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YOSAKOIソーランの軌跡~想いを繋ぐ~prof.9 下畑浩二(しもはたこうじ)さん(C-ASH支部長・グラフィックホールディングスpresents倭奏総代)

コロナ禍での活動

コロナ禍に入って2年ほど経って…

 いや、ほんとにね、実際ね、運営が難しいよね。この時期になると、チームもやっぱ、すごく難しくて。チーム維持するのがすごく大変になっちゃってて、うちもそうなんだけど。登録の人数的には札幌にも90人いるのさ。でも!練習に来るのは二十何人とか。で、それはもう仕事柄さ、来れなくなる人とか当然いるし、コロナでね。そういう(YOSAKOIをする)ことをやってることによって仕事に影響出てくるからって。
 てなってきた時にさ、なんとなく去年の同じころは来年頑張ろうよって言えたんだけど、来年言えないんだよね。やっぱこの、延期になってまた中止になってしまったし、まあ「代替イベントなんかやろう」って形にきっとなってると思うんだけど。みんなの中では「ほんとに6月できるの」ってまた疑問がすごくあって。それに対して今までは、「いややろうよ、頑張ろうよ」って言えたんだけど、チームとしても、もうちょっとやっぱりそれじゃ引っ張れないと正直なっていて…。ワクチンが、こう大丈夫とかも言えないしさ。ちょっとだから本当みんなで相談していかないといけないかな、どういう引っ張り方するのかっていうのはあるので、難しいんですよね。

 作品的な話で言っても2020年に作ったものを今年(2021年)なんとかお披露目をしたんだけど。ただ、全員ではやってないんだよね。名古屋¹⁾は名古屋でようやくこの間、どまつり²⁾の市街地開催で名古屋のメンバーと一緒に札幌から数人と東京から1名だけ、行ってお披露目ができたんだけど。衣装はもらったけど1年間それをあたため続けたっていうのもあったんだけど、これを来年やるかっていうのもちょっとチームとしてもすごく悩んでいて。
 もうね、スタッフもメンバーも飽きてるのさ。2年やり続けてるから。おんなじこと。さすがにそうなって来ると、やっぱりこう、いいかなって、「衣装着て踊ったし。」ってなっちゃってる人たちもいるので。やるんだったら新作みたいの作らければいけない。けど!作ったはいいがほんとにやれるのかってところだったりが、すごく疑問に思う人たちもいっぱいいるので、これがどうやって引っ張るのかって。

 今ね、チームとしても難しいんですよ。ほんとしんどくて。これも、組織委員会 ³⁾と 学生実行委員⁴⁾とチームとみんなで解決策というかを、もっていかないとダメなんじゃないかなという風に思っていて、もうチームだけじゃだめだと思うんだよ、引っ張れないというか。支部⁵⁾を見てても9割活動してないんだよね。チーム稼働してないのさ。チーム会議を月に1回やってるんだけど、オンラインで。ほとんどやってない人たちが多くて、そうなるとチーム維持がもう絶対できなくなる。
 うちの支部の中でいたらうちが、倭奏が一番多いんだけど、多い倭奏でさえ二十何人しか来ないってことは、他のチームなんて絶対来てないから。天舞⁶⁾さん が80人練習来てるっていうのがすごい驚異的で、すごいよ。80人。100人登録して80人練習来てるっていうからね、この間の緊急事態宣言出るまで。それで20人来ない人がいるからって梶浦さん が怒号を出したっていうのを聞いて、俺と北昴の橋本⁷⁾くん が「さすが天舞だね。俺たちちょっとできないね」みたいな感じで言ってて、そこをそうやって引っ張っていけるチームっていうのがほんと限られているので、じゃあどうやってやってくのがいいのかってみんなで答えをこう考えながら、出していくしかないのかなっていう風に思いますね。

