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VOTZCOインタビュー

「VOTZCO」。果たしてこのバンド名を自信を持って読める人がどれくらいいるだろうか?

友人とオススメのバンドの話をしている最中に(ぼつこ)という単語を出してもそれが「VOTZCO」という多くのフライヤーやライブ告知で目にしたことがある文字と結びつく人はまだそこまで多くはない。だが、2016年になると彼らの初めてのDEMO音源が完成、耳の早いリスナーの間ではこの春から夏にかけて一部界隈で話題になり、ひと度ライブに誘われるとそれを目にしたり耳にしたりした人々が要注目株としてこぞって彼らをライブに誘った。その本質はライブにあり、音源ではベールに包まれがちだったその轟音と疾走感は実際に耳にするとそれは音源の比ではなく、確実に心を捉えた。個人的にはNai HarvestがTOPSHELFからリリースしている2ndのガレージパンクに寄ったサウンドがもっとノイジーかつエネルギッシュになったような音を鳴らしていると感じている。

ライブの出来も不安定で、サウンドもやろうとしていることは伝わるが決してポップに振り切ったり、わかりやすいものではない。しかし、ヒリヒリとした質感や演奏から感じる熱量とセンスは僕らを魅了するのには十分であり、なぜかこの先すごいことになるんじゃないのかと期待させてくれるフレッシュさも持ち合わせている。とにかくひと度どこかのピースがハマってくれればすぐにでも多くのラフメロディック~オルタナティブパンクあたりのリスナーをすぐにでも黙らせてしまうのではないか。群雄割拠の若手シーンにおいて、最近で言えばBEACH SLANGの快進撃くらい躍動してほしい。

過去のライブを見てもらえればわかるが、活動を始めて以来、十三月の甲虫のイベントに顔を連ねるなど、5000、sans visage、VOGOS、年貢あたりのバンドと共にライブハウスを賑わせながらも、フレキシブルにライブ活動をしているためインディーからパンク、ハードコアなど毎回出る企画の色もメンツもそれぞれ違う結果になっているのも彼らの注目度を如実に示している。そんなVOTZCOが今回DEBAUCH MOODより2016年11月5日に7インチ「RUN AWAY/GILL BESSON」を発売する。それについては愛のある解説で公式に紹介があるのでそちらを確認していただきたい。

(アサノくんがメルカリでPCを買うところから始めて制作した渾身の青臭くも勢いのあるMV)

以下、DEBAUCH MOODレーベルINFOより一部抜粋(http://debauchmood.blogspot.jp)

ベースレスsoft fuzzed-out 90's(以降)style "POP" PUNK TRIO『VOTZCO』東京にて2014年結成。リリースされている物はdemo録音のみ。ライブでなければバンドの全容が掴みづらい立ち位置にて、様々なイメージを持たれている『VOTZCO』。彼らにとって今作は、過去の録音と比較しても有り余るほどに現実の姿を刻み込み、まさに『気合い一発』、『一心不乱』な純粋すぎるテンションと青き楽曲~整然とは真逆をいく『自分達の快感だけを追い求めている様』を清いまでに強く具体化した初(7")シングルとなっている。

そんな今回のシングルは、メンバーが基本影響として公言するJAPANDOROIDS等を起点に置きながらも、THE TRADITIONAL FOOLS以降の質感を日本の若者ならではの理屈度外視自然体現にて(形態的なR&Rから離れながらも感覚的なR&Rに比重を置くという事)解釈。

時に半壊かつ微SCUMさをライブでは散見させつつも、徐々に沸点へと向かいブチ切れた幕引きを行う彼ら。そこには個々の観せ場を理解しながら強引に進めようと暗中模索し続ける姿が在る。『こうならざるをえなかった』結果へと堂々と着地する様は荒く不安定な部分を内包しながらも、濃く強い『個性』の種子としてそこに見え隠れする。時には意見の対立を行いながらも、進み濁さず剥き出すプライドを強く持ち、全ての原動力は彼等が気持ち良くある為だけに活動として存在するのだ。

※ジャケットはRainbath Visual名義で活動するReuben Sawyer(http://rainbathv.tumblr.com)による書き下ろし。デザインはスズキユウマ(OFFICE VOIDS / POSTER)


毎週のようにライブハウスで会い、いつもたいてい疲れた顔してボロボロの靴を履き、酔っぱらってフラフラだらだらと真っ当で嫌いになれないような話をするアサノ(上手ギター)。最近はワールドダウンタウンの動画を見漁り、司会の「ジル・ベッソン」の名前を次にリリースする曲名にしようと目論む男。(今回のシングルのクレジットをご覧下さい)

どこかひょうひょうとしていて、でも好きな音楽の話になると勢いよく少年のような笑顔で話す、こだわりが強いカイト(下手ギター)。好きな女の子はゆるめるモ!のもねちゃんだったが残念ながらこの夏グループを卒業。オタクも卒業。(しかし、最近新たな名前で別グループに加入。どうするカイト?)

