「雨風鈴」解説

この作品はキャプロア出版刊週刊キャプロア第5号「水編」掲載作品です。

それまで週刊キャプロアでは、小説は300字〜1600字のショートショートのみ掲載されていました。この号では、この雑誌での初の試みとして2400字〜4000字までの小説の枠が設けられました。
4000字でもショートショートの範疇ではないのかなと、個人的には思うのですが、なんにせよ、制限がゆるくなることはありがたいことです。

この号の書き手の募集がはじまりました。この号の頃、ショートショート枠は人気で、あっという間に埋まってしまいます。
ぼくは創刊号からこの号までの4号に、連続してショートショートを掲載いただいていたので、長めの枠で挑戦することにしました。新しいものに取り組もうと思ったのです。
そこで、一旦長い方の枠で申し込み、書きかけていたのですが、書き手のグループの中で、ショートショート枠を申し込んでいた方でひとり、長くなりそうなので長めの枠に移りたいという要望が出ました。ショートショート枠が空くことになったのでぼくが申し込むことにしました。
長めの小説枠は、まだ空きがあったので、そのままそちらも書くつもりだったのですが、そちらは追加で別の書きたい方が現れたので、最終的にはショートショート枠一本でいくことになりました。
この号のために書きかけていた作品は、宙に浮いて、しばらく書かずじまいだったのですが、やっと昨年末に仕上げることができました。またこちらでも公開できればいいなと思います。

この作品についてです。
一般的に、プロの小説家のあいだでは、主人公の性別と書き手の性別は統一させるものだそうです。理由としては、作者の性別から、読み手が勝手に先入観を持ち、違和感を感じてしまうことらしいです。もうひとつは、男女では、それぞれで物の見方や感じ方が大幅に変わることが原因で、主人公の行動やセリフ、感情の動きが自然でなくなるということだそうです。
たしかに、調べてみると、作者と主人公の性別が同じでない作品は少数なようです。

さて、この作品では男のぼくが書いた作品ですが、主人公は女の子です。この作品の重要なアイテムとして、風鈴が登場します。ぼくの個人的な感覚では、風鈴には男の子よりも女の子の方が合っているような気がします。
そこで禁を破り、敢えて女の子を主人公にすることにしました。
読者が、性別の違和感を、出来るだけ感じないように、前半での主人公の女の子は、女性性をあまり持たせなくても自然な、思春期前のボーイッシュで、中性的なイメージで書いたつもりです。 個人的には、満足いく仕上がりになったように思います。

雨は、お天気の中でも、ネガティヴに捉えられることが多いような気がしますが、ぼくはそうでもありません。
雨が降っている中、出掛ける予定もなく、布団の中で天井を見ながら雨音を聞いていると、もうこのままなにもしなくても幸せだなと、思うことがあるのです。

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