1)名古屋:倭奏は札幌・名古屋・関東に拠点を置いて活動している。
2)どまつり:にっぽんど真ん中祭りの略称。毎年8月に愛知県名古屋市で行われるお祭り。例年実行委員会がボランティアという形で参加している。
3)組織委員会:一般社団法人YOSAKOIソーラン祭り組織委員会のこと。
4)学生実行委員会:YOSAKOIソーラン祭り学生実行委員会のこと。札幌近郊の学生によって構成される。
5)支部:YOSAKOIソーラン祭りの発展をめざすために設置された枠組み。北海道を地域で分け、その地域のチームが所属する。北北海道、上川中央、オホーツク、空知、釧根、十勝、日高、道央、札幌中央、札幌TWN、札幌南、C-ASH、後志、胆振千歳、南北海道、学生の全16支部が存在する。
6)天舞:新琴似天舞龍神のこと。札幌市北区新琴似を拠点に活動しているYOSAKOIソーランチーム。第28回では優秀賞を受賞している。公式ホームページ
7)北昴:札幌市を拠点に活動するYOSAKOIソーランチーム。公式ホームページ

コロナとともに

 名古屋でやっぱり、1個ね、耕作⁸⁾も一緒に行ったけど、答えみたいなのはなんとなくおぼろげながら見えたところもあると思うんだ。やろうと思ったら緊急事態宣言下でも実際やってるわけだし、できなくはないとは思うのさ。ただ、無観客になって、それでもやるかやらないかっていう選択肢なんだと思うんだよね。市民の理解とかを得られないままやるのかやらないのか。その時に市民の感情がどう変わっているのかもちょっと見えないじゃない?昨日発表になったけど雪まつりのまた大雪像⁹⁾なくなったりだとか、今年に関して来年に関してもちょっと雲行きが見えないところもあるので、それをじゃあどうやって…。
 でも!今年よりはちょっといいかなって気はするんだよね。じゃあどの範囲でできるのかっていうのをみんなで検証していかないといけないし、6月やるための準備みたいのを、代替イベントも含めて、やっていかなきゃないし、チームも稼働させていかなきゃいけないってやっぱ思ってるんだ。練習しないことにはお披露目できないから、それを怖がって止まってたらできないわけじゃない。やらないほうが楽なんだもん。リスク抱えないから。でも、リスク抱えてもいいから動き出さないと、できない、できる雰囲気にはなっていかないので、ここを支部長含めて支部を動かしながら変えていかなきゃいけないんだろうなっていうのをなんとなくこの間から考えてはいるよね。チームだけではもう無理だなって思った。

8)耕作さん:(一社)YOSAKOIソーラン祭り組織委員会部長、伊藤耕作さんの事。第13回、第14回のYOSAKOIソーラン祭り学生実行委員会の代表も務めていた。のちに出てくる伊藤くんも同一人物。
9)雪まつり:さっぽろ雪まつりのこと。毎年2月に開催される。

YOSAKOIソーランとの出会い



僕がYOSAKOIソーランにかかわったのが、前もなんかブログとかに書いたことあるんだけど、実は僕広告代理店にいたんですよ。もともと広告代理店にいてですね。広告代理店の中の仕事っていっぱいあるじゃないですか、営業とか、総務とか、企画とか。僕は大学卒業して企画の部署に実は配属されたので。企画の部署に配属されて、その中でもイベントプロモーション部に入っていたんですよね。新札幌会場¹⁰⁾を運営するところから、実はYOSAKOIソーランにかかわるようになって。当時はSTVラジオ¹¹⁾さんとか、TVH¹²⁾さんとかがスポンサーでついたんですよね。YOSAKOIソーランがすごい伸びてる時期で、第4回とか5回とかの時期なんですよ。すごい伸びてて、そこの会場をスポンサーつけて運営するということになって、やり始めたっていうのが初めてで。本当に(昔は)YOSAKOIという名を借りたイベントをやってたんですよ。
 (それ)が最初で、次2年目の時に、実はこの代理店にいたら、JR何とか会場¹³⁾とか、丸紅シュヴァービング会場¹⁴⁾とか、ものすごい、この代理店の中で会場を運営することになっちゃって、6会場か7会場やることになって。
 そしたら長谷川岳¹⁵⁾さんっていう創始者から「担当者を出せ」ってことになったんだよね。要は、全員別々の人が来ても、1個の会社なのに話が通らないと。会場運営の責任者を出して、そいつを代表で話を聞いたら、全会場に同じ情報が伝わるからっていって、責任者を出してくれって言ったときに、長谷川さんと年が近いし、若くていろいろ下手に出ていろいろできるんじゃないかってことで僕が抜擢されて組織委員会に入ったんですよ。
 なのでもともと僕、組織委員会の名刺持ってたんですよ。会場運営委員っていう名刺を持ってて、組織委員会に席もあって、要は会場を運営することだったり。それを3年くらいやって、会場も運営したんですけど。会場運営というものはYOSAKOIソーランが伸びていってどんどんいろんな企画をやり始めたときに、会場運営担当者の1人として僕は組織委員会に入って、学生実行委員会の方々と一緒にやってたんですよね。かっち¹⁶⁾いるじゃないですか。高橋くん¹⁶⁾今、はち¹⁷⁾さん のところから独立した、かっちくんが学生実行委員の会場委員だったときに僕組織委員会にいたんですよ。それからずっとずーっとの付き合いです。彼が学生の頃から知ってる。

