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29年生日記

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日記です。
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#眠れない夜に

4/4「答えを求む君と、答えはいらない僕」

「なんでさ、啓発本を読むの?」 「うーん。答えが載っているからかな。安心したいんだよ」 「じゃあ、逆になんで小説が好きなの?」 「そうだね。てなると、答えがないからかも。自由でいいじゃん」  地元を好きになることは、多分もう一生ないんだろうなと思う。なぜなら、敵だと思っている存在ばかりが蔓延っているからだ。  そんな僕にも、会いたい人は何人かいて、ありがたいことに会ってくれたりする。上記の会話をしたのも、そのうちのひとりだ。  避暑地、と呼べば聞こえはいいが霧が多

2/6「CATCHER in the 巣鴨。」

〈たぶんガールズバーの女の子が雪遊びしてるから後ろみて。〉  僕が座る席の真後ろにある部屋の広さは力士で換算すると4人か、いや、人間の尊厳とか道徳とか無視してぎゅうぎゅうに詰めれば5人くらいの広さで、そんな喫煙室で一服をしているともだちからラインが飛んできた。振り返るとピースを指で挟んでいるともだちがガラス越しに外を指している。レースカーテンを開け、外を見回す。細い路地は日中降り続けていた雪と雨が染み込んで黒く、歩道の白線が際立つ。露光量を増やし、コントラスト値を上げて、レタ