デザインアシスタントの仕事

S.KONDO

旭川の家具メーカーの匠工芸でのインハウスデザイナー、喜多俊之氏のデザイン事務所、IDKデザイン研究所と喜多俊之設計工作室での裏方で費やした10年間で、家具設計とデザインのスキルやノウハウという大きな経験値とバックグラウンドを得ることができた。

2013年に、中国の順徳から北海道の旭川に戻り、意気揚々と自身のデザインスタジオを立ち上げたのは良いが、会社という看板がはずれ、デザインの仕事になかなかありつけない日々が続いた。下積みとしての10年間で貯めてきた「自分はある程度はできるはず。」という自信は直ぐに崩れ落ち、なかなか、クライアントからデザインの依頼には繋がない日々が続き、ライスワーク的な仕事をせざるを得ない沼にはまり込んでしまった。

そんな中、家具メーカー在籍中に知り合って、信頼関係を築いてきたクライアントやデザインパートナーの存在が、私のデザインの仕事のスタートを後押ししてくれた。

彼らから、一緒にやろうよ。と声をかけて頂き、アッシュコンセプトの名児耶秀美さんと一緒に折り畳みの椅子のアイデアを具現化して、h×TAKUMIから商品化したり、センプレデザインの田村昌紀さんのクライアントの為の特注家具やOEMの家具設計を手伝ったり、デザインアシスタントや、家具メーカーとの橋渡しがメインの仕事を手伝わせて頂いた。また、古巣である匠工芸の開発業務のサポートも、桑原義彦さんの厚好で依頼頂き、駆け出しの数年間は、請負いの仕事だが、デザインの現場に近い立ち位置で奮闘する日々は続いた。

そんな中、デザイナーの小林幹也さんから「とあるメーカーから、デザインの依頼があり、椅子を提案しているのだが、製品化するには技術的に難易度が高いので、設計図を描くのを手伝って欲しい。」という連絡がきた。

小林さんとは、匠工芸在籍中に、私自身が同世代のデザイナーと一緒に家具のデザインをしたいと考え、当時、新進気鋭だった小林さんに飛び込みで連絡して家具のデザインを依頼、LANDとSUNというシリーズを一緒に開発し、その後、匠工芸の代表作である、yamanamiシリーズなども一緒に開発してきた、10数年来の信頼関係を構築している間柄であった。

小林さんからお誘い頂き、一緒にとあるメーカーに赴くことになった。

その後、技術的なところでサポートメンバーとして関わることになり、2017年にマスターウォールから発表された、小林幹也デザインのYUシリーズの椅子は、2018年に発売されたUC3以降、継続的にマスターウォールのデザインチームの開発サポートメンバーとしてかかわっている。

それぞれの師匠の下で、アシスタントとして覚えたスキルやノウハウは、独立した現在、アシスタントデザインとして、傭兵的なプロとしての立ち位置で今でも非常に役立っている。

デザイナーとメーカーとの間に入って調整する流れと関わりとしては、以下のような感じだ。

①デザイナーが描いたデザイン図(3DCAD及び2DCAD)を解析。

②素材の特性を考えて、材料の適性な厚みや接合部の構造などを考えてアレンジする。

③プロトタイプをつくり、デザイナーと話し合いながらブラシュアップする。(試作1st-デザインの再現性とディテールの確認)

④より完成系に近づけたプロトタイプを再びつくり、更に検証してブラシュアップする。(試作2nd-構造と機能、張り地などの素材を選定して、材料コストを算出して確認)

⑤3DCADでCNC加工用の3Dモデルを設計。本製作と同じ工場ラインでの量産試作を製作(試作3rd-生産にかかる人工や素材、金具など安定供給可能なルートも検証)

⑥JlSで定められた強度試験を行い、耐久性を検証。

⑦その後、新作発表ののち、ショップに並ぶところまで、デザイナーのアシストをする。

表舞台に立つことは出来ない舞台裏でのエンジニア的な仕事にはなるが、インハウスデザイナーとして蓄積してきたスキルとノウハウは、デザイナーからも、メーカーからも重宝される事がわかった。

その後、マスターウォールブランドを展開する、AKASE株式会社とは継続的に仕事をさせて頂いている。小林さんのデザインだけではなく、マスターウォールのデザインチームへの椅子の開発に関してのアドバイザーも含めて、デザインのアシストとサポートを行いながら、メーカーや担当者との信頼関係を構築していくことができた。

そんな中、マスターウォールから、2019年にアシスタントやサポートでは無い、家具デザインの依頼を頂く事に繋がることになり、2020年に商品を発表できたことで、自称家具デザイナーから、ようやく目に見える家具をデザインすることができ、家具デザイナーと名乗っても恥ずかしくない実績を手に入れることができた。

アシスタントやサポートのデザインは、経験であって、自身の実績ではなかったという事実。そこの壁を、今まで出会ってきた人たちが支えてくてれ、乗り越えることができたのは、家具デザイナーを自称する私にとっては大きなターニングポイントになったと感じている。


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