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142. 檸檬の樹

アップダウンが激しい立地の自宅を
手放して叔母と二人で同区内に引越すも、
念願の引越しから1年もせず叔母が
旅立ってしまったので、目下、母は
人生初の一人暮らし中。
氣丈な人とはいえ、今回のような事が
あると寄る年波には逆えず、すぐに弱氣
になる事が増えつつあるから、そばに
居なくちゃ!と急いで駆けつけ、翌日は
妹が様子を見に行ってくれたので、日曜日
から母宅に乗り込んで行う解毒のための
アレやコレの準備が出來た。

毒チソの話に笑っていた彼女もヤヴァさに
氣付き始めてくれたからか、匂いが好き
じゃないなぁ、そんなに飲めないよ‥と
言いつつも付き合ってくれた甲斐あって、
先週のタヒ顔ような表情からは脱し、氣乗り
は今ひとつながら前職のお友だちとランチ
に出かけられるまでに復活で一安心。


子どもの頃は、スポーツセンターと団地と
倉庫ぐらいしかなかった一帯も、今は大學
やら病院やらが移転して來てオフィス、
ホテル、マンション乱立して深夜でも人が
歩いているという光景が日常となっている


母たちの引っ越して落ち着いた頃、たまたま
車で通りがかった際にアンテナが反応した
お店を調べたところ、シュークリーム専門店で
ある事が判明。
スイーツ店の氣配をあえて消しているかの
ような佇まいは「知る人ぞ知るで良い」と
言っているかのようにも感じられた。

某食べログで投稿画像を観ていると、
ショーケース中央の貼り紙に
グルメサイトへの書込みお断りです。
「ご馳走様」の心を持たぬ名無しの権兵衛
に人を語る資格なし
よい子はまねしないようにしましょう!

と書かれており、一癖、何なら二癖すら
隠さない感じが、色んな意味で期待させた。

訪れてみると、店主は独特の空氣感を漂わせ
た甲冑遠まとっていて好意的な対応とは言い
難いものにもかかわらず、あえて言い切っ
ちゃうけど、人嫌いだったり生き難さを感じ
つつ、少しでも心地良さを感じられる環境を
整えてきたのを彼から感じて親近感すら覚えた。

肝心のシュークリームは、軽めのハード
シュー皮ながら原材料プラスαで作り込ま
れたクリームの食べ応えは、しっかりあって
満足度の高い仕上がりになっている。
中でも、クリーミーさと酸味が見事に融合
されている、いちごのカスタードは、個人的に
オリジナルカスタードを超えていると感じる
ほどドストライクだった。

店主、嫌いじゃないなぁ。
そして、いちごのカスタードが旨いなあ。

再訪時、相変わらずのオーラな甲冑を身に
まとった店主が黙してこちらのオーダーを
待つ中でショーケース手前の焼き菓子に目が
行くと、黄色いラベルのお菓子と目が合って
「買うてってやあ。」
と主張された。

芝浦シフォン‥

お菓子のホームラン王をコロンとさせた
フォルムの芝浦シフォンの黄色いラベル
は、芝浦夏みかんのようだけど、芝浦で
夏みかんが特産とは初耳なのが樂しく
なっちゃったからシュークリームと芝浦
シフォンの夏みかんとラムレーズンを
ゲット。
本人が買ってけと言っただけのことは
あって爽やかで美味しい。
こうなると俄然、芝浦夏みかんなる存在
が氣になるってんで調べたら、芝浦の
運河沿いに自生してる夏みかんで、それを
NPO法人みなと障がい者福祉事業団で
マーマレードに加工したものを使って
いる事がわかった。
ここに、店主のアイノカタチを垣間観た
氣がして親近感アーップ!
とはいえ、たまにしか行かないから距離
が縮まる事は無いが、彼には元氣でいて
もらっていちごカスタードを作り続けて欲しい。


今回の母宅滞在中に芝浦シフォンをしこたま
買いこむつもりで訪れたると、入り口ドアの
貼り紙には〝三密避けるためにナンタラカンタラ‥〟はい!想定内♪とドアを開けて一歩
入った所で、普通に発声したつもりなのに
友達かよwwwぐらいの元氣なトーンで

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と何か間違えで飛び出しちゃって焦ったと
同時に、こちらのトーンにつられちゃったと
思しき店主から

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と、これまたご近所さんかよwwwなトーンで
返ってきて危うく吹き出しそうになるのを堪えた。

やっば‥ 樂し過ぎるww

休業日前日のためか、焼き菓子がすこぶる無い‥
「ぁ‥ 今日はシフォン無いんですね。」
「はぃ‥。」
つられて焦って氣を取り直した店主の余計な
情報は一切乗せないレスポンスが返ってくると、わたしのコアは、既に彼を友達と認識している
ようで、安定の重たい口に懐かしさすら感じて
笑いがこぼれそうになるのを抑えつつ、販売終了
間近の『山ぶどう』と『いちごカスタード』を
選んでその他の焼き菓子を選んだ。

これまで見向きもしなかったクッキーに目が
行くと『わたしのおすすめ』と呟きのような
小さなラベルが付いていたので買ってみようと
手に取るとワク♪と來たので多分当たりだ。

彼がこちらを覚えているはずもないから
いつ行っても一見さんだけど、今回の彼の
対応に、これまでの甲冑感が影を潜めた
代わりに彼から感じていたアイノカタチ
そのままの柔らかい甘さを感じた。

わたしも物心ついた時には甲冑着込んで
たから世界に対してオープンで魂を謳歌
してる人々に憧れつつ、あの感じがピンと
來なかったけど、今回の樂しさが世界を
謳歌してる人々の笑顔に通じるように
感じたから、ひょっとしたら彼らが観て
いる世界のカケラくらいを垣間観せて
貰えたのかな?なんて思った。

いちごカスタードてっぱん❗️と信じて
疑わなかったけど、山ぶどうは、いちごに
充分張り合えるだけのお味だった。
巨峰に似た香りがほんのり程度です想像
ほどぶどう感が無いのね?と思った所で
バラのようなフローラルな香りが追いつく
と一氣に口の中がゴージャス感が広がって
立体的な味になりなる不思議美味しい
フレーバーだった。
もう、いちごカスタードと山ぶどうは
外せないから買う個数が必然的に増える
って、これは店主の作戦なのかしらww

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食欲が殆どなかった母が半分なら食べ
られるかもと、彼女が選んだ山ぶどうを
半分にして食べつつ、ついさっきの
笑いを堪えたエピソードを話すと大笑い
しながら
「Nさんは、あの店無愛想だから嫌いって…
アラ美味しい❣️香りが良いわねえ。」
と持て余す事もなく完食。


つくづく思う。
特別、何かがしたい訳じゃないし、何者かに
なりたい訳でもなく、成長なる幻に興味もない
けど、こうした樂し旨しな時間を分かち合える事はいつだってしたいんだよねぃ‥と。


わたしの場合、やりたい事より<やりたく
ない事をしない>をやりたいのかもしれない。
かつて、コントなバトルを繰り広げた義母
と書いて友人と読むアヤコさんが、まさに
やりたくないをやらない貫いた人だった事を
思い出し、やはり彼女も自分だったという
オチがやって來て、俳句なら夏井先生褒めて
くれるんじゃない?ってくらいシュークリーム
からよくここまで発想飛ばしたなあw
とヒトリゴチ。

ワク♪っと來たコーンロッシェは、クッキー
生地にコーンフレークがトッピングされて
いる香ばしくて食感の樂しいクッキーだった。


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