TOEFL iBT 新タスク: 採点基準の解説と回答サンプルの作成をします
Writing for an Academic Discussion とは
自習中のみなさん、おつかれさまです。
ご存じの通り、2023年7月から、TOEFL iBTライティングセクションのインディペンデントタスクが廃止され、代わりに"Writing for an Academic Discussion"が導入されました。
試験を作成しているETSが公開したサンプルが以下のURLで閲覧できます。
https://www.ets.org/pdfs/toefl/toefl-ibt-writing-practice-sets.pdf
タスクの構成
タスクの構成は以下の通りです:
I)講師が○○クラスの講義で、ある議題について背景を説明したうえで、2つのアプローチを紹介します。そして、学生にAかBかどちらの立場を取るのかをたずねます。
II)オンラインディスカッションに学生1が投稿した意見とその根拠が示されます。
III)学生2がオンラインディスカッションに投稿した内容が示されます。学生1の意見に対する反応、自身の意見、およびその根拠が含まれます。
受験者の作業
1.I)からIII)までの文章を読みます。合計で200単語ほどです。
2.オンラインディスカッションのつづきとして、自分の考えを述べ、その根拠を示します。
問題のPromptは以下の通りです:
In your response you should:
• express and support your opinion
• make a contribution to the discussion
An effective response will contain at least 100 words. You will have 10 minutes to write it.
書く量は、100単語以上。読む時間も含めて、10分間でタスクを完了する必要があります。
実際にといてみると、かなり忙しく感じる時間配分です。
採点基準
"TOEFL iBT Writing for an Academic Discussion Rubrics" というドキュメントが公開されています。テストの採点者が実際に用いる基準です。
https://www.ets.org/pdfs/toefl/toefl-ibt-writing-rubrics.pdf
このタスクのスコアが、0~5の6段階あることが分かります。
もう一つのタスク、Integrated Writing Task も6段階あり、2つのタスクのスコアの合計点をもとに、30点満点のスケールで点数が出る仕組みです。(素点がいくらだと30点中何点になるかの予測はまたの機会にまとめたいと思います)
以下、それぞれのレベルが、どの程度書けているのかを、例を示しながら解説していきます。
Rubricの内容に忠実に、またTOEFLインストラクター用の公式講習会終了者としての知識を活用して、進めていきます。
まず、0の場合は、
何も書かない(書けない、のかも)
トピックを完全否定(人間性が…)
無関係なこと(自由すぎて…)
英語じゃない言語で(ほぼ横暴!)
Promptをコピー(とりあえず、みたいな?)
例えば、]}fksols;rllbz&%! みたいな羅列(もう、やけくそ?)
以上の例が得点にならないのは簡単に想像できます。
つぎ、1の場合、
議論に参加しようとしているが、文章で表現できていない
アイデアとアイデアをつなぐ表現がない
サンプル問題を例にすると、
I think / I believe (意見を述べようとする表現)
education / environmental protection + more important (議題の理解を示す表現)
I agree / disagree with Andrew / Kelly (議題の理解を示す表現)
え、ゼロじゃないの?という感じですが。一応、議題とタスクの意図は理解できているとかろうじて判断できるから、という根拠に基づいています。
ただ、上記のフレーズが散見されるのみで、意見を文章で表現していると受け止められていない、という点が重要です。
また、意見を補う要素は完全に欠如しています。
文章がはちゃめちゃすぎる
構文と使用語句がマンネリすぎる
単語が羅列されているが、文法的に文章にはなっていないので、
”I bilebe education should match more important gobamment to do." (力作 ('◇')ゞ)は、これに当てはまるでしょう。文章として成りたちませんが、断片的には意見を述べようとしているのだな、議題はわかってそうだな、と判断できます。
I believe… や、A is more important than B のフレーズを使った不完全な文をなんとか複数回くりかえしたけれど、力尽きたというのも、書くのが苦手な人には起こりうることですよね。
ほぼ問題文からの写しで自分の言葉を使用できていない
昔の大学生のレポートみたいな(?)それらしいところを抜き書きしたものです。
例えば、Therefore, I think the government should spend more… や、For example, the government should decide… は、アイデアとアイデアをつなぐ表現ではあっても、自分の考えを自分の言葉を使った文章で述べたものではないので、評価されないでしょう。
ここまでのまとめ
レベル0と1をみてきましたが、それらがまったくの白紙状態や、まったく文章が成り立っていないレベルと分かると、少しホッとしますね。悪くても2はいけるかも、と思えるでしょう。2つのライティングタスクで2点ずつ取れば、合計4点。30点スケールでは14点と予想されるとのこと。悪くないですよね。慢心はよくありませんが、安心して準備と本番に取り組めそうな気がしますね。
では、続いて2の場合、
学生1と学生2の議論に参加できていると認められていることが大前提で、そのうえで、
英語の運用能力が十分でないため、意図が伝わらない
例や理屈に乏しく、つじつまが合っていないので、考えが十分に通じない
構文と語彙の種類が少ない
語彙や文法のミスが複数ある
レベル1との差は、文章を使っていると認識されているところでしょう。
少しだけ始まりの部分をつくってみました。
If I am a politisian, environment protecting must more importan from edjucasion. Though Kelly's idea sounding fine. We don't have much time. Our enviroment is yet breaking down. It'll take years for the educated people to behave good or for high sience and tecnology to invent new method to save the earth.