10)新札幌会場:新さっぽろ「あつこい」会場のこと。厚別区唯一の会場。
11)STVラジオ:北海道のラジオ局
12)TVH:テレビ北海道。
13)JR何とか会場:JR札幌駅南口会場のこと。札幌市内会場の一つ。アクセス抜群で買い物や食事の合間にも楽しむことができる。
14)丸紅シュヴァービング会場:
15)長谷川岳さん:YOSAKOIソーラン祭りの創設者。現在は参議院議員。
16)高橋さん(かっちさん):株式会社KproEventsの代表取締役社長。学生実行委員会のOBでもある。
17)はちさん:有限会社ステップス代表取締役社長の鉢 直人さんのこと。

学校の先生になりたかったから広告代理店に入った

 それが終わって、というか代理店をやめたんですよね。もともと僕学校の先生になりたかったんですよ。学校の先生になりたかったから広告代理店に入ったんですよ。これはなぜかっていうと、社会科の先生になりたかったので社会を知らないと駄目だなって思ったんですよね。高校の先生をみんな想像してみてわかると思うんだけど、最初に先生になった先生って大していい先生っていないじゃないですか(笑)。進路指導とか就職指導とかするのになんか説得力ないというか、大学出て試験受かってすぐ先生になった人ってなんか薄っぺらいなっていう風にずっと思ってたんですよ。だから一回社会に出てから学校の先生になった方がいいなって思って、その時に何屋さんでもできるのが広告代理店かな思ったんですよ。
 要は不動産とかメディアのこともわかるし、イベントのこともわかるし。いろんなお客さんといろんな付き合いがあるじゃないですか。CM作ったり、それこそ雑誌の広告作ったり、チラシ作ったり、イベントやったり、いろんなことができて、それが分かったから生徒から相談されてもこれってこういう感じの業界だぞって言ってあげられるなって思って。で、5年でやめようって思ってたので、ちょうどその5年でやめたんですよね。
 やめた時に、試験勉強をしようと思った時に、同じタイミングで辞めた先輩がいて、その先輩はもともと独立して自分の会社を作るっていう予定だったんですけど、「お前そうやって勉強だけしてても多分食っていけないだろ。」と。「だからアルバイトで企画書作ったり今までの仕事をアルバイト軽くでやりながら勉強したらいいじゃん」って言われて、「あ、そうっすね。じゃあ手伝います」って言って、その人と一緒に会社を立ち上げてやったんですよね。それがこう運の尽きでですね。
 ずっとそのままずるずるとその人に付き合わされたりだとか、次の人が辞めた時にその会社に引っ張られたりとかしちゃって先生になれず終いで。仕事が忙しくて、ずっと企画をしたり運営をしたりっていう仕事をやっていて、最終的には独立して自分で会社を作っちゃっうんですけど。(笑) その時に、もう広告代理店をやめたので広告代理店の代表になれないじゃないですか。窓口に。なので組織委員会も結局その場でやめたんですよね。