ライブ中は一心不乱にドラムを叩き、よくわからないけどたぶん1番ヤバイやつとみんなが口をそろえる寡黙そうなのに面白いリョウくん(ドラム)。「マイブームは歯磨き。最近リステリンを初めて使ったら全然口が気持ち悪くならないんで驚きましたね。フィリップスっていうちょっと高いやつ使ったらめっちゃヤニが取れてそれにもびっくり」だそう。

そんな3人が出会った時の話から、過去の音楽遍歴、バンドが動き始めたターニングポイント・ベースレスというスタイルでVOTZCOが成立する理由、自分たちのバンドのあり方などについて語ってもらった。(インタビューは7インチ製作中の2016年夏に実施)なお、メンバーがひとりずつ遅れて合流してくるという異例のスタイルと、これまでのバンドヒストリーへの比重などにより、またまた少々長くなっております。今回もご勘弁を。

メンバーもまだ揃わないけど、結成にまつわる話から聞いてもいいかな?

カイト:はい。出会いは大学のサークルですね。みんな同級生で。2人の歳は1個上なんですけどね。出身はおれは八王子で、アサノくんは山梨、リョウくん(イシカワ)は今も横浜に住んでます。

最初から友達として仲良かったの?バンド組むから知り合ったとかじゃなくて。

カイト:そうですね、普通に同級生だったので遊んでた仲でした。元々おれ以外の2人は「saba」っていうバンドをもうひとり別のやつとやっていて彼らは大学時代はその活動をしてましたね。まぁサークルでいろいろバンドやってたんで自分もリョウくんと一緒にsabaとは違うバンドを組んでたこともあったし。大学を卒業するタイミングって1回バンドをどうするかっていう時期が必ず来るじゃないですか。おれらの周りもみんなバンドが止まっちゃって、自分たちも活動こそしてなかったんですけど、卒業してからも週に1回は飯食ったり遊んだりっていう関係が続いてたんです。特にアサノくんとは家も近かったので。そんな中でもパブリック娘。が僕らの先輩だったんでよく毎週のようにライブに遊びに行ってたんですよ。

パブリック娘。は斎藤辰也、清水大輔、文園太郎の3名によって結成されたラップユニット。これまでMaltine RecordsやAno(t)raksのコンピレーションアルバム、2016年に1st.アルバム「初恋とはなんぞや」をリリース。

カイト:その時期はパンクとかハードコアとかも自分はあまり聴かなくなっていて、アイドルに興味が沸いてきたり友達とだらっと遊んでたり。そんな何もしていない時期が大学卒業から1年くらいは続きました。なんとなく退屈だなって気分をずっと抱えていて「自分たちの手でなにかやりたい!」と漠然と思いつつも、アサノくんもおれも「こいつとやるのはなんかな~」ってお互い照れ屋だからなかなか言い出せずにいたんですね。ある年末にパブリック娘。のライブが恵比寿BATICAであって、その帰り道にアサノくんと寿湯っていうよく通ってた銭湯に行って、そういう気持ちがとうとう我慢できなくなって「あのさ、バンドやりたいんだよね」って自分から言い出しました。

カイト:はじめはその2人でやろうって始まったんですけどおれもあいつもどう考えてもパートはギターなんですよ。そこはお互い譲れなくて。当時はfour tomorrowみたいなメロディック寄りなものも好きだったし、FUGAZIみたいなのも元々好きだったからそういうエッセンスの混じったものができたらおもしろいなーと漠然と思ってましたね。お互い曲も書くし歌うから曲を持ってきた方がメインを張る感じに自然となって、ベースはいないけど下手に妥協するよりはギター2本であとはドラムさえいればまぁバンドにはなるだろうっていう考えでした。そう考えたらおれらの頭に浮かんだのはリョウくんだったっていう。

そこで3人揃ってVOTZCOになるわけだね。バンドにとって初めてのターニングポイントっていうと初ライブになるのかな?

