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銀杏通り

その人から封筒を預かってそのあとはふらふらと歩いていた。銀杏が香る街は少し涼しくなっていた。二年前、ここに初めて来たときもこんな風な風が吹いていたような気がする。その時のことを少し思い出しながら街を歩いていると見慣れた看板が見えてきた。「居酒屋ゾラの水たまり」変な題名だけど僕はこの居酒屋がなんとなく気に入っていた。理由は、と聞かれるとなんとも困ってしまうけれど、そこに居ついてしまう猫のようになんとなくその店に通っていた。その看板を通り過ぎるとき後ろめたさを感じた。封筒を握りしめたまま耳にイヤホンをしてふさいだ。それでも街の雑踏や落ち葉を踏むかさかさとした音は隠しきれなかった。