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銀河フェニックス物語Ⅰ【少年編】

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レイターとアーサーが十二歳から十五歳まで乗っていた、戦艦アレキサンドリア号での物語。
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2023年10月の記事一覧

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(5)量産型ひまわりの七日間

**  モリノ副長が夕飯の弁当を持ってこいって言う。珍しいな。俺は容器によそって副長の個室へ向かった。 「レイターだよ。弁当持ってきたぜ」 「ありがとう。そこに置いてくれ」  俺は指示されたテーブルの上に弁当を置いた。モリノ副長の部屋はショールームのようにきっちりしている。 「肉野菜炒めはあったかいうちがうまいぜ」  と言う俺のアドバイスを副長は無視して俺を正面から見つめた。どうやら、用があるのは弁当じゃなくて俺らしい。嫌な予感がする。 「確認したいことがある。お前、フ

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(4) 量産型ひまわりの七日間

**  この部屋には窓がない。捕虜なのだから贅沢は言えないが、星が見えないとどこを飛行中なのかまるでわからない。 「グリロット中尉、お食事はお口にあいましたか?」  目の前の大人びた少年を見つめると、不憫に思った。敵であるソラ系銀河連邦は世襲制を取っている。将軍家の彼はその制度の被害者と言える。  娘と同じ年だというのに戦地へ来させられている。もっとも、話した感じは十二歳には見えなかった。帝王学というものを学んでいるのか、大人の自分をも圧倒させるオーラがある。天才という噂

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(3) 量産型ひまわりの七日間

「観艦式を邪魔する意図はありませんでしたので」  淡々と答えるグリロット中尉に動揺した様子は見られない。僕の指摘にも答えは用意していたのだろう。彼は元々アリオロン軍の研究所に所属していた研究員だ。知的な人物とお見受けする。 「観艦式の映像はタロガロ基地でも確認できたはずです。それでは情報不足でしたか?」 「黙秘します」 「わざわざ領空侵犯した理由を教えて下さい。偵察の目的は何ですか?」 「黙秘します」 「あなたは連邦サイドの到着時間を計測していたのではないですか?」 「黙秘

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(2) 量産型ひまわりの七日間

** 「なあ、アーサー、ひまわりっていつ動かすんだ?」  レイターがすり寄るようにして僕に聞いてきた。 「動かす?」 「捕まえたヤツ、生体認証でロックがかかってるんだろ? 敵のパイロットを近くまで連れてくりゃ動くじゃん。ひまわりが咲くところが見てぇんだよ」  有名なバリア機能の実物を見たい気持ちはわからなくはないが、 「そんな簡単な話ではない」  鮫ノ口暗黒星雲を抜けて領空侵犯した敵機を捕獲した。そのひまわりと呼ばれるV五型機からアリオロン軍のグリロット中尉の身体を連れ