YOSAKOIソーランとの繋がり

 YOSAKOIソーランとの繋がりってそこで切れるかなって思ってたんですけど。VOGUE¹⁸⁾っていうチームが昔ありまして、もう解散したんですけど、VOGUEを作ってる前中億(まえなかはたる)くんっていうのが、それこそ学生実行委員だったんですけど。a la collette⁉︎4プラ¹⁹⁾っていう第6回か7回に大賞をとったチームがあるんですよね。AIR-G²⁰⁾がプロデュースして。そのチームのリーダーだった子が独立してVOGUEっていうチームを作ったんですよ。その時に「お手伝い一緒にしてくれないですか?」って言われて、「知り合いなので手伝おうか」って言って、チーム運営関わってからがチームをやるようになったきっかけなんですよ。
 もともと組織委員会で運営してたのが、そこで仲良くなった知り合いになったリーダーに頼まれて一緒にチーム作りをやり始めてからチームに関わるようになったんですよ。そこからズルズルと二十何年チーム運営をやってるのが現状です。

ーもともと踊りが好きだったからとかいう理由ではなく?

 これが全く違うんですよね。YOSAKOIソーランも当日新さっぽろで見たのが初めてなんですよ。それまで長谷川さんとかがプレゼンしにきてくれたんですよ。代理店にね。「こういうお祭りがあってこうでこうで…」って。でも全く正直いうと興味ないじゃないですか。(笑)わかんないし、どんなものか。当時ネットなんてなかったですから、ビデオ、VHS²¹⁾っていうのを持ってきて見せられるけどもうよくわかんないんですよ(笑)。「これの何が面白いんだろう」みたいな。
 イベントやってみて初めて、「あっ結構グダグダだな、運営が」って。今みたいに小慣れてないですから。だから、最初に新さっぽろを運営した時って、大通パレード²²⁾をやり始め時と近かったので。で、会場数もどんどん増えていくっしょ。学生がスケジュールを決めてるじゃないですか。今みたいな感じじゃなくて、1時間遅れとか2時間遅れ当たり前なんですよ。チームも来ないとか普通だったの。「次のチーム来てないんだけど」みたいのは当然で、したら繰り上げないといけないから、次のチーム交渉しに行って順番繰り上げたりだとか。本当に小慣れてないイベントだったので、かなり各会場混乱していた時期だったんですよ。
 で、そういうのがあって、いろいろと反省点が出てくるじゃないですか。会議で。それを均していく人たちが組織委員会や学生実行委員にいて、スケジュール組みをどんどんちゃんとやるようになったんですよ。それまで本当遅れるの当たり前。
 大通パレードの2回目の時なんて、それこそあれですよ。開始して2時間ぐらいでもう3時間遅れとかでしたからね。これなんでかっていうとパレードっていうものをみんな知らないんですよ。「パレードって何?100m進むってどういうこと」みたいなのだったりが、みんなわからないんですよ。で、最初にそれを見てルールを説明するじゃないですか。ルールを説明するけど、みんな「わかったわかった」っていうけどわかってないのさ、体感として。

 なぜかっていうと、ステージバージョンしかみんな踊ってないから。それをただ進めばいいんでしょみたいになってるんだけど、そんな簡単じゃないんです、実は。これを高知²³⁾の人はなんでできるかっていうと高知はパレードしかないからなんですよ。ステージ会場って1会場しかなくて、ほとんどパレードなんですよ。だから進む振り前提で作る。だけどソーランは進む振り前提で作れなくて、止まって踊る振り前提で作ってるから、みんな進めないんですよ。「お願いします」ってドンってスタートしてから5m進んで終わるチームとか結構ザラだった。「50m超えなきゃダメだよ」とか言ってもできないんだもん。「何mほんとは進めるの?」っていうのを聞いてから進めたりだとか。そこからすごく時間がかかって今があるって感じなんです。だからみんな見たことないからわからないですよ。パレードっていうのが何なのか。
 今は何となくわかるじゃないですか。ケツが50m入りましょうだとか。先頭100m行きましょうだとか、でももともとそういう発想がみんななかったから、はじめに考えてたら最初にドーンと30mくらい走るチームとかあったんですよ。稼がないといけないから、進む振りなんて作ってないから。最初にわあーって隊列組むためにスタートしてうわーって走っていって、30mたったらまたそこで踊って、また20mくらい進んで、走って、隊列組んで、みたいなチームが結構多くて、そうすると桟敷席²⁴⁾のお客さんからすごいクレームくるんですよ。はじにいた人からすると「一瞬でいなくなったんだけど」みたいな。「後ろ見て踊ってるだけで、こっち全然見えない」みたいなクレームがすごくあったりとか。そういう意味で言うとチームもこなれてなかったし運営もこなれてなかったっていうのがお祭りとしてすごく初期の頃の課題だったんじゃないかな。