こんな感じでどうでしょう?スペルミスが複数、仮定の時制ミスや副詞節の分離、比較表現やyet=もう、の誤った使い方などの文法ミスも複数で、何となく文章で意見を述べたいんだなと分かるけど、というレベルに一致しているのではないでしょうか。語数に内容が比例していない、という悲しい現実があらわれています。
ちなみに、もとはこんな文でした。すみません、AIの手が入ったらちょっとカッコよくなってしまいました。IfやAlthoughを使った従属節(副詞節)をきちんと使っていたり、複数文節を使えているのに注目しておきましょう。上のレベルを狙うためには不可欠な文法要素です。
If I were a politician, environmental protection would be more important than education. Although Kelly's idea sounds realistic, we do not have much time. Our environment is on the brink of destruction. It will take years for the educated masses to behave properly or for specialists in science and technology to invent breakthrough methods to save the Earth.
レベル3の場合、
議論と関わりのある内容を文章で表現できているし、英文をうまく使えているが、理由や例示、理屈の部分が一部不十分。
構文、語彙の種類がレベル2よりは多い
語句や文法の用法、スペリングにいくつか明らかなミスがある
ということで、こんなのを試作してみました。文はほぼ単文ですね。スペルミス、語句の間違いなどもあります。2つめの理由以下が論理的ではありません(時間が無くなり焦った、という想定で)。単語数は107語で、量的には十分です。
If I am a policy maker, environmental protection is much more important than education. Kelly's idea sounds okay. However, we don't have much time. Our environment is collapsing. Education takes time. Science and technology development takes time, too. Educated people are not born quickly, so they can know pollution is bad for the environment. I think the government needs to discuss how to protect the environment. Cus the environment is the most importatn issue that we have. We can't live without nature and forest and everything else. But education is only for young people, however environment effect everyone. The govenment must imporove our environment rather from education.
少し単語の使い方を崩しすぎた感もあるのでレベル3と認めてもらえるかどうか、というあたりかもしれませんが、一応段落で表現できていますし、少なくとも1つめの理由は単文ばかりですが理屈を通そうとしていることが受け取れます。2つめの理由への転換表現がなかったり、理由を補う詳細が論理的ではありません。
レベル2や3の回答には、論理的でない、という欠点も多くみられます。2つ述べる理由の両方ともが非論理的だと、せっかく文章でこたえられていても得点には結びつきません。
例えば、
Protecting the environment is more important than improving education because education is only for young people.
という文章はどうでしょう。
「教育を受けるのは人口全体の一部の人たちだけだけど、環境は人類全体にかかわるから」という追加の説明がなければ、「ああなるほど」と思えません。つまり、論理づけが不足しています。
ほかには、
Education is much more important to lawmakers than nature conservation. No other issue is more important than protecting nature.
という文章では、主張と理由が同じことの繰り返しになっています。これでは説明したことにはならないので、注意したいポイントですね。
論理的思考については、別の機会にまとめたいと思いますが、
私には、福澤一吉さんや戸田山和久さんの論理的思考についての著作が大いに役立っています。
不肖、私、非カリスマ英語講師がお手伝いしたいのはこの3のレベルをとれるかとれないかというあたりにいる自習組のみなさんです。たまたまこのレベルをとれるのではなく、確実にとれるように、というのを目標としています。そうすれば、一つ上の4を目指せます。
レベル3の作例を清書して解説
If I were a politician, I would consider environmental protection to be much more urgent than education. While Kelly's idea of educating people and improving technology may sound realistic, I don't think we have much time. Our environment is already badly damaged and causing problems for people. It takes years to educate people and develop science and technology. So we have to act now to preserve our environment. In addition, protecting the environment affects everyone, not just small groups of people. For example, how much greenhouse gas we produce affects people in other countries. Environmental issues are more important because they affect more people around the world.
107 words
複数の単語を難易度が高いものに置き換えてみました。どこが変わったか探してみてください。副詞節(If、While、becauseを使った従属節)や名詞節(how much…の文節)、形容詞節(関係詞節、greenhouse gas that we produce)を使い、複雑な文にしてみました。このくらいで、4は取れると思います。
今後も解答例をどんどん掲示していくつもりです。
それでは、自習をやっているみなさん、引き続きがんばりましょう!