AIIT履修証明プログラム「人間中心デザイン」人間中心イノベーション特論(伊賀聡一郎先生)-9/6
【9/6 2限】 人間中心イノベーション特論(伊賀聡一郎先生)
・イントロダクション
ベーシックなところから伝えることでこの"講義"をスタートする
不確実性
グローバリズム(瞬時に人がつながる)
先進国…少子高齢化
今まで通り考えていること(モデル)でうまくいかなくなっている
中核能力
強みが強みでなくなる時代
サービスが事足りている時代
なんのための競争なのかが分かりづらい
新規事業
冷蔵庫に残っているものを使って何か新しいものを作れ的な状況が多い
そんな簡単にできるわけではない
鍋物、野菜炒めとか→何の価値かわからないものがでてくる
投資
既存よりも何倍に化ける可能性はある
何をどのように投資していく判断がない
選択
何の基準で選ばれているかがわからない
基準がない
戦略
いまどこにいてどこに行きたいか→戦略性
既存の企業の現状は戦略性がない
人間中心デザイン/UXデザイン
これを使うと何ができるか→テーマ
・自己紹介
伊賀聡一郎先生
人間中心イノベーション特論
バロアルト研究所(PARC)所属
インタラクションデザイン
HCI
エスノグラフィのビジネス応用
D.A.Normanの近著の邦訳
Design of Everyday Thingsの邦訳(http://www.amazon.co.jp/dp/B00E257T6C/)
PARCの紹介(何を発明したか)
レーザープリンター
PC Alto
初めて商業化されたマウス
PC ALTOの発明(1972)→ビルゲイツが見て、それを広めたおおもとの研究
イーサネット
Ethenetの発明(1972)
WYSINWIG GUI
プログラミング言語
ユビキタスコンピューティング
青色レーザー
再利用可能な電子ペーパー
エスノグラフィのビジネス応用(1970)
今で云うユーザビリティテスト→コピー機の利用研究
PARCコマーシャルイノベーションへのシフト
技術をビジネスにどう活かすかのノウハウが必要
閉じてやるべきでなくて、オープンにやるべきと考えた
数字で見るPARC
人材250人
研究体制
2つのソフトウェア研究所
2つのハードウェア研究所
ビジネスモデル
4つの事業:クライアントサービス、Xerox、政府、ライセンス契約
ポートフォリオ
2100を超える特許。年間100件以上
PARC→新しい技術への投資
・不確実性
アップサイドリスク(よくわからないけど得になりそうなこと
人口の増加(経済的なチャンス)
インターネットの拡大
ほぼリアルタイムでつながっている
ダウンサイドリスク
オイルピーク(石油産出量のピークが過ぎた?)
水の危機(水不足、農耕地の不毛化、生物多様性の低下、紛争)
地球温暖化(長期的に上昇傾向)
日本の年齢高齢者の増加
生産年齢人口の減少と後期高齢者の増加
主要国の就業率・失業率の推移
いままでの簡単な仕組みでなくて、さまざまなジレンマの中で価値を出す
成長ありきではない時代に何ができるか
これまでに無制限にリソースが使えるわけではない
人にとってどんな価値があるかが提示できていない
ルンバの例
できるからつける?
付加機能と付加価値を混同している
機能をつければよい
イノベーションの意味が間違っている
競合
コーヒー屋だけで争っていたのがコンビニなどに拡大している
暇だからガムを噛む→いまはスマートフォンにとって代わる
競合が単純ではないゲームになっている
・イノベーションとは
企業の目的=顧客の創造(ドラッカーの言葉)
企業の目的と基本機能
企業の機能
マーケティング(欲求を理解し満足させる)
イノベーション(新しい要求を創り出し満足させる)
企業運営の原則と構造
永続的に価値を出す
顧客を満足させる
『人の欲するものを、人の予期せぬ形で』(伊丹十三氏)
マーケティング、イノベーション
今の世の中
利潤から始まってしまっている、お金(結果)から始まってしまう
マーケティング
商品やサービスが、生産者から商品者に流れるまでの全過程における市場に向けてすべての活動のこと
マーケティング≠販売(マーケティングのゴールと販売のゴールは異なる)
イノベーション
いろいろなチャンス、リスクがある時代を乗り越えていくにはイノベーションが必要
イノベーション/ブレイクスルー
いろんな技術が開発され、ビジネスとして儲かっていると考えることが多い
イノベーションエコロジー(教育、企業、国家など)がそれを起こす
ブレイクスルー
本質的な課題を打ち破る解決策
ブレイクスルー
イノベーションの重要な変化の起点
イノベーションエコロジー
ステークホルダーの参加と協力が必要
・企業イノベーションの課題
市場と事業は変化のサイクルがある
衰退を前提に戦略を考えるべきだが、アイデアを散発するのが現状
イノベーション戦略が重要
ブレイクスルーゾーン
大学で起きたあとで企業で世の中に出すための製品開発がある
大学と企業の間にブレイクスルーゾーンがある
企業にとってのブレイクスルー・ジレンマ
入口:ひとつの製品で成功するとそれに注力する、ブレイクスルー研究の力が落ちる
出口:研究に投資しても利益が得られない
成熟産業におけるニーズとシーズのねじれ
事業部と研究開発部門が結局同じことをやっていたりする
典型的な研究開発プロセスの課題
プロセス自体のマネジメント
入口と出口の課題が潜んでいる
企業の目的=顧客の創造
マーケティング
欲求を理解し満足させる
イノベーション
新しい欲求を生み出す
【9/6 3限】 人間中心イノベーション特論(伊賀聡一郎先生)
・人とモノ
道具は人間固有?
