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パンを焼いて徳を積もう!

パンを自分で捏ねることの功徳は計り知れない。

そう、功徳である。
パンを焼くと徳が積めると主張したい。
別に美味しいからとかそんな話ではないし、何なら手作りパンは最初は安くも美味しくもない。むしろ今でも山崎パン一斤88円がいかに企業努力に満ちているのか、自分で捏ねる度想いを馳せているくらいだ。ほんとよくこんなに安くしたモンだよ、だってコスパで言うならもう自分で捏ねる意味ないもん。

だからこそ功徳なのだ。
では功徳とは何なのか。

それは、「休日なにやってるの?」と話題になった時に「手作りのパン捏ねてます」と(ちょっとドヤ顔で)言えることである。

例えば、ちょっと想像して頂きたい。『休日に何をやってるかよく分からない人』と『休日にパンを自分で捏ねている人』、どちらが丁寧な暮らしを送ってそうだろうか。当然『休日にパンを捏ねている人』である。
「いやー休みの日は夕方まで寝ちゃっててさー」と頭を掻く人と「休みの日はパン捏ねてるんですよ。あぁホームベーカリーも良いですけど、手で全部やってますよ」と爽やかに笑う人、どちらがゴムの伸びてない清潔なパンツを毎日履いてそうだろうか。
当然、『休日にパンを手で捏ねている人』である。

お分かりだろうか。
『休日にパンを捏ねる』とは、休日にパンを捏ねているということではない(ここ小泉構文の高度な活用)
『休日にパンを捏ねるような暮らしをしている人』というステータスを獲得することなのである。

その実態が、実は家電にハマっただけの休日持て余しおじさんだと人は考えない。だって買えばいいものをわざわざ手で作ってる人なんだから。
当然自炊だってしてるだろうし、部屋の整理整頓だってしてるに違いない。きっと仕事だってちゃんとやってくれるだろう。実態は関係ない。そういう人だと思ってもらえるし、明らかに人からの印象が良いのである。特に主婦ウケが良い。
婚活男子にもぜひお勧めしたいテクニックである。なお変なこだわりがあってめんどくさそうと思われても責任は取らない

またパンというのが丁度良いのだと思う。
誰にとっても身近だし、作れば大変ということは誰でもなんとなく想像がつく。それをやっているのである。わざわざ。人からの評価が下がることがあるだろうか、いやない(反語)
ちなみに同じ理由でコーラを自作した話も大変にウケが良かった。簡単なのでこれもお勧めしておきたい。

本当に騙すべき相手

さて。
ここまで読んで「他人の目ばっかり気にしてる奴が功徳を語る資格があるのか」とお思いの方も多いだろう。わかる。私だってそんな浅はかな解釈で徳を語らない。ここまででも相当なアドバンテージだと思ったことだろうが、これから語る内容に比べたら瑣末なことである。

では、真の功徳とは何か。
それは自分でパンを捏ねる事によって、「なんか良い休日を過ごした気分」に浸れることなのだ。

ちょっと想像して頂きたい。
オーブンを開けた時にふわっと香るバターの香り。
型に張り付かず綺麗にパンが外せた時の満足感。
焼きたての端を切ってちょっとつまみ食いする嬉しさ。
熱々のそれをはふはふして、手作りのコーラで流すその充足感たるや。

ほら、なんか良い事してる様に見えるでしょ。こんなことを成し遂げた日は、それはそれは良い日に違いない。
そうやって良い休日を過ごしたという事実は、何事にも変え難い価値があるのだ。だって本当に騙さなければいけないのは、他の誰でもない自分なのだから。
つまりである。
実際問題、周りが子育てだ家買うだ言ってる中で一日夕方まで寝てる毎日というのは相当にキツい。なんかやるべき事をやってない気がしてくる。他人の子供は異常に成長が早いので、「もう何歳になったよ」と聞くたびに驚き、なんとなく焦るのだ。だけど自分はこのまま歳を取っていくのだろうというどこか確信めいた気持ちはどう考えてたって健康によろしくない。だけど、だけど、だけど。うだうだ考えてるうちに本当に歳を食っていくのである。なんと悲しいことか。
必要なのである。
なんか良い事した気分に浸れることが。