カイト:ライブするようになるまで1年くらいかかるんですけどその前におれらにとって最初のターニングポイントがあるんですよ。バンド名の話なんですけど。

そう言えばなかなか読み辛いバンド名だもんね。由来にもちゃんとエピソードがあるのか。

カイト:はい。中野に住んでるんでよく中野近辺で遊ぶんですけど、そこにとあるメイドカフェがあって30分飲み放題があるんで安く飲むために利用してたんですね。2人で行くと1人メイドが付いてくれるシステムで指名とかないんでテキトーに飲んでたんですけど。ある時にマギーって名前の女の子がついてくれてなぜかおれらと意気投合しちゃったんですよ(笑)。ちょっとオラオラっぽいというかノリが超良い子だったから単におもしろくて話しやすかった。酒飲むために利用してたようなおれらのことなぜか次に行った時もちゃんと覚えててくれててそこから仲良くなったんです。で、その時期にずっとバンド名を決めようとしてたんですけど、「実際なんでもいいけどだからってなんでもよくない」っていうこだわりが3人ともあるから、かっこいい単語とか各々考えてきて話し合ってもなかなかしっくりくるものは決まらなかったんですよ。「マッハ〇〇」、「バキューム〇〇」とか、ATARI~とかyogee~みたいに単語3つ並んでる名前が良いとか、いや単語ひとつにしたいとか全然埒があかなくて。こんなことならいっそ他の誰かに決めてもらったほうがスタンスとして気持ちいいんじゃないかなって思った時にそのマギーの顔が浮かんだんです。

アサノ:おつかれ~っす!(ここでアサノが合流)

カイト:お!今ねバンド名の由来の話してたところ。

アサノ:いちばんくだらない話のところじゃん(笑)。

カイト:そうだけど大事なとこじゃん!・・・えっとそれで3人で練習した帰りか何かの時に今日お店に寄ってもしマギーがいたら決めてもらおう!っていう謎のノリになってお店に行ったら本人がいたんです。残念ながら僕らのところには彼女はつかなかったんですけどね。でも、僕らの方も気にかけてくれたたみたいでその合間にこっちに来て「今からぼっこ行ってくるからさ!」って威勢良く話しかけてきた。「ぼっこって何?」って聞いたらそこが猫がコンセプトのお店だからどうやら休憩のことを「日なたぼっこ」と呼ぶみたいなんです。それからマギーが「ぼっこ!ぼっこ!」って連呼するうちにおれらのツボに入って、それ案外かっこいいんじゃないかって思ったんですよね(笑)。スペルに「TZ」とか入るとどこかしらオルタナ感も出るんじゃないかと思ってそれを元に「VOTZCO(ぼつこ)」というバンド名がようやく決まりました。


だからそんな聞き慣れない名前になったのか。そのマギーは今どうしてるの?

カイト:それが2014年の夏くらいの出来事だったんですけど年末くらいにお店と揉めたらしく気づいたら辞めちゃってたんですよね。twitterのアカウントもあったんですけどアイコンが真っ暗になって愚痴が書き込まれた後に消えてしまって。おれらもそのバンド名が決まってから1回もその店に行ってないんで、ライブに来てよとかも一切言えずに会えなくなっちゃった。そんななんとなく寂しい気持ちになりつつ日々を過ごしていたら、しばらくしてバンドアカウントに知らない人からふぁぼがついたんで辿ってみたら「グラビアアイドルやってます!」って書いてある女の子で顔を見たらなんとマギーだったんです(笑)!まぁそれから再会することはなかったですけど、名付け親がバンドのこと気にしてくれたんだなって思ったら嬉しかったですね。

なんかいい話!

カイト:まぁそこが俺らにとってのバンドとしてのはじめのターニングポイントなのは間違いないっすね。なんだか身も蓋もないエピソードではあるんですけど(笑)。

そうかそうか。ところで音楽の話も少しはしなきゃね(笑)。みんなは元々好きだった音楽はそれぞれ変わったりしてないの?

カイト:おれは中3の時にGREEN DAYやRANCIDが最初ですかね。八王子だったので周りにはちょこちょこ同じような音楽聴いている人はいました。ポップパンクやメロディックを聴きながらも1番好きになったのはガレージ。THE STROKESとかよりはin the red recordsやCryptRecordsから出しているようなバンドが好きで、日本だとKING BROTHERSやギターウルフが好きですね。

アサノ:おれの音楽の話は今はwaveっていうバンドをやっている伊波くんっていう友達が外せないんでちょっと話してもいいですか(笑)?彼は高校の同級生なんですけど、おれらは高校まで毎日2時間弱かけて一緒に通ってたんですよ。甲府にあったSTREET JUSTICEっていう山梨唯一のパンクレコ屋とかバードランドっていうただの中古ショップで音源を買って、通学中「お前最近MDで何聴いてるの?」「GOING STEADYの「さくらの唄」だよ」とか、そんなやり取りをずっとしてたんですけど音楽を聴くだけじゃ毎日の2時間はとてもじゃないけど埋められなくて伊波くんとずっと銀杏BOYZのBBSに入り浸ってましたね。

