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Vtuberの曲をEP・アルバム単位で聴きこむやつ【1】 Fulfill-BOOGEY VOXX

 はじめに

 音楽系Vが企業・個人問わず高いクオリティでリリースを打ち出し続ける昨今、ふと自分はちゃんとその音楽を聴いているのか、記号的に耳に流し込んでいるだけになっていないかと思うことが増えてきました。好きなものを追っていったら「Vtuberの音楽」に行き着いたはずなのに、気づいたら「Vtuberの音楽」だからで聴いたり買った曲がゼロとは言い難い。
 そこで自分の「好き」の再確認を行うべく、過去に喰らったなと感じたEP・アルバムを改めて聴きこんで一つ一つ味わう習慣を始めてみようと思い立ちました。せっかくハマれた趣味に惰性で飽きたくないわけです。また、同時にVクラ等にハマっているのでどうしても単発としての曲の面白さやアンセム足りえるかという部分(分かりやすく盛り上がれるか)に無意識にフォーカスしてしまう感じが否めないことから、EP・アルバム単位での良さに着目してみました。音楽的知識や感度が高いとはとても言えないミーハーくんなのでガッツリ解説!という感じでもなく短めなのでスラスラと日記的に眺めてもらえれば幸いです。

Fulfill-BOOGEY VOXX

 今回の対象はBOOGEY VOXXの「Fulfill」になります。「俺たちが2020の覇権です!」と高々に宣言し続けて本当に覇権と言ってなんら差し支えないシーンへの食い込みと熱量を見せたBOOGEY VOXX。活動開始から早いタイミングで彼らの手数と奥深さを見せてもらえたこのEPがあったからこそ現在のBOOGEY VOXXがあるのではないかと私は思います。4曲という比較的コンパクトな構成から多くを感じられるこのEPの魅力を再認識していきます。

empty

 1曲目はempty。タイトルの通り「空っぽ」を埋めてくれるなにかに縋る曲。#エレ子歌入れコンテスト への参加によって生まれたわけですが、3月活動開始で4月にこのコンテストへ乗り込むあたりに初めの資金や人脈が限られた中でも目の前のチャンスを拾いにいくハングリー精神がブレないBOOGEY  VOXXの強さだなと今になって改めて感じます。曲調はその精神とは裏腹にアンニュイな雰囲気のトラックにどうしたって終わりがくる関係性にそれでも依存してしまう人の心情が乗った歌詞。D.I.Y.が各地で流れまくるのもあってイケイケなイメージが強いかもしれませんが特にFraさんがラップにsadを乗せるのがうますぎる。そういう女への解像度が高い。

Drops Like a SAKUMA (feat.ヌコメソーセキ)

 2曲目はDrops Like a SAKUMA (feat.ヌコメソーセキ)。人生の様々の味わいをドロップス缶の色とりどりとフレーバーで表していて、背景を感じさせる含みのあるワードを散りばめたり、色のついた風景の浮かぶ歌詞など曲全体がドロップス缶を模したつくりを感じられて面白い。EPの各曲と比較するとヌコメさんのフロウや声質の唯一無二の魅力が加わっていることもあり、爽やかさが随一。クラップの要素があるのも個人的に好きなポイントです。

watanuki

 3曲目はwatanuki。四月一日(ワタヌキ)ということで感染症の流行による世界の閉塞感や生活への不安、それらが全部エイプリルフールのくだらない嘘であったらどれだけ良かっただろうか。そんな思いの吐露が詰まっていて、前述のFraさんがsadを乗せるのがうまいという点がより強く、なかでも「ぶぎぼも元気がでることしかやりたくねー けど今だけsingin’ my bad&sad」にそれまで勢いと無敵感抜群だったBOOGEY VOXXに押し込めきれない人間的な弱さを見せられうっかり泣きそうになる1曲。この曲が過去の出来事になる日が1日でも早く来ることを願うばかりです。

Fulfill

 4曲めはFulfill。一発でわかるけど言語化できないバーチャルねこさん特有のchillな音作りがリアルで生々しい表現と抽象的な表現が入り混じった歌詞とマッチしていて、気づけば曲の一人称視点が見えてくる不思議な曲です。置かれた状況はぐちゃぐちゃなのにこの話の終着に救いがきっとあるのがとても良い。蟹亀のリリースでもこのコラボは見られるのでその始まりとも言える曲として思い出深い1曲になっています。この曲から取られているジャケットの枝豆も得も言えぬ味わいがgood。

全体

 「ダウナー」をテーマに全体が作られていて、その中でもそのまま沈んでいくものもあればポップさや前向きへの転換になったりと表現の幅があり、特にemptyの退廃的でいつか壊れる空っぽとFulfillの自ら状況を変えようとし満たされる対比が全体を締める構成になっているのがEPとしての完成度がとても高いなと感じました。

終わりに

 以上で初回のnote終了になります。やってみた感想としては記憶の整理にもなりますし、こうして文字でアーカイブしておくことでいつかまた自分で読み返したときに好きだった曲をもう一度聴くきっかけになりそうなので今後も続けていきたいですね。次回に向けてまた1つ聴き込んで感想を綴っていくのでよろしければまた見に来てください。それでは。

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