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10年目の始まりに ③

花束のお花を少しずつ砂浜にお供えして

手を合わせて

福島県の海沿いを北へ

いわき市を出る手前の砂浜で某全国区の新聞記者の方に声をかけられた

「何方か亡くされたのですが?」

「いいえ、違います。」

「お知り合いの方がいらっしゃるのですか?」

「いいえ、いません。」

「関係ないのにすごいですね。写真を撮って記事にさせてもらえませんか?」

「関係なくないですよね?」

「あ、、、」

「でも、記事にして下さい。」

そんな会話のあとで気不味そうにしている新聞記者の方に

僕の真意が伝わったかな

もしこれが記事になったとして

被災者の方々がその記事を読んだとして

「忘れられてないんだな」って思ってくれたら良いなって

「忘れてないよ」って僕なりのメッセージが届いたらなって

海岸沿いで花束を抱えて歩いていると

たくさんの方々に出会った

旦那様を亡くされた奥様はあの日以来、月命日には海に手を合わせには来るけど

砂浜に足を踏み入れることが出来なくなったと

奥様を亡くされた旦那様は娘二人を連れて海に向かって手を合わせてた

その双子の娘さんたちにお花を分けてあげて一緒に手を合わせる

ご両親を亡くされた同年代の女性にもお会いした

「忘れられてないって嬉しいですね」そう笑顔で泣いて話してくれた

「無理しないで」と言う言葉が凄く辛かったと話してくれたおばあさん

「無理しないとやってられない」そう言った眼差しに胸が締め付けられた

やっぱりさ

「何も出来ない」じゃない

「知ることなら出来る」でしょ?

そうして9年経った今でも尚

帰宅困難区域となっている双葉町へ入る

相変わらず国道6号線はゴーストタウンで

少しずつその区域も狭くなってるけど

ここは同じ日本なんだって考えるだけで恐怖を感じる

そしてやっとその区域が解除された地区へ

あの時のままの場所へ

僕は向かった