アサノくんもそこの住人だったか(笑)

一同:(笑)

アサノ:そうなんすよ。実は当時あそこを見てたっていう人やっぱり多いですよね。そこにめちゃくちゃメロディックとかが好きな奴がいて、書き込みを読んでいる限り、そいつの中ではTHIS WORLD IS MINE が最強で海外ではBroccoliが1番好きみたいな。でも音源も手に入らないし動画も見当たらないし直接そこにはハマらなかったんですけどね。東京ではどうなのかとか遠い昔の話なのかとか当時の自分の環境ではいまいち見当もつかなかったから。それまでも普通にNUMBER GIRLとかは聴いてたんですけどパンクというかこっちの世界の音楽に激ハマリしたきっかけはMAN☆FRIDAYのディスコグラフィーを手にした時ですね!聴いた瞬間に「これが1番かっこいい!」って思ったし、それを買ったSTREET JUSTICEへの信頼もやっぱり間違いない!って確信しました。だいぶお世話になりましたねあそこは。でもSPRAY PAINTにはハマらなかったんですけどね、なぜならSTREET JUSTICEには売ってなかったから(笑)。高校を卒業する頃には残念ながらお店は無くなっちゃったんですけど。

おれもMAN☆FRIDAYもJOYもすごく好きだわ!その後大学で東京に出てくるわけだよね?その時期によく観てたバンドとかは?

アサノ:おれはたぶんPASTA FASTAですね。


たぶんその頃からにおれも知らずに顔を合わせてたんだろうね。こないだの結婚パーティーでのPASTA FASTAも最高だったー!

アサノ:うらやましく思いながら動画見てましたよ!最高っぽかったですね。確か初めてライブを観たのは2009年夏頃に長州ちから(十代暴動社)企画の「東京にもあったんだ(WAS IN TOKYO)」にリョウくんと行った時ですね。

長州ちからってVOTZCOとちょっと世代離れてないっけ?

カイト:そうなんですけど、長州さんはおれらが入っていた明学の現代音楽研究会ってサークルの先輩なんです。サークルの掲示板にはOBからもライブがあるとよく誘いの書き込みがあったのでその周辺のライブにも遊びに行くようになりましたね。

アサノ:ダンカンシステムって言って受付でダンカンの名前を出すと1000円で入れたりしたんでお金無い僕らも遊びに行けました(笑)。

そのシステム知ってるわ(笑)。

カイト:特に自分はGREEN DAYとか好きだったのもあってそれまではそれこそPUNK SPRINGとか大きなライブにしか行ったことがなかったので、アンダーグラウンドっていうか身近で規模の小さいライブにちゃんと行くようになったのは長州さんの存在は大きいです。大学1年の時だから2009年6月に渋谷LUSHであった十代暴動社のレーベルショーケースにレシーバーズポンポンヘッド、 knock note alien、 ガガキライズ、CLISMSが出てたライブが最初かな。

アサノ:レシポンもよく観に行ったな~。こういう世界もあるんだなってインパクトがでかかった。その東京にもあったんだの帰りにリョウくんとバンドやりたいねって話して前に組んでたバンドをやり始めました。ギターも弾いたことがあったくらいで持ってなかったんですけどね。バンド始めても憧れのPASTA FASTAと邂逅するのも時間かかったな~。VOTZCOになってからだから最近ですもん。特にあの頃の赤石さんは怖かった覚えしかない(笑)。

カイト:東京でバンドやるっていう価値観みたいなものは完全に長州さん周りから得たものなんでそこから始まった感はありますね。

アサノ:特にフックアップしてもらったことは1回もないけどね(笑)。

カイト:まぁね。でもそこでいろんなバンドを知って人と繋がって、ドムスタとかに遊びに行くようになって朝4時にフジロック(仮)のライブを1時間くらい観て超具合悪くなる・・・みたいな日々を過ごしてましたね。

SHIPYARDSのしのざわさんは?おれはあの人が珍しく新しいバンドを褒めてるな~と思って気になって、VOTZCOがググッと近くなったんだけど。

カイト:出会ったのはそこの人たちと比べると全然最近ですね! over head kick girlの新代田でのレコ発の翌日のマルディックスタジオでの企画で。石田さん(輝じゃない方・国立パンク大学教授)から紹介してもらってしのざわさんと話してるうちに共通項である八王子のローカルトークで盛り上がって、「八王子のやつと山梨の奴が一緒にバンドやってるなんて最高に決まってんじゃん!まだ音も聴いてないけど!」って気に入ってもらえたみたいで、その後どうやらバンドの音も気に入ってくれたみたいですね(笑)