―まだ作ってる段階でしたか?
 ほんとそうだったよ!だからみんなこう手探り。学生も高知に行ったことある人はいるけども、実際チームを作ってる人って少ないんですよ。だからわからないのさ。高知の先生が振りをつけてたらそれってできるんだけど、北海道の先生もよさこいってわからないんですよ。だから踊りを作ればいいんだろっていうけど、100m踊る踊りなんて作らないじゃないですか。ダンスの先生なんて、スタジオで踊って、ステージで踊ってぐらいしかないから、パレードっていう感覚もないので。高知まで勉強しにいく人なんていないので全くみんな分からない状態でやってた感じでしたね。
 それもやっぱりね、こなしていったり、説明したり、経験を積んで、今がある、感じになってるので。もともとはすげぇ混乱した状況から始まりましたね。だからスケジュールもめちゃくちゃになるし。うん。

18)VOGUE:かつて存在していたYOSAKOIソーランチームで、正式名称はVOGUE038。2014年6月8日をもって解散した。公式ホームページ
19)a la collette⁉︎4プラ:札幌市のファッションビル4丁目プラザが結成したチーム。
20)AIR-G:北海道のFMラジオ局。
21)VHS:Video Home Systemの略で、日本ビクターが開発した家庭用ビデオ規格。
22)大通パレード:大通南北パレード会場のこと。土曜日には本祭の一次審査の会場にもなる。
23)高知:YOSAKOIソーラン祭りは高知県のよさこい祭りにルーツを持つ。
24)桟敷席:大通南北パレード会場の5,6,7丁目に設置される有料席。無料の立見席とは違い、座った状態でパレード演舞を間近に見られる。

あの頃のソーラン祭り

 学生とも近かった、歳も近かったのもあるので(笑)。近かったのは近かったんですよ、実際のところ。チームとも、正直いうと今よりも近かったんですよ。何かって言うと、チームの立ち上げの時から学生実行委員が協力してるんですよ。これが1市町村、当時は212市町村あったのかな、北海道。市町村合併の前なので。それに1市町村に1チームずつ作れっていうのが命題になってて、学生実行委員の。そうするとわざわざ212市町村にアポイントを取って、人を集めさせて、商工会議所とかに、現地の。そこで学生実行委員が説明にしにいくんですよ。「YOSAKOIソーランとはこういうものです」みたいなのを。「町おこしとかを含めて一緒にやりませんか」って。学生実行委員が踊りを教えに行って。札幌にチームを作っていざ出てきてくれたら、その担当として1人必ず学生実行委員もついて札幌市内を誘導してたりする。だからチームの立ち上げから、YOSAKOIソーランなんてみんな知らないから、それを学生実行委員が行って、「じゃあお前〇〇町担当な」つってそれをやらされてたの。

 「踊りとか振りとかどうするんですか」って「いや一緒に作れよ」みたいな。「曲とか…」、「じゃあ曲の先生いるから大島さん²⁵⁾とか紹介してあげて」。曲を作ったら、踊りとかもみんなで作ろうかみたいな感じで最初にそういうことを、チーム作りの基本みたいなのを学生実行委員と一緒にやってから、チームってどんどん自分たちいろいろ研究し始めたりしたので。そういう意味ではチームともすごく近かったよね。学生実行委員って。
 これは僕も30周年の企画でやって、伊藤くんと一緒にやってるスペシャルストーリーズ²⁶⁾っていう中で色々な人たちのお話を聞く時に分かったのが、結局ね、熱量がすごかったんだって。やっぱり。当時の人たちって、長谷川さん含めて。「お祭りをやろう」っていう熱量がすごくて、それになんかみんな動かされるんだって。思いとか。
 「実際そうやって来てみたらすごいアットホームだし、小さいお祭りだったけども、何か新しいことをやってる感じのパワーっていうかな、(それ)がすごくて、北海道の人たちもそれを『何だ何だ』って言いながら受け入れてくれた」って。「いろんなパワーがあって、それが来るたびにチーム数も増えるし、メディアもいっぱい追っかけ始めるし、”なんかