創作活動におけるオープンイノベーションの可能性とその事例について
-創作活動におけるオープンイノベーションの可能性とその事例について-
この記事は、 ツナガルダイガク Advent Calendar 2019( https://adventar.org/calendars/4658 )の20日目の記事です。
今日はガッチガチです。みなさん、今日はお勉強しましょう!!
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-はじめに-
--まず私の紹介から---
京都の御所の北にある、いわゆる今出川動物園(大学なのかは不明)というところに通っています「キト」と申します。20歳の大学3年生です。専攻は経済学とICTです。
私はVOCALOID研究会Arpeggioにて総務部長を務めていました。任期満了につき、12月の会議をもちまして後輩に引き継ぎ(引き継ぎ資料まだ書けてない、まぁ引き継いだことにしましょう...)をしまして、次年度は総務副として老害をすることになっています。よろしくお願いします。
さて、私事ですが、最近内定を頂くことができ、再来年の4月より就職できることになりました(あと1年の使い道のご提案お待ちしております)。就職活動をしていると、当たり前な話ですが、嫌でも様々な企業の仕組みや情報というのが入ってくるわけです。その中でも、特にどの企業でも"働き方改革"であったり、企業の働きやすさであったり...自分たちの企業独自の「新しい働き方」というものの魅力を学生にアピールするわけですね。特に私が見ていた業界はそれが顕著だったなぁと最近改めて感じました。
これからお伝えする内容は、そんな大学生が就職するときの一つの価値観として捉えても良いし、各サークルに取り入れても面白い話かもしれません(Arpeggioの人はなぜ総務部がそこまで必要だったのか...その謎に迫れる!)。また、個人個人で定義や考え方は違うので、私がこれから書くことが全て正しいとは限りません。
ぜひ、"今回の記事を読んでからオープンイノベーションについて考える"というところまで至っていただけたらと思います。
ちょっと難しいかもしれませんがしっかりと理解ができたらより良い"ミライ"が待っているかも...!?
-オープンイノベーションとは-
オープンイノベーションとは、組織内部だけではなく、他の組織・個人の持つ知識を組み合わせてより新しい革新的な何かを創り出す方法論のことです。ヘンリー・チェスブロウが2003年に『Open Innovation:The New Imperative for Creating and Profiting From Technology』という著書を発表してオープンイノベーションという概念が提唱されました。
そもそも1980〜90年代の研究開発において、競争環境の激化やイノベーションの不確実性(デルファイ調査などの予測・予想例からも見て取れるが)により短期的成果をあげなくてはならなくなった背景があります。そのため、短期的成果をあげるために、当然ながら投資家などから集める資金の確保、技術やアイデアといった情報に対する需要がさらに高まってきました。
ただ、当時の米国企業においては、短期的成果をあげるために必要な市場化や製品化についても成し遂げられないという閉鎖的な構造を持っている背景がありました。
1990年代になり、ハードウェアからソフトウェアの時代になったことで、IT産業において、特にシリコンバレー(サンフランシスコ・ベイエリアの南部)においては枠に囚われないビジネスモデルを形成するために新しい働き方としてオープンイノベーションが考えられるようになりました。
結果として先ほども書いたようにアメリカの理論家・大学教授のヘンリー・チェスブロウが2003年に『Open Innovation:The New Imperative for Creating and Profiting From Technology』という著書を発表してオープンイノベーションという概念が提唱されました。
その後10年ほど経つと、さらに経済のグローバル化に伴う国際競争の激化、製品ライフサイクルの短縮化といった変化が増え、多様な資源・能力の組み合わせを必要とした高度で複雑な製品を作るための研究から開発、事業化までのスピードがさらに求められ、さらにオープンイノベーションが必要とされるようになりました。
ヨーロッパでは2013年のダブリン宣言で欧州委員会が新たな施策であるオープンイノベーション2.0を欧州全体で推進し世界に発信していくことが決議されました。それ以降、毎年「Open Innovation 2.0 Conference」という会議が開催され、昨今では、国や大学、産業のような組織だけではなく、“Citizen”(ユーザー) の重要性について説かれる事もあります。
また、いち早くオープンイノベーションの考え方を取り入れたシリコンバレーでは、結果として、現在、GAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)と呼ばれるような米国の多国籍企業で、コンピュータやソフトウェアを駆使してサイバースペースを2010年代に支配するに至る企業が出てきました。
近年は日本も含め、自治体がオープンデータを提供したり、IT企業をはじめとしてハッカソンの開催、コワーキングスペースなどの場所の提供といった技術だけの交流にとどまらず交流を進めることによってイノベーションに到達しようとする企業が増えてきており、新しいビジネスモデルの確立が進んでいます。
-一般的に取り入れられているオープンイノベーションの活用事例について-
例としてあげられるものとしては、双務契約の実施、共同研究開発の実施、アイデア・コンテストの活用、企業独自のコミュニティとの連携、外部仲介サービスの活用、コミュニティや専門ネットワークの利用などが挙げられます。
特に、場所という点においては近年、コワーキングスペースの需要はさらに高まっています。実際にこれらのコワーキングスペースを利用している企業は増加傾向にあると言われ、日本においてもその傾向は顕著となっています。
-ツナガルダイガクにおけるオープンイノベーションについて-
では、実際にツナガルダイガクについてのオープンイノベーションについて考えていきたいと思います。そもそも、ツナガルダイガクはオープンイノベーションの定義にに入るのでしょうか。
ツナガルダイガクはそれぞれの大学のボカロサークル・部の枠を超えて大学のボカロサークル・部として活動・交流をしています。