あの人もなかなかこじらせてるからおもしろいよね(笑)。でも会うと確かにVOTZCOのことを「逸材だ」ってえらく気に入ってる話をしてくるよ。

ここでいろんな人との出会いとか過去のライブをまとめてきたという手書きのメモを取り出すアサノくん。意外とマメな一面。


アサノ:昨日緊張して寝れなかったんで(笑)。

カイト:さっき話してたんだけどさ、結成って2013年の12月であってるよね?

アサノ:そうだっけ?あ~あのBATICAの後か!

カイト:思い出した! さっきの結成話のことなんですけど、その時期はそうやって何もしていない状態だったからせっかくのライブもいまいち入ってこなくて。でも周りを見渡せばパーティー騒ぎ。こんなのは嫌だ!って内心そんな生活に終止符を打ちたかったのも自分たちが動き始めた気持ちのきっかけの一つだったと今考えると思います(笑)。その時はもう自分たちが気持ちいいって思える居場所が目の前にはなかったんですよね。

アサノ:ちょうどさっき話してたような長州さん企画のイベントも無くなってきた時期で、これは自分たちで遊び場を作らないとダメだなって思い始めたんですよ。だからようやく動き始めた。

そこから約1年後にドムスタで初ライブをするわけだね。

アサノ:そうですね、誰にも誘われないから仕方なく(笑)。覚えているのはその時期にちょうどKiliKiliVillaが初イベントやってましたね。

カイト:キリキリが動き始める前くらいに石田さんから「CAR10ってバンドかっこいいよ」って教えてもらってたんで寿湯でアサノくんに「CAR10ってバンド知ってる?」って話したのを覚えてるな~。

アサノ:おれはなぜか教えてもらってなかったんですけど、YouTubeでやたらと関連動画に彼らの「海物語」のMVが出てきて、バンド名は聞いたことあったけどずっと「好きなもんか」ってスルーしてて、ある日ふと聴いてみたらすぐに「なんだこれ、かっけー!」ってなりました。カイトくんに自分から「CAR10ってバンド知ってる?」って言うのはなんか恥ずかしいな~と思ってたら同じタイミングで魅力に気づいてたようでなんかほっとしましたね(笑)。

(彼らのライブの定番曲だったが最近のライブでは新たなるアンセムが代わりによく披露されている)

アサノ:その頃にSUMMERMANもTAPEのレコ発やってたし、fallsも初ライブだったりで今シーンを賑わせ始めてるバンドがどんどん動いてたイメージがありましたね。

カイト:あのアビちゃんがレーベルやるらしいぞ!って周りで噂になって、DIG!って題して動画も上げられ始めて、LIFE BALLの次にオリジナルのリリースするのがこっそりと「やべーぞ!」って話してたCAR10だと知って「そういうことか!」って自分の中で繋がりました。

今年DEMOを出して以降、今でこそ毎週のようにライブに誘われてて本数も多いけど初ライブ以降はそんなに順調ではなかったみたいだよね。

カイト:すげー長いこと話してますけどまだここまでの話でVOTZCOが全然ライブしてないですね、ヤバイ(笑)!そうですね、しばらくは沈黙していたんですけど自分の中で決定的に大きいのはTHE GUAYSの企画ですかね。まず2月に出たドムスタのライブにGEZANのマヒトくんとかTHE GUAYSのヒロシくんが来てたんですね。前日にボディランゲージでグアイズのライブを観て、革ジャンにマーチンのスタイルに一発で打ちのめされたんですよね。電撃バップバリバリでやってたんで彼ら。そんなタイミングでヒロシくんと話したらタメだとわかって連絡を取る仲になったんです。誰にも呼ばれないからなかなかライブもできなくて曲だけ作り続けてたら、急にグアイズが企画やるからって誘ってくれたんですよ。音楽性とかそういうんじゃなくパッションみたいなもので。


アサノ:だってあの時ヒロシくんたまたま扉開けておれらを観ただけだから、その時のガレージみたいな1曲のイメージだけで完全にガレージパンクバンドだと勘違いしてたもんね(笑)。

カイト:「お前ら全然ガレージちゃうやん!」って後日言われたね(笑)。そのグアイズ企画の日からすべてが始まったって言えると思います。バンドとしてやっとスタートを切れた感覚がある。CAR10やCAVITYSともそこで知り合えたし、お客さんもけっこう来ててやっとちゃんとおれらを見てもらえた日。アサノくんが1曲目の1音目からギターの弦切っちゃって会場がポカーンってなってグアイズのキャプテンが渋い顔してたのを今でも覚えてますけど(笑)。

ははは。それはなかなか忘れられない空気だね。そんな時期もありつつ最近ではライブもしょっちゅうやってるよね。やっぱり決定的なのはDEMOを出してからの反響が大きかったのかな?

カイト:そうですね、それは確実に。こうやってよこちんさんとかにも音源を出した流れで知ってもらえたと思うし。ありがたいことに色々なところで取扱ってもらっているんですけど、赤石さんのところのtoosmell recordsに置いてもらったのが反応してくれた人が多かった要因かなって個人的には感じてますね。

アサノ:あとはやっぱり口コミで周りの人に「こんなバンドがいるよ」って広げてくれた人たちの存在も大きいと思います。今回7インチをリリースしてくれることになったDEBAUCH MOODのシュウゴさんとか。

カイト:赤石さんがtwitterに突然おれらのsoundcloudを貼ってくれたのもしのざわさんが話をしてくれたからだし、おれの通ってた高校が赤石さんの地元で、赤石さんのおじいちゃんがそこでかつて教師をしていたとかいう話になったり、シュウゴさんも八王子の人だからなんかはじめはみんな音楽とは少し違うところで関係が進んでいったのもおもしろい出会い方だなって思いますけど。

アサノ:考えてみたら音楽がきっかけになってなにかが動いたことなんて1回もないねおれら。

カイト:シュウゴさんはその昔soundcloudに上げてた荒すぎるiphoneで録音した曲を聴いてなんとなく気にしてくれてたみたいでセミファイナルジャンキー(十三月の甲虫企画)に来てくれたんですよ。ちょうどその前に自分たちと若者っていうバンドの共同企画で空回りしすぎてバンド史上1番クソなライブをした後だったから、セミファイの中で1番知名度もなかったおれらは今日こそやってやるしかないぞと意気込んでたんですけど案の定どんどんお客さんが減っていって残ってくれたのがたった4人とかで、ホームレスみたいなやつとか2m位の身長でタンクトップにグラサンバンダナみたいな怪しい奴しかいなかった(笑)。そんな中なぜか異様に盛り上がったんですけどね。

アサノ:なんていうかほんと高円寺のそこら辺を昼間からプラプラしてそうなやつらね。でも「なにやってるかよくわかんないけどお前ら最高だぜ!」ってアンコールしてきたりダイブしてたり(笑)。

カイト:そんな感じで終わった後によくわからない手応えを感じている時に声をかけてくれたのがシュウゴさん。「soundcloud聴いて来てみたけど、めっちゃ良かったです!」って。その怪しい奴らの後方から観てくれてた。

アサノ:DEBAUCH MOODはSHIPYARDSもリリースしてたので知ってたから嬉しかったけど、「レーベルの人に引っかるようなアプローチしてないのになんでだろ?」ってとにかく疑問でしたね(笑)。

やっとこれまでのバンドヒストリーがひと段落したところで音のことに関しても聞いていきたいんだけど、ベースレスでギター2本っていうスタイルは周りのバンドではあまりいないじゃん。さっきも少しだけ話してくれたけど参考にしたバンドとかそういうのはあるの?オルタナ好きっていうのもあると思うし、レビューだとよくJAPANDROIDSが引き合いに出されるけど。

アサノ:条件としてベースを加えることも考えたんですけど、音どうこうより単純にこの3人でやるのが個人的にはしっくりきたのでそれが理由としては一番大きいですね。

カイト:ベースがいないバンドもキンブラ、ジョンスペ、ジャパンドロイズとか元々好きだったしね。このスタイルでこういう音楽をやってるのも珍しいし、いけるんじゃないかって思ったので。

邦楽洋楽問わず影響受けたバンドって他にもある?

アサノ:うーん別にそんなにないですかね。おれはそこまで歌詞とかも聴いてなかったりするし・・・。

カイト:音に関して言えばフジロックで来日したJAPANDROIDSを観に行った時に彼らがアンプに3個繋いでそれが全部違う音が出てるのがおもしろいなって体感したので、おれもベースアンプに繋いで音作りしたりそういう部分は少し意識してますけどそれくらいですかね。まだまだ音に関しては未完成だとも思っているので。

アサノ:自分たちでもパシっとした形はまだ見つけられずに気持ちでここまで来てしまった感はあります。

ほうほう、なるほどね。ちなみにさ、DEMOに収録されている曲のタイトルにもなってるJAGUAR(ギターのモデルのひとつ)に思い入れとかってあるの?おれあの曲好きなんだよね。「走り出せ~」って(笑)。

カイト:あれよく考えると嵐の「Happiness」と同じ歌詞なんですよね(笑)。

一同:(笑)

カイト:だから国民的なスターが歌ってることと同じなんで自信持って歌えるんですよね。で、ジャガーには正直特別な思い入れはそんなにないんですよ。ジョニーサンダースがすごい好きでレスポールスペシャル使ってたんですけど、ジャガーいいなってふと思い始めて買って嬉しかったんでその時に作ったんです。

アサノ:あれってVOTZCO始めてから買ったの?

カイト:そうそう。1回おれんちが雨漏りして水浸しになったことがあったんですよ。そうしたら大家が優しくて「なんか買ったものとかなんでもいいから領収書持ってきたら払ってあげるよ」って言われて・・・。

えー!太っ腹!レスポールは使えなくなっちゃったの?

カイト:いや全然今でも普通に使えますし、その他にもテレビとか棚とか買いました(笑)。ありがたいっす。ちょうどその頃タイ・セガール憧れでムスタングとかビザールギタにも燃えてたんですが、やっぱりヴィジュアルが好きでジャガー熱が上回りましたね。

アサノ:いい話だ。大家ってすごいよね。そういえば実はおれもこの前〇〇万もらいました。

世の中どうなってんだよ(笑)!

カイト:大家ってすごいっすね。

ここでイシカワ(GEZANイーグルくんには「まゆげ」と呼ばれているらしい)が合流。

アサノ:1番こじらせてる男が到着しましたね。

カイト:彼がメンバーの中でいちばんやばいっす。

もう結成からこれまでのことはほぼ話しちゃったから、どうしようね。ほとんど話したことないから音楽遍歴からサクっと聞いてみようか。

(やたら笑顔が増えテンションの上がる2人とは対照的にやたら落ち着いて淡々と語り始めるイシカワ)

イシカワ:あ~そこはこの2人と全く違うと思うんですけど、はじめはナンバーガールが好きでそこから彼らの影響元とされるポストパンクとか聴きだして・・・まぁ今でも大まかに言えばそれで終わっちゃうんですけど。

アサノ&カイト:確かにリョウくんと初めてした音楽の話はナンバーガールだった!

よく行ってたライブとかは?

イシカワ:これといってそんなに思いつかないんですよね~。

他の2人だと世代的に銀杏だったりメロコアだったりそういうのがあるけどそこにハマリはしなかった?

イシカワ:あ~自分は最初に行ったライブはシャカラビッツでしたね。

アサノ:めちゃ普通(笑)!

ドラムは元々やってたの?

イシカワ:大学の時にドラムがいないからっていう理由で片手間に始めましたね。

アサノ:そのPASTA FASTAのライブの後のタイミングで元々ベースをやってたリョウくんと2人でスタジオに入ってもリズムがないとキツイからドラムをやってもらうことになりましたね。言いようによってはその頃からドラムをやらせてるようなもんですね(笑)。でも前のバンドの頃はほとんどの曲をリョウくんが書いてたりもしました。

イシカワ:それまで高校の時とかあんまりライブに行った経験も多くなかったから大学に入ってからの環境が刺激的でしたね。僕らの新歓の時のライブが、ガガキライズが出てたスタジオライブだったんですけど、その目の前で起こっている光景すべてが初体験だったのでとにかく衝撃でしたね。

カイト:それまでのおれらにはスタジオライブっていう発想も存在しなかったからね。わかる。

イシカワ:え、高校の時ってみんなそんなにライブ行ってたの?

カイト:全然だよ。おれサマソニとかそんなもん。

アサノ:おれはイースタンユースとバックホーンと銀杏BOYZくらいしか行ったことないや。

みんなの世代だとあまり青春パンクとかは通ってないの?

イシカワ:いや、僕はかなり通ってますね。

一同:(笑)

じゃあなんで言わない(笑)!

イシカワ:てっきりライブだけの話だと・・・ハイスタ聴いて育ったし、モンパチも全然聴いてました。

カイト:マキシマムザホルモンとか。

アサノ:スタパンとガガガSPとメガマサヒデは山梨に来たから聴いてましたね。

イシカワ:それこそベースを手にしたきっかけはスペシャで見たHAWAIIAN6の映像でCDの音源とライブって全然違うんだなって気づいて興味を持ったからなんですよね。中1の頃。

一同:意外(笑)!

アサノ:リョウくんはこういう読めないとこがあるんですよね。おもしろいエピソードもたくさんあるし、深い。

(都合上コアな部分を全く掘りきれていないため本文中では一切わかりませんが、噂通りいろいろと深いところにも精通している男のようです。是非みなさんライブで話しかけましょう)

あとVOTZCOって周りからすごく若く思われてるけど実際そんなこともなくてちょうど狭間の世代じゃない?そこについてはなにか感じていることとか、おもしろくねーなーってことある?

カイト:あ~はいはい。

イシカワ:前のバンドをやってた頃から思ってたんですけど共演するバンドになかなか同い年っていないんですよね。下の世代の方が盛り上がってるってことも人に言われてやっと気づいたんですよね。意識したことなかった。

アサノ:おれもサマーマンのレコ発の時に石田さんに「サマーマンも年下やで、アサノくんも年取ったな」って言われて初めて自分の状況に気づかされましたね。だからどうこうってことは何もないんですけど。もともと大学内でもおれらよりも年下の世代の方が盛り上がってましたから。

カイト:自分たちがぐだぐだしている内に他のバンドはどんどん有名になったりあちこちで名前を聞くように(笑)。そこだけを考えると圧倒的負けですけどね。

イシカワ:うーん、古いのばっかり聴いてたから直近の音楽とかに意識は行かなかったからなぁ。

アサノ:なんかね、実感はあるようで関係はあまりないような。ほんとに同い年くらいでかっこいい!って思ったのもBOMBORIくらいじゃない?

もっと嫉妬とか不満とかあるのかと思ったら意外とそうでもないんだね。

カイト:今注目されている一部のインディーとかパンクの下の世代のバンドとは別で、おれらはおれらで自分らのペースでやっていければいいかなって思ってる感じです。

アサノ:そもそもその注目されるシーンとか音とか動きとかに関係ないところでしかおれらはやれてないんで、逆になにも思えないんですよね。

カイト:もはやまたかっこいいバンド出てきたけどまた年下かってくらいで、突き放してるわけじゃなくてそこはそこってだけですね。単純にその世代で好きなバンドに対してはファンですから。あとはパンクとインディーの境目みたいなものがあいまいになってきてるけど、自分の中では心地よく聴けちゃう音楽はかっこよくてもなんか違うなっていう感覚はありますね。リョウくんともよく話すんですけど。ライブで汗かいて必死にやっているようなアツいバンドが好きです。

(ここでアツくなり具体的な話になるが自主規制)

アサノ:・・・まぁまとめるといろんなとこでライブをやりたいって話ですね。

全然まとまってないけどね(笑)。

アサノ:結局これまで発表した音源だけだとわけのわからない異質な輪郭しかわかってもらえないと思ってるんで、とにかくライブを観てもらうしかないじゃないですか。

おれも音源で「おっ!」ってなった印象がライブを観てはじめてどんなものなのか掴めたからきっとそこは大事だね。それに自分の周りのバンドマンやお客さんの中では確実にVOTZCOの名前がよく話題に挙がるし、今後を期待されているバンドのひとつであることは間違いないと思うからね。今回環境もバッチリで音にもこだわってレコーディングして、これだっていうしっかりした音源が完成してみんなの手元に渡れば確実に自分の目で確かめに足を運ぶ人は増えると思うんだよね。

アサノ:そうですね、そうなってくれればありがたいです。おれらのライブ基本的にほんと人がいないんで。

そんな時にこれまで関わった人がちょっと得意げな顔して旨い酒飲めたりしたらみんな気分いいじゃん(笑)。

カイト:そうなりたいですね~!とにかくおれらのペースでかっこいいこと突き詰めてしっかり良いライブできるようにしたいです。それのみですね。

アサノ:おれはYOUR PEST BANDがそういう存在だな。

カイト:初めて知った(笑)。そう考えるとおれはやっぱりキンブラかな。

アサノ:それは目標がでかすぎるじゃん。

カイト:いや、そんなの関係ないっしょ!

アサノ:あとは長州ちからにライブに来て欲しいですね。けっこう誘ってるんだけど、そろそろ来てくんないかな~。

イシカワ:僕はスタンスとか含めていいなって思うGEZANが理想ですね。内輪って言うと言葉が悪いけど、仲間の輪が自分たちのやり方で広まったり共有できて楽しいことが増えたらいいなって思うので。彼らはそれをしっかり自分たちの手で実行してる。

カイト:それは目指したいところだね。だから誰かよくわからないベースをVOTZCOに入れる必要はないと思ってるし、単純に楽しさとか自分たちがやりたいことを追求して、これからもそれを共有できる場所でバンドをやっていきたいですね。


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