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デポジション(証言録取)

◆弁護士 飛田 博

2022年9月21日 日経新聞夕刊3頁

「ツイッター弁護団マスク氏を尋問へ 審理前の証拠開示で」という見出しの記事

「〔シリコンバレー=白石武志〕総額440億ドル(約6兆3000億円)の買収撤回をめぐる裁判で、米ツイッターの弁護団が26日から2~3日間にわたって米企業家イーロン・マスク氏を口頭尋問することが明らかになった。」
「口頭尋問は裁判の審理前に法廷外で進める証拠開示手続きの一つで、『デポジション(証言録取)』と呼ばれる。原告と被告の双方の弁護士が電子メールなどの証拠に基づき、相手方の証言を記録する。ウソの証言をすれば偽証罪に問われる恐れもある」

(飛田コメント)
 本家本元のアメリカ版SUITSを見ていると、弁護士が相手方の当事者や相手方弁護士を法律事務所に呼んで、カメラの前で尋問するシーンがよく出てくるのですが、デポジションというのはそれのことですね。
 日本の民事訴訟には、このようなデポジションの制度はありませんし、もっというと相手方に証拠開示を求めるディスカバリーの制度もありません。だから案件によっては証拠が集まらず、結局泣き寝入りをせざるを得ない、ということが現実にあります。日本でもディスカバリーを導入しようという意見はあるのですが、どうも日本の場合はすぐ濫用の危険があるのでは?という意見に押しつぶされてしまうんですよね。国民性でしょうか。しかし、証拠が当事者の一方に集中していて、他方がアクセスできないような案件の場合、このような制度がないと本当に不公平で、真実に基づかない結論が出ることになります。
 私は日本の民事訴訟制度にも、ディスカバリーやデポジションといった証拠収集のための制度を導入すべきだと思っています。

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