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YETTO & カンノアキオ「good driver -Summer Damn'23-」を野暮ったいくらい言葉を尽くして説明④

前回記事はこちら。

YETTO & カンノアキオ「good driver -Summer Damn'23-」という楽曲で私は64小節ラップしていて、このnoteではそれを16小節ごとに区切って歌詞解説しています。今回は33~48小節箇所です。では歌詞を見てみましょう。

無数にあった選択肢も
二択強い奴が勝つ仕組み
ほら、この4キロ先配達を
取る取らないで稼ぎが決まるぞ
天候や環境、人の食欲で
大漁か不漁か決まる 水産業
大時化なら行け 雨クエスト爆ハネ
神様に感謝 これで食べていける
夢や希望 乗せたウバッグも
生活の重圧で肩が凝る 
「お前が選んだ自己責任論」
って言うお前も俺も低賃金労働
人生リロード しても同じroad
傷付け合う戦争やめよう!
でも池袋じゃラーメン戦争
一兵卒の俺ら それを取り合う

前半8小節は「運」について。この仕事をやってると、効率よく配達できるできないは結局のところ運がいいか悪いかに尽きるなと思っちゃいますね。昨日はすごく鳴ったのに、今日は全然鳴らないとか。周りの配達員は稼働しているのに、こっちには全然回ってこないとか。例えば、今まで全然鳴らなくて、やっと鳴ったと思ったら配達先が4キロで300円。動きとしてはまったく見合ってない稼ぎを取るのか取らないのか。こういう選択の連続なんですよね。で、その配達先付近では連続で鳴る可能性もある、とか。運があるかないかに尽きるなと思いますね。ちなみに2023年9月26日は2件しか鳴りませんでした。気温が和らぐと稼ぎが悪くなる…。

この歌詞を書く前に、映画『山女』を見に行ってました。

飢餓に見舞われた18世紀末の東北が舞台の映画ですが、稼げる稼げないという話と、農作物が育つ育たないとか、大漁か不漁かとかは感覚的には一緒だと思ったんですよね。獲れるときは獲れるし、獲れないときは獲れない。スマホが鳴ってお店に品物を取りに行くのも現代っぽい働き方かもしれませんが、その周辺住民の食欲とか、雨が降って外に出たくないからとか、気候が良いから今日は飲みに出かけようとか。そんなもんで決まってしまうので、第一次産業となにも変わらないなと思いました。めっちゃ稼げた日はナチュラルに「神様に感謝 これで食べていける」って思ってますからね。ヤバいですよね。で、この結局古風な働き方について書いた部分をYETTO君から「噺家とか講談師っぽくラップしてみてください」とディレクションされて、とても面白くなりました。トラックも4小節だけ和っぽくなってます。

後半8小節の出だし。そういえば最初にUberの説明会へ行ったとき、「こんな夢のような働き方があるんです」みたいなVTRを待ち時間に見せられましたね。そんなことを思い出して「夢や希望 乗せたウバッグ」と書きました。レコード会社に勤務しながら副業でUberやってます、的なおじさんが映ってたなぁ。

「『お前が選んだ自己責任論』 って言うお前も低賃金労働」は、なんだかSNSでのいさかいみたいなものに、この夏は完全にやられてしまって。こんな場所で議論は成立できないのに、社会ではアッパーなゴシップや報道ばかりで、なにか言いたくなってしまうことばかりで。攻撃ばかりのディスコミュニケーションにはたと疲れてしまった2023年の夏でしたね。そういう意味合いですね。つまり俺もお前も全員ダメってことです。

これはSNSだけではなくて、配達でのディスコミュニケーションを甚だしかったんですよ。特に今年の夏。2件配達のためそこそこ時間がかかるのに「まだですか?」と言う客。この暑さで。頭おかしい…。あと長々説明書きして「〇〇してください!最後に電話でお願いします!」とか書いてる客に限って、電話に出ないんだよな~。説明文章の長い客はロクなやつがいない…。

この仕事は、VS配達員(取り合い)、VS店員(待ち時間が長い)、VS客(結局こいつがラスボス)ばかりで、遠い国の戦争が終わらなければ、身近な戦争もまだまだ延々と続くわけです。

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