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霊感商法対策

◆弁護士 飛田 博

日経新聞2022年9月8日朝刊社会面の「霊感商法対策 検証できず」「消費者庁、救済策検討に壁」「有識者検討会 法改正も議論へ」との記事

 記事の内容は、消費者庁の有識者検討会で、2018年の消費者契約法の改正により可能になった霊感商法による契約取り消しについて、消費者庁が、「消費者契約法で実際に取り消すことができた件数の把握は困難で、取消権が行使された裁判例も確認できない」と回答したことについて、委員から批判が相次いだ、というものです。ある委員は、「改正時に様々な要件を付けて使い勝手が悪くなっているのではないか。」と言い、河野消費者相は、「現在は霊感商法から『寄付商法』に移行している。」との認識を示したといいます。

 ところで、2018年に霊感商法対策として、消費者契約法に盛り込まれた規定とは以下のものと思います。

第4条第3項
 消費者は、事業者が消費者の契約について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意見表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一~五〔省略〕
六 当該消費者に対し、霊感その他合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨の示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。


 確かに「そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示して」という部分は、例えば、「この石を買えば幸福になれます」とだけ告げて、不利益を告げていない場合には使えそうもないし、「確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げる」という部分は、「確実」に回避できると告げなければダメなのかという気がしますね。
 ただし、この条文にぴったりと当てはまる案件については、ほぼ被害者側の証言が証拠として重視されそうですので、使い勝手が悪いとまでは言えない印象です。
 その意味で、何故この取消権が行使された裁判例が確認できないのかちょっと不思議です。
 この記事によると、「全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数は19~21年度の3年間で計3924件に上った。法改正後も被害が止まない」ということなのですが、この相談がどのような内容のものなのかちょっと興味がありますね。

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