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総会決議取り消し

◆弁護士 飛田 博

2022年9月21日 日経新聞朝刊18頁

「総会決議取り消し 提訴へ」という見出しの記事

「8月の臨時株主総会で取締役がほぼ刷新されたオウケイウェイヴを巡り、解任された前経営陣が総会決議の取り消しを求めて東京地裁に提訴することが20日分かった。
当時、前経営陣に関する虚偽の内容に基づいて株主の委任状が勧誘され、不当な議決権行使が行われたと主張する見込み。」

現経営陣側は「一部の前経営陣への資金流入を指摘し、ネットや郵送を通じて『会社資金を実質的に横領したとも捉えられかねない事態』などと発言した。前経営陣側は横領疑惑を否定している。」

(飛田コメント)
 日本でも、最近はプロキシーファイト(委任状争奪戦)が行われるようになったので、それに伴う新しい問題で、とても興味深いですね。
 株式会社では、株主総会決議の効力がコロコロ変わるようだと法的安全性が害されますので、決議の内容が法令に違反する場合だけ、決議無効確認の訴えを認め(会社法830条1項)、あとは、裁判所が決議取り消しの判決を出したときのみ、決議が取り消される(逆に言えばそれまでは有効)という建前がとられています(同法831条1項)。そして、さらに、決議取り消しの理由とすることができる事由を次の3つに制限しているのです。

   (1)株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に
       違反し、又は著しく不公正なとき。
   (2)株主総会の決議の内容が定款に違反するとき。
   (3)株主総会の決議について判別の利害関係を有する者が議決権を
                    行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。

 本件では、上記(1)を理由とした主張になると思いますが、そもそも本件のような場合に上記(1)に該当するのかという問題とともに、各論として、「横領した」とは言っておらず、「横領したとも捉えられかねない事態」と言っただけだとの表現の自由もからめた反論もありそうで、結論に到達するまでには、一山も二山もありそうです。
 どう展開していくのか注目ですね。

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