篠澤広に出会った
「学園アイドルマスター」ゲームリリース前に何か言っておくことができる残り少ない期間なので、篠澤広の話をする。
アイドル紹介でも立派な考察でもない。担当Pにはならないかもしれない。楽曲の感想と、篠澤広が気になるな〜という取り留めのない話。
篠澤 広 (しのさわ ひろ)
初星学園 高等部アイドル科1年生。
14歳で大学を卒業した天才少女。入学試験は、座学満点、実技0点。趣味は「苦手分野に挑戦すること、観葉植物を育てること」。アイドルを目指した理由は「いちばんわたしに向いてなさそうだから」。
『光景』を聴いて
5月6日に公開されたソロ楽曲『光景』。
コンポーザー、長谷川白紙。MVディレクター、植草航。
まさかアイマスでこんな組み合わせを見られるなんて思わなかった!
以下、歌詞をなぞりつつ楽曲・MVの好きなところを話すが、「かもしれない」「なんかいいな」という個人の感想です。
「たのしみ」
この曲のはじまりの歌詞は、『たのしみねまた』。苦手分野に挑戦するとき、彼女が純粋にそれをたのしみにしているのが良い。『また』とあるので、きっと毎回そうなんだろうな。
MVでは、篠澤広が軽やかに一歩踏み出してはすごい速さでかたちを変えて、再び元へ戻るような姿が描かれている。何に挑戦しても常人には理解できない速度で褒められる程度の成果を出してしまい、また別の何かに足を伸ばしているのかも。たった一歩踏み込むだけで何でも出来る天才だからこそ、何かひとつをやりこんだ経験ってあまり多くないんじゃないだろうか。
「まつ毛の向こう」と「目のおく」
『まつ毛の向こう』というフレーズは、曲中に二度登場する。
実際はまつ毛越しに何かを見ることって難しい気がするけれど、彼女の眠たげな瞼やステージライトを浴びてきらきら光るまつ毛を思うと、なんだかいいな。
曲中に二度登場するといえば『目のおく』も同様。
先程の『まつ毛の向こう』には『誰か』や『あなたたち』という他者がいたので、『目のおく』は対になっているのかも。自分自身の内面。こころ。だとしたら、心臓や頭ではなく、瞳の奥のような言い回しでもなく、『目のおく』ってのがなんだかいいな。
必ずセットで使われる『呼ばれる』が、誰に?何に?なのか解釈し切れていないけれど、外部からの刺激であることには違いない。
「わたしの景色」
MVで、篠澤広の周りに散らばるたくさんの小物。コスメ、洋服、本、ぬいぐるみ、ブラシやイーゼル、テニスボールにラケット、サンドイッチ、アイスクリーム、トランペット……。
サイトのプロフィールには「簡単で退屈すぎる日々を厭い…」とあるが、篠澤広の景色は想像以上にカラフルだった。どれも今の彼女にとってはつまらないものかもしれないけれど、これまでだって自分で選んできたんだよな。
「迎える」
『まつ毛の向こうの あなたたち,を』に続く歌詞。
篠澤広のひどく賑やかな景色には、他者が存在していない。人との関わりを拒絶しているわけではなく、そもそもひとつの場所に留まらないから、同じものを共有して思い出を作れるような相手がいなかったのかもしれない。
そんな彼女が、他者を『迎えられたら』『たのしみ』と言う。見てくれるファンか、学園で初めてできる友達か、共に歩むプロデューサーか……。MVで視線の先にあるのは、いくつもの蔓の向こうの、まだ手の届かない輝き。
「選ぶ」
1番サビ。何をやっても上手くいく天才が、『見えてるずっと先』=出来るようになる前から、これに決めたと『選んだ』のかなって。
この曲のラストの歌詞。言い切って終わるこの強さよ。
篠澤広が『選ぶ』姿は、MV でストーリ性をもって描かれている。
枝分かれする蔓の選択肢を、篠澤広がふれて選択していく。彼女の趣味のひとつは「観葉植物を育てること」なので、ここで植物がキーになるのがいいなと思う。
一際輝く蔓は、彼女の手からすり抜けていく。簡単には手に入らない。だからこそ、ふれたいと思う。
すり抜けていった輝きは「アイドル」という選択肢。篠澤広のステージ衣装。ふれた途端に全身にビリビリと響き、彼女のかたちを変えていく。この間奏で暴れるオーケストラと刺激的なアニメーションが堪らない!
前半でも身体のかたちがギュンギュン変わるアニメーションがあったけれど、あれはたった一歩で振り出しに戻るような動きだった。
何をやってもつまらないと感じていた篠澤広にとって、アイドルという挑戦は、感情を大きく動かされ、「やりたいから おもしろそうだから 悔しいから」と興味を持ち続けられるだけの衝撃があったんだろうなって。
全編通してすごいけれど、特にこのシーンは MV を見てほしい。
「熱」
衝撃的なアニメーションの間奏が明けて、この歌詞。
自分の手で『選びとった』アイドルという『熱』は、篠澤広のなかにずっと残っている。
涙は『目のおく』から『まつ毛の向こう』へ流れ出る。
篠澤広が見つめ、内側で感じたその『熱』は、「アイドル篠澤広」を見る人々に伝播して、彼女の景色をより賑やかに彩るのかもしれない。
『光景』という曲
この曲は、篠澤広がアイドルを選ぶ歌。
彼女がアイドルを見つけ、自分の手でアイドルを選び、これからアイドルになっていく、ちいさな一歩の歌だと思う。
そこに大きな夢も、強い憧れも、確かな覚悟もないかもしれない。それでも、自分で選んだひとつの道を進む、はじまりの歌。
枝分かれしていた蔓は一本になり、篠澤広はそこを一歩ずつ歩く。すごい速さなんかじゃない。かたちも変わらない。ふつうの歩幅で歩く、ひとりの人間。
気になる、篠澤広のこと
周囲の期待
篠澤広が「つまらない」と思うのは、簡単に出来てしまうことそのものではなく、周囲から「期待されること」「褒められること」なんじゃないかなって。
15歳の女子高生にとって一番近いのは親、家族の存在だと思う。彼女はどんな家庭で育ったのか。両親は天才の娘とどのように接してきたのか……。この先のストーリーで語られたらいいな。
初めての友達
公式発表の相関図によると、倉本千奈、花海佑芽とは「補修組」として仲良くしているらしい。篠澤広からふたりへ伸びる矢印は「初めてできた友達」。
「出来る」が故に孤独だった天才が、「出来ない」ことで友を得る。同じ目線で頑張る仲間の存在が、彼女にどんな影響を与えるのか楽しみ。
アイドルは趣味
篠澤広の趣味は「苦手分野に挑戦すること」。そこで選ぶのが体力の無さを克服するためのスポーツなどではないのは、勝敗の基準が無いアイドルの方がより難しく感じるからかもしれない。歌やダンスが上手ければ優れたアイドルになれるとは限らない。勉強が得意な彼女にとって、正解の無いものを追いかけるのはかなりの苦手分野だろうから。
サイトには「辛く苦しいレッスンやうまくいかないことに喜びを感じる変人」とあるけれど、苦しいことそのものではなく「うまくいくまで努力する過程」を楽しんでいるんだろう。興味を抱いた苦手分野に対して「限界ギリギリまで頑張る」ことが出来る彼女にとって、「趣味」という言葉は周囲が思うほど軽いものではないのだと思う。
全力で取り組む趣味は、天才の暇つぶしなんかじゃない。誰の期待も背負わない、自分のためだけのもの。
ファンとの関係は?
誰の期待も背負わず、苦手分野を探究することを望むなら、この先「アイドル篠澤広」を好きになり、応援し、その未来に期待するファンが付いたとき、彼女は何を思うんだろう。
歌やダンスのようなわかりやすいスキルが伸び切らない段階で「推され」て、上手くいく前に期待されるというチグハグな体験、してほしい〜〜〜……。
私と篠澤広の関係は、
篠澤広が周囲に期待されることを嫌って、期待されないからアイドルでいてくれるのだとしたら……私はどうすればいいの!?(もちろん今まで考えたことの全てが的外れな可能性だってあるのだけれど。)
ストーリーがどんなふうに進んでいくのかわからないけれど、今の私としては、彼女の挑戦心を絶やさず趣味を趣味のままに「アイドル」でいられるよう見守りたい気持ちが強い。
篠澤広の欲しい言葉をあげられる自信がないし、彼女とどんな関係を築けばアイドルとプロデューサーになれるのかまだ想像がつかない。
担当Pを名乗る覚悟はないけれど、少なくともアイドルを選んだ彼女の物語にはふれたいと思う。
学園アイドルマスター
5月16日、サービス開始。たのしみね。
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