他の動物も道具を用いる
人間固有の道具?
道具の囲う
言語の仕様
費の使用
類人猿と他の動物との違い→「心」
群れの絆
かけひき
複雑な連合関係
→他社との社会的交渉のための「心」という「道具」ができた
取引
モノとモノの取引
お金の話し
物々交換
物価値を測る
物の価値を貯めておく(腐らない)
産業革命
18世紀後半に英国から始まった技術革新による産業構造の変化および経済発展のこと
アダム・スミス「国富論」
封建制の終焉:農村から都市へ
富の分散…市民社会がつくられていく
市民社会への問い
「見えざる手」が経済を動かす→需要と供給(神の見えざる手で均衡していく)
商品の価値
価格は需要と供給のバランスの上で決定される
売れる商品にするには?
価値を高める
値段を下げる
商品経済社会が人類に支持されたことから、現在の人類の生活を支えている
人間工学/マンマシンインターフェース/ヒューマンインターフェース
技術の発展→自動車、航空機、原子炉
機械操作が人々の仕事の大きなウェイト
ひとつの機会に複数の機能→使い勝手が重要になる
モノの価値を高める手段
ユーティリティの向上:機能・性能
ユーティリティの向上:操作性・認知性・快適性
人間のニーズ・能力・振る舞いを第一義として、それに合わせてデザインする
・人間中心デザインとは
コンピューティングパラダイムの変遷
バッチ処理(1960年代)
タイムシェアリング(1970年代)
デスクトップ(1980年代)
ネットワーク(1990年代)
→徐々にプロではない個人で利用できるようになっていく
時代背景(1970年代)
「AI」の誕生:ダートマス会議(1956年)
AI全盛の時代
AI冬の時代へ(70年代中盤)
2つの道へ
人間の理解(神経科学)
人間の応用(HCI,CSCW)
その境界領域:認知科学・認知工学
User Centerd System Design D.A.ノーマン
「ユーザ中心」の概念を創案
ユーザのニーズがシステムのデザインを導いていくという考え方
The Psychology of Everyday Things[Norman 1988]
邦訳「誰のためのデザイン?」(新曜社)
概念モデル
デザイナー(作る人)の概念モデル
ユーザーのもつモデル
システムイメージ
デザイナーとユーザは直接対話ができない
すべてのコミュニケーションはシステムを介す
デザイナとユーザの概念モデルが一致しないことが、使い難さの起源である
ユーザ行為の7段階モデル
ユーザの何かしたい目標からシステムの物理的な状態(実行の溝)
システムの物理的な状態から心理的理解(評価の溝)
ルーシー・サッチマンの「状況論」(1987)
プラン(計画)とアクションが考えられてから行われるのでなくて、考えながら作業する
ロドニー・ブルックス「サブサンプション・アーキテクチャ」
簡単なルールで非常に複雑な行動ができることを提案
人間中心デザインとは、人間とテクノロジーが常にインタラクションしながら生まれてきた
アフォーダンス[J.J. Gibson][ノーマン]
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9
シグニファイア
対応付け
人が道具や機械を操作するときの、ひとの操作と、ひとが操作した結果としての道具や機械の動作をの対応関係
制約
物理的
意味的
文化的
論理的
強制選択法
シャンクのスクリプト理論
基本的なレストランスクリプトがあるから、高級店でもファストフード店でもそこそこ対応できる
ゴフマンの「フレーム」
人には基本的なフレームがあって、それで世界が定義される
認知科学の世界
ノーマン7つのデザイン基本原則
発見可能性
フィードバック
概念モデル
アフォーダンス
シグニファイア
対応付け
制約
まとめ!
人間中心デザイン→サイエンス/テクノロジーの歴史
テクノロジーの発展
人間の理解
人間とテクノロジーのインタラクション
「人間中心」の本来
シンプルで優れたユーザ体験レベルからの脱却
人間とは?テクノロジーとは?それらがクロスするエリアで何が起こるか・起こしたいのか?
といった問題提起の中での実践的な活動
【9/6 4限】 人間中心イノベーション特論(伊賀聡一郎先生)
・イノベーションの分類と戦略
イノベーションの5分類[Schumpeter 1912]
新しい財貨または新しい品質の財貨の生産
新しい生産方法
新しい販路の開拓
新しい資源の獲得
新しい組織の実現
景気循環論
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%AF%E6%B0%97%E5%BE%AA%E7%92%B0
マーケットイン/プロダクトアウト
顧客のニーズ
提供者側からの発想を優先して活動を行うこと
インクリメンタル/ラディカルイノベーション
改良を積み重ねていく
新しい連続性のない技術革新(まったく新しいもの)
持続的/破壊的イノベーションモデル[Christensen 1995]
顧客のニーズで性能向上していく
業界構造を変えてしまうようなイノベーション
クローズド/オープン イノベーション
自社の中の経営資源のみで研究開発を行うイノベーション
外から技術を買って組み合わせる、自社の技術を他社に売り込んだりする
オープンイノベーションのファシリテーション(主従?)
契約時にしっかりと詰める
利益の配分などをしっかりとクリアにする
シリコンバレーでリサーチャーが情報交換をしているという文化がある
シリコンバレーは、アカデミズムとビジネスの距離感が近い
・イノベーションの戦略
戦略
生き残りのための方法
競争相手に対する優位性を作り上げられること
戦略論
フレームワーク化、理論化したもの
古代からどうやったら戦わないで生き残れるかが「戦略論」になっている
SCPモデル(1930年代)
業界構造の特性によって企業の行動範囲とその制約条件が決定される
制約条件が多い業界の場合は、パフォーマンスが発揮できない
幅広いオプションがとれる状態にする
4つの戦略的要素
自社の製品・市場分野における能力の理解
コアコンピタンス
成長ベクトル
競争優位
シナジー
成長マトリクス[Ansoff 1957]
ファイブフォース[Porter 1980]
戦わないためのポジション取り
競争優位の3つの基本戦略[Porter 1983]
資源ベース理論[Wernerfalt 1984]
リソース
ケーパビリティ(組織能力)
コアコンピタンス(中核能力)
コアコンピタンス[Hamel 1990]
需要、希少性、占有可能性
表の競争力、裏の競争力[藤本 2004]
アーキテクチャ・マトリクス[藤本 2007]
ブルーオーシャン戦略[Kim 2005]
業界内ポジショニング戦略の限界[Ruefli, Wiggins 2003]
日米のイノベーション戦略比較
イノベーションの未来
トレンド
イベント
事件
企業にとっての「予測」
不確実性に向き合うアプローチの必要性
『発明することが未来を予測する最善の方法だ』
・イノベーションの普及
イノベーションの普及とは
イノベーションが
あるコミュニケーション・チャネルを通じて
時間の経過のなかで
社会システムの成員の間に、伝達される過程である
コミュニケーション・チャネル
イノベーションの普及過程には少なくとも何かしら異類的なコミュニケーションが必要
採用者カテゴリー
イノベーター
初期採用者
初期多数派
後期多数派
ラガード
キャズム[Moore 2002]
イノベーションの普及
社会システム
チャネル
時間
・イノベーションへの投資
機会コスト
セミナーのメリット>参加費(1000円)+時間コスト
サンクコスト
限界費用・限界便益
投資
いまできないことを将来できるようにする
投資と投機
投資…長期的
投機…短期的
リスク
行動しないということもリスク
ハイリスク・ハイリターン
ローリスク・ローリターン
投資の意思決定
回収期間法
投資した金額をどのくらいの期間で回収できるか
時間という価値
DCF
時間には価値がある
将来のキャッシュフローは現在価値に割り引いた上で評価する
NPV(Net Present Value)法
リスクマネジメント
イノベーション推進におけるリスクに対する考え方
リスクマネジメント
リスクを洗い出す
それぞれのリスクを評価する
リスクに順序を付ける
テクニカルリスク
市場リスク
実践的リスク
投資とリスクの関係
まとめ
リスクを認める・リスクに向き合う
分からないことは分かるようにする
最大のリスクはイノベーションにとって最大のチャレンジメニュー(作らないとわからない)
でも、無理なものは無理と正直に向き合う
・イノベーションと組織
『なんであれ、いいというものは熱狂から生まれる』ブライアン・イーノ
『フォーカスグループによって製品開発するのは難しい。実際にプロダクトを作ってみないとわからない』
PARCにおける人間中心のイノベーションの実践
未来をもららす『人々』:将来の顧客の将来の問題を理解
従来のイノベーションの流れ
基礎研究(応用研究)→エンジニア→マーケット
2つの問いの相互作用
何が可能か?
何が必要か?
2つの問いの相互作用がブレイクスルーの鍵(ギャップにどう対峙するか)
『特定の仮定にすがっていたとしても、冷静に見て手放したときに新しいものが得られる』
【9/6 5限】 人間中心イノベーション特論(伊賀聡一郎先生)
「組織で人間中心デザインについて抱える課題」について
→受託におけるイノベーションについてワークショップで検討
【感想】
イノベーションについて徹底的に考える時間はとても刺激的で、とても心が躍ることでした。
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」アラン・ケイ
The best way to predict the future is to invent it
「顧客の創造」につながる、「ブレイクスルー」のヒントを得られた一日。
次回は9/12(金)中島瑞季先生『デザイン解析論』
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