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BL・GL短歌まとめ

声も眼も刷り込んでくれ塩も名も、きみを見たさに割れた卵だ


残像があるのみとなったきみが乗るパンダ100円食べてくれない

あったよね籠のようなるブランコは成体で逢ったくせに乗ろうよ

シーソーが刺さったごとしチューをしたあれでサヨナラ あれはサヨナラ

桃色が剥げた遊具で待ちぼうけ 水色の剥げた遊具と僕で

ひとがたの穴が空いてる壁みたい きみがそこから落ちたからいない

粘土だよ 知らなんだことばかりだった 胸を塞いでくれよ 割れたよ


襟足を刈ってしまった細い頸 握れ氾濫する胸の裡

詰襟のいろの夜汽車に乗ってくれ笑いかけるというのであれば

愛だのと呼べども濾しきれてなんぞいないよ襟に光るⅢの字


おまえにはかなわないとはこの生を二百繰り返したとて言わん

金色のボタンがひかり、しなそばを食べて帰らんと追い抜いて告ぐ

祭日に笛ふきたてて湯が沸いて夜更けのなかを言祝いでいる

にんやりと杯を押し売る初犯へと干したことなぞあるとゆわずに

朝ぼらけ急かしく青を広げたる自転車をつと耳朶に拾いつ

交わし合う言わず語らず仄めかす、けたたましいだけだった男と

二年まえ遭わんでも同じおれだった三分まえのかっぷぬうどる

名で呼ぶかまぶた飛び込む背なのこと 後ろ頭に組んだてのひら


そわそわをし飽きて七年にもなるか 白々冴える朝が似合うね

冬の雨はらはらおちる涙にもはらはらする心臓にも振れて

憧憬を壊すにゃじわり美しく咲くには弱く光りつづける


したことのないをしながら明ける帰路、空は東も赤くなるんだ

夜はもう終わりましたの顔でぼく押しやる人への朝焼けの影

やんわりと窓がまぶしい青になる 貴殿安心せよとばかりに


停泊をきみの汀でする夢をみるのは何の瀬戸際だろう

夕明かり 船をつけたら呼ぶからさ 酒も恋をも解き放てよな


溢れでるトロイメライを僕たちは互い違いの愛で凌ごう

滲みでるニライカナイは俺たちの洗いざらいの恋で濯ごう


予てより鼓膜にきみの声が居て雷にさえ気づかないです

指先に僅かに透ける網の目が触れた鼓動で脅す者より

もうずっと音声さんがふわふわを君にだけ向けているテレビだ


雪にはさわんないこと火傷するよおれのつめたい指で勘弁

つるつるの氷がいます丁重にお手をください。ペンギンの恋

霜を踏みそこねたなんて尖るくち、乗りな冬へと遡る旅


ああ胸に電流、致死熱の電流、顔を見るたび光るのを止せ

こどもがえりの宙がえり地のふちに朝の日差しが出はじめた、撃て

復活を遂げる気でしかありませんステンドグラスは割ってゆこうぞ


アイシテハイナイアンシンスルトイイ ダキシメラレテネムリタイダケ

乳くさい盆の窪、上ル、にこげにはしゃぶりついてはいけない決まり


繰る口に果実をくれて笑うのでああ産声をあげてしまった

おしまいの夜だった声は発された 風見鶏がうろたえるほど風

こくはくでおれの地面は割れたのだ 月、群雲、脈、ジオラマ


いちせいぶつとして君は尚早にいっしょうもののの恋だとか言う

もらったらちょっと困ると思うけどせかいのすべてをくれてやりたい

もらってもどっか失くすと思うけどせかいのすべてをくれてやりたい?

水星に飛べる心地で拝受する君の2月のほんの冗談


おまえには手加減してたスリーパーホールドのふりで雨音を聞き

起き抜けのピーナツバター幸福に包まれておけと言わんぐらいに


dearきみ、おれの名前は点が要ることも覚えてくれないきみへ

p.s.のあとに書くべきことがあり、べからずである。それでは。敬具

Kの字を指が拾ってビスケットSUKIが書き残せません、おわり


3℃しかない6時きみと起きてくるすぐにスープを溶かしてあげる

クルトンはしずめて匙を回す闇 明けたら手を取り潜ろ寝台

やわやわとゆだねてお湯で溶けあぐむぼくの心をまでも許して


呪文だよ忘れないでね唱えればわたし獰猛になってしまうよ

しとやかなあの子が体を洗わせるシロクマ形のスポンジに垢


冷蔵で保管しましょうこれはいま愛にはしてはいけないトマト

あの鍋のレトルトパウチみたいにさ レディ、オーケー、きみをぬくめる


食卓のすべてが卵色をして甘く膨れていますので来て

ぬばたまは常磐が似合い桜など桜鼠です見つめられたら

天色の空を背にして神様は女子高生のかたちで笑う


浮き足がほんとに宙を踏めそうな朝ってあって明日もそうです

水色のミルキーペンに乗んなくて赤ペンでばつ、とんで、はなまる

洋服も揃えちゃったし人間て二日くらいは眠れないもの?


わたくしのわたくしだけを見ていてね波紋ひとつも立てない脚だ

蓮が咲く惑星ほかになかったね像もきれいに映っているよ

偏光の四月にあってかわせみのくちばしに惚れてしまった魚