イトウくんの家族がイトーヨーカドーの創業者であることを悟りました。

　またある日私は、コーヒーでも飲みながらテスト勉強をしようと思いコメダ珈琲に行きました。すると入口で店員から出禁を言い渡されました。私の周りにコメダという名前の生徒はいなかったので、出禁にされる理由がまったく分かりませんでした。
　店を追い出された私は、スマホでコメダ珈琲のウィキペディアを調べました。創業者の名字は加藤でした。そこで私は、カトウくんというクラスメイトがお昼に食べていたお弁当のカツサンドを見て、「お前のカツサンド、デカすぎるだろ！」とイジっていたことを思い出しました。
　私は「これはズルいって」と思いながら、その日はトボトボとベローチェの方へ向かいました。

　このように高校で数々のいじめを繰り返してきた私は現在、しまむら、マツモトキヨシ、イトーヨーカドー、コメダ珈琲、ヤマダ電機、ニトリ、スズキ、マツダ、ホンダ、トヨタから出禁を食らっています。いじめなんかしなきゃよかったと心の底から後悔しています。
　文田さん、根建さんが人生で後悔していることはありますか？