(一次小説 ・ ダークファンタジー )奈落の王 その二十二 遠見の水晶球
黒ドレスのアリアが所在もなしに、砦内をうろついていた──いや、ただ単に、迷っただけなのだが。
「ここどこだろー」
アリアの声が反響する。
もう、ずいぶんと歩いた気もする。
石壁には松明が掲げられている。
お陰でアリアはランプや手持ち松明のお世話にならずに済んでいる。
この砦にスペルキャスター、魔法使いはいないらしい。
初級魔法に『明かり』はあるが、それすら使っていないところを見ると、想像以上に魔法使いと言うものは珍しいのだとアリアには思えた。
アリア?
もち