なお、ここまで読んで「なんか訳わからない事言ってんな」と思った人。あなたは幸せな人である。あなたに手作りパンは必要ない。

逆にちょっと胸が痛くなった人。
わかる。
大いにわかる。
だけど明日からは安心して過ごして欲しい。
どうすれば良いか、もうお分かりだろう。

そう、パンを焼けば良いのである。

別にパンを焼いてみたからと言って何かが変わるわけではない。それでもなんとなく良い事した気分になれるし、毎朝手作りのパンを食べてるのと、ちょっと気分も上に向く。
人に「こんな事やってます」って言えるし、「パン作ってます」って言う人でマイナスの評価を下す人はまぁまずいない。
そんなささやかな満足感をちょっとずつ積み重ねていくことは、確実に毎日をちょっとずつ良いものにしてくれる気がするのだ。
自分の機嫌は自分で取っていこう。

そのためにも、やっぱりパンを焼いてみることの功徳は計り知れないと思う訳である。

他にもこんな良い事が(瑣末なことだけど)

いやつい熱く語ってしまった。
ここまででもパンを焼く功徳の計り知れなさが伝わってしまったと思うが、現実的な利益もまぁまぁある。

まず、休日をちゃんと使えるようになること。
パン作りは半日仕事だけれど、発酵などの時間があって途中一時間程度の空きが生まれる。さりとてここで寝てしまえば、あっという間にパンはボウルからこぼれ落ちるくらい膨張して部屋とパンはそこはかとない日本酒臭さに包まれる(n敗)
なのでそういう失敗をすると、「発酵してる間に買い物やってこれやって」という段取りをつける様になる。
何もなければ、パンを捏ねながらタブレットで映画でも観てると良い。発酵の合間にはちょうどクライマックスに集中できるし、そして映画のラストに感動したらまたパンが構って欲しそう待っている。
洗濯物を回してから作業を始めれば、発酵中に干して買い物に行くこともできる。
何もやる事がないとやるべき事も出来ないというのは私だけじゃないと思いたい。

次に当然だけど、やっぱりまぁまぁ美味しい。
こないだヤマパンを久し振りに買ったら、「あれ、こんなもんだっけ?」とふと思った。勝利の瞬間である。
次は高級食パンをと思ったけれど、あれはさすが高いだけのことはあってやっぱり味が違う。パン屋さんに勤めてる人にこっそりレシピを聞いてみたけど「内緒」と言われてしまった。当然である。

ちなみに投資効率は粉>バター>砂糖、蜂蜜などの順に高いこと(個人の感想)は伝えておきたい。カルピスバターとか使うと明らかに味が良くなる。
ラピュタパンとか作りたいならバターは少し多めが良い気がする(むしろ安いパンで作っても充分美味しい)
型のサイズもお気を付けて頂きたい。何か載せたいなら大きい物を買わないといけない。小さいものから順番に多量の型が家に並ぶ羽目に遭う。

と、まぁ手作りパンが齎す功徳に比べたら瑣末な事ではあるけれど、そういった良さもあったりもする。

どうだろう、これでもうパンを捏ねてみたい気分で一杯になったことと思う。「そうは言ってもうちオーブンないし……」などと思ったかも知れない。
大丈夫、一万円からあるから。
じゃなくて、最初はトースターとか魚焼きグリルに入る小さいパンを作るので充分。焼きたてをすぐ冷凍庫に入れれば、次の朝食からは「朝は手作りのパンを焼いて食べてます」と人にさりげなく言える暮らしが待っている。ほどなく楽天で食パン型とオーブンを検討しているに違いない。それが新しい自分との出会いである。喜びをもって受け入れよう。

ちなみに発酵機能はあると便利だよ(人生をプラスに導く知見)

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