定義と重ねると、"各大学のボカロサークル・部の組織内部だけではなく、他のボカロサークル・部の持つ知識を組み合わせてよりボカロを軸とした新しい知識・創作・交流を創り出す方法論"と考えることもできます。
特に、ボーカロイドはその著作権を持つクリプトン・フューチャー・メディア社が独自の「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」を作り上げており、あらかじめ利用規約で創作物の二次利用範囲が定められているため、ユーザーは自身の作品だけでなく、ピアプロに投稿された作品をもとに創作活動ができます。結果として、ボーカロイドの創作の連鎖は、いまや音楽・映像・イラストにとどまらず、世界中でデジタルだけでなく、バーチャルライブ、オーケストラや歌舞伎とのコラボレーションなど、リアルにも活躍の場を広げることができています。
[画像]ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL) http://piapro.jp/license/pcl/summary
そのため、ツナガルダイガクはオープンイノベーション の環境下におかれるものと考えて良いかと思います。
-活動におけるオープンイノベーションの可能性について-
ツナガルダイガクとしても今年(2019年)は様々な交流をしてきました。これらの交流はオープンイノベーション として考える事ができます。
1.モーションキャプチャー
VOCALOID研究会Arpeggioでは、現在主な活動の中にMMD(MikuMikuDance)はありません。ただ、多くのツナガルダイガク関連大学ボカロサークル・部にはMMDを活動にしているサークルも存在しています。そこで弊サークルのダンス班のモーションを大阪工業大学のOITバーチャルライブ研究会の方にキャプチャしていただくと言ったコラボレーションが実現しました。それぞれの活動を補うという形で交流をすることができ、今までの活動の限界を超すことができるオープンイノベーションのメリットの一つになったと感じます。
2.ツナガルダイガク勉強会
6月30日に神奈川大学・大阪工業大学において開催されました。
↑神奈川大学会場にて
1.東京電機大学「VOCALOID関連イベント参戦のススメ」
2.千葉工業大学「ボカロ関連ウェブサービスのすすめ」
3.同志社大学「一から始めるカバー曲講座」
4.大阪工業大学「ボカロ・ボイロ界隈におけるLive2Dの事例紹介」
5.大阪工業大学「ボカロ部が知っておくべき著作権の話」
6.keiseiさん「ミクノポップをつくろう」
という内容で、各ボカロ部の活動において、あまり触れて来なかった部分に触れることができるようになったと思います。
また、組織だけではなく、実際に社会でご活躍されているkeiseiさんからお話を聞くことができる機会を作れたということで、オープンイノベーションの活性化が図ることができているのではと思っています。
では、将来的にどのようなオープンイノベーションが実現できるでしょうか。
1.一つの作品を創り上げる
ボーカロイドの作品は作曲だけでなく、MIX・マスタリング、作詞、調声、動画、場合によってはMMDやダンス、バンドのように広げることができます。これらの作業を一つの大学ボカロサークル・部で完結するのではなく、様々な団体と共に創って一つの作品にする。というのも良いのかもしれません。
2.企業とコラボする
これは運もあるかもしれません...。大学ボカロサークル・部の限界もまた存在しています。それを超すことができるプロの技を見ることができるのは特に大事なことだと思います。
-おわりに-
これからはオープンイノベーションの時代(?)と言われるようになると思います。今まで組織内だけなら限界があったものも、組織を超えた交流をすることで、その限界を高めることができると思います。ぜひ、来年も各サークルで・ツナガルダイガクで実践してみませんか!?
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2月22日に京都で全国ボカロサークルの勇姿によるイベントとして「ツナガルダイガクフェスタ」が開催予定です。一つのオープンイノベーションの成果として見るのも良いのかもしれません。お楽しみに。
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-紹介-
これも私事にはなりますが、先日曲を投稿させていただきました。ぜひご覧いただけたらなと思っております。
また、VOCALOID研究会Arpeggioがコミックマーケットに参加します。
当日は私も売り子をしています。お会いできたら嬉しいです。
コミックマーケット4日目 12月31日(火)
サークルスペース:西E-03a
サークル名:VOCALOID研究会Arpeggio
新譜「分散和音」(2枚組20曲500円)(XFD→sm35830430)新刊「Wonky Ensemble 2019」(500円)、他旧譜等も頒布予定。
[参考論文・資料記事]
Henry Chesbrough-wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Henry_Chesbrough
日米欧企業における オープン・イノベーション活動の比較研究
https://www.gakushuin.ac.jp/univ/eco/gakkai/pdf_files/keizai_ronsyuu/contents/contents2017/5401/5401yoneyama/5401yoneyama.pdf
第1章 なぜ今、オープンイノベーションなのか - 文部科学省
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2017/06/02/1386489_003.pdf
オープン・イノベーション - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/seisaku/haihu07/sanko1.pdf
二次創作からn次創作へ、世界へ広がる「初音ミク」のクリエイティブ・イノベーションの仕組み
https://webtan.impress.co.jp/e/2017/08/17/26466
ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)
https://piapro.jp/license/pcl/summary