ティボルトのこと『泣くロミオと怒るジュリエット』

泣くロミオと怒るジュリエット
オールメールで作られた舞台。
脚本・演出は鄭 義信
主要キャストは以下
ロミオ 桐山照史
ジュリエット 柄本時生
マキューシオ 元木聖也
ベンヴォーリオ 橋本淳
ティボルト 高橋努
ソフィア 八嶋智人
ローレンス 段田安則
カラス警部補 福田転球
スズメ巡査 みのすけ 
ロベルト 岡田義徳
アコーディオン奏者 朴勝哲

豪華!!!!!豪華すぎる!!!!!!!
どの登場人物も素敵なので誰から書くか悩みますが、、、

死んだ順番にしましょうか(笑)
ということでティボルトについて
演じるは高橋努さんです。
ティボルトは戦争で片足を失ってしまったジュリエットの兄。
そしてティボルトを語る上では欠かせない存在であるティボルトの内縁の妻ソフィア。
ソフィアはジュリエットを幼いころから面倒見てくれた未亡人で
演じるのは八嶋智人さんです。

ソフィアはマシンガントークなおばちゃんなので、説明台詞を話す役割を担うことが多いのですが、それを全く説明台詞と思わせない勢いとテンポ。
八嶋無双と言っても過言ではないシーンが多々(笑)

冒頭はソフィアがジュリエットを迎えに来るシーンで始まるのですが、
その時の会話のシーンもその無双の一つ。
ティボルトの人となりもわかります。
台詞は記憶の中のものを書いているので、多分違う部分も多々あります。
ご了承ください。

ソフィア
「ほんま戦争であの人は変わってもうた。
そうやろ?戦争行く前は、働きもんで、優しいてええ人やったやないの!
それが何?ずっとぷらっぷらっぷらっぷらっして!
昼間っから酒飲んでっ私に当たり散らしてっ町うろついては睨み利かしてっ誰とはのぅ噛みついて!
ああああああ!どうしたら元のあの人に戻ってくれるんやろ!!!」

ソフィアの動きや口調で会場爆笑
ティボルトはこういう人っていう紹介台詞なのに、そうとは思わせないのが素晴らしいです。
紹介が終わったらそれがわかる乱闘シーンへ
ティボルトは真偽が確かではないことで三国人であるマキューシオやベンヴォーリオを一方的に追い回します。
その際にナイフを取り出したマキューシオは逆上すると何をするかわからない人という印象。
でもその手が震えているあたり、悪い子ではない。
とにかく、三国人が気に食わないティボルト
ソフィアに泣いて頼まれても今の生活を改めようとせず若頭ロベルトに評価されていることを自慢げに話します。
あきれたジュリエットは
「どうせ言うても聞かんよ、ソフィア。兄さんは悔しいのよ。戦争で死に損なったから。兄さんは死に場所を探してるんよ。死にとうて死にとうてたまらんのよ」
と。
図星を突かれたティボルトはジュリエットに手を上げようとするものの
「殴りたかったら殴ったらええわ!兄さんは卑怯よ!卑怯もんよ!」
と凄まれ、ティボルトはジュリエットを押しのけるに留まり、お酒を飲みながら去ります。
ここではティボルトはカッとはなっても冷静になれる実は理性もある人で、
キャンキャンと吠えるソフィアにも「3べんも言うな」とか「声がでかい」とか全く笑顔はないけれど、いちいち突っ込んであげてたり、
ただのイライラした嫌な男性というだけではないというのがいろんなシーンで伝わる。

落ち込んだソフィアを元気づけるべくジュリエットの提案で二人はダンスホールに繰り出します。
そこでロミジュリは出会う訳ですが、
ティボルトはロミオとジュリエットの間に分け入り、
「これは俺の妹じゃ!妹は三国人とは踊ったりせん!!!」
とジュリエットを連れ帰ります。
ここは原作とは違いました。
原作ティボルトはジュリエットのいとこで、同じように舞踏会に乱入しようとするのですが、
ジュリエットの父に「宴をぶち壊して主催者である私の顔に泥を塗るつもりか!!」と怒られて乱入できませんでした。

ジュリエットは兄が差別主義者だとは知らなかったと憤るのですが、
ソフィアにそうやない、キャピュレットと敵対するモンタギューやからやと説明されます。
そう、ティボルトは差別主義者ではないんです。そういう人ではないんです。
ゆすり、たかり、ピンはね、著作権侵害、ヒロポンの密売、、、どれも手を染めたりしていないし、
私たちはそんな荒い稼ぎはしないというロベルトのいうことを素直に信じていて
頼りにされているから兄弟の盃を交わしたいと純粋に思っている人。

ロミジュリの状況を確かめようとティボルトの家の周りに来ていたマキューシオとベンヴォーリオと言い争いになり、
「お前、なんちゅう目ぇで俺のことを見よるぅ」と松葉杖の柄でマキューシオの目を隠し煽る。
ベンヴォーリオに引きずられるようにマキューシオは去りかけるが、
追い打ちをかけるように「早よ、国に変えれ三国人!」と。
ついにキレたマキューシオは「決闘や!!!」と。
ティボルトは受けて「カモメ埠頭に午前0時」

その姿を見ていたソフィアは本当に決闘なんて馬鹿なことを言っているのか?
といつもとは違うこわばった表情で問い詰めます。
それでも、なんも殺しあうわけちゃうわと軽く流そうとするティボルトにソフィアは泣き崩れます
「なあ、あんた戦争で何があったん?何があんたをそんなにしてもたん?
私はあんたの苦しみをわかってあげられへんの?
一緒に苦しみを背負わせてもらえへんの?なあ、私はあんたの何なん?」
と。
「こんな道端で泣くなや」
と弱り顔で言うティボルトに
「聞かせて!」と顔を上げてきっぱりというソフィア
「何から話したらええんか、、、」
と言い澱むティボルトに
「あんたいっつも、うなされとるね。戦争の時の夢なん?何がそんなに苦しめとるの?」
と。
「病院の夢や」
と語り始めるティボルト。
左足を失ったティボルトは野戦病院に入れられるが、杖さえあれば歩けるので治療もそこそこ衛生兵にさせられる。
そこは病院と呼べるような場所ではなく、ただ死にゆく人を見守るしかない死体置き場のような場所だった。
しかし、そんなのは本当の地獄じゃなかった。
戦争が終わり自力で帰ることができないものは殺せという命が下る。
はじめは抵抗した兵長も上官から味方に殺されるのは本望だ!やれ!と刀をちらつかされて脅され命に従うことを決めてしまう。
元気になる注射だと言って血管に空気を送り込む味方を殺していく衛生兵。
人殺しだと騒いだ人もすぐに殺される。
「俺に妙になついとる三国人がおって。
色が白ぉて、両足失のうてやせ細っとるのに、妙に明るぅて。
俺のこと‘ヒョン’、‘ヒョン’言いよる。
どんな意味や?いうたら‘兄さん’やって。
故郷の兄さんによう似とるっちゅってぇ。。。
俺がそいつの目の前に行ったら、にぃっこり笑ってぇ、じぃっとまっすぐ俺の目ぇ見てぇ、、、そっと腕差し出しよったぁ、、、
俺は、、、その白くて細い腕にぃ、、、ああああああああああ
俺はあの目ぇが忘れられん。いっつもあの目ぇが俺を見とる。あの目ぇを見ると、俺はぁ怒りやない、切なさやない、ようわからんもんがぁぁぁぁ」
と泣き崩れるティボルト。
話しているその途中からソフィアはもうわかった、もう言わんでいいと顛末を予想して制止しようとするが
もう止まらず溢れ出るティボルト
ソフィアは抱きしめ腕をさすりながら一生懸命笑顔をつくり
「もう、忘れよ!な、そうしよ!戦争も盃も忘れて1からやりなおそ!
なあ、うちらちゃんと籍入れとらんやろぉ
ちゃんと籍入れて、友達呼んで、ささやかなお祝いやろ。
がんばったらややこもできるかもしらん!私まだまだ頑張れるでぇ
な!そうしよぉぉ!」
そしてティボルトを立たせてあげる。
ティボルトはソフィアにしがみつきながら
「ほんまに、そうできたらぁぁ」
と心の叫びを絞り出す。
ソフィアは明るい声で「できるわよ!」とティボルトを支える。
でも、ティボルトは無言でソフィアを払いのけ、去ってしまう。
「ティボルト?」
つぶやくように問いかけるもティボルトは振り返らない。
路地に消えていったティボルトにソフィアはありったけの声で
「ティボルト!ティボルト!ティボルト!」といつものように3回繰り返して叫ぶ。
絶望しながら「ティボルトぉぉぉぉ」と泣きながらはけていくソフィア。

号泣。
ティボルトの「どんな意味や?」の言い方がびっくりするくらいめちゃくちゃ優しくて、
本当のティボルトはこういう人なんだろうな
って、一瞬のうちにティボルトの味方にさせてしまう。
すごいよ高橋努さん!
そして、白くて細くて妙に明るいってまんまマキューシオじゃん!!!

そして決闘の場に現れたティボルトは仲間にドス渡されてマキューシオを刺し殺してしまうんだけれど、
刺した後、周りに逃げようといわれてもその場を動けず、マキューシオからずっと目が離せない。
マキューシオがついに死んでしまった後取り乱しその死体に泣きながらしがみついて
「起きろ!」
と無理やり起こそうとします。
それを見てロミオが引き離すためにドスでティボルトに切りつけ我を失ってドスを振り回すわけですが、
その振り回し方は明らかに誰かを殺そうとするものではなく、マキューシオの周りから追い払いたかっただけ。
ティボルトはそんな隙だらけの動きのロミオとすれ違いざまドスをもった腕をつかみ自分の胸に突き刺し死にます。

いや、ロミオは可哀想すぎた!
巻き込まれただけのロミオが本当に可哀想!
そのあと雨の中で泣き崩れるロミオに全力で同情した!

でも、ティボルトだけの目線で考えると、マキューシオまで殺してしまったらティボルトはきっともう生きてはいけないし、
本当はあんなに優しい人がこれ以上苦しむのは見ていられない。
死ねた方がきっと幸せだった!その決断は間違ってないよ!って心の底から思いました。

ティボルトについては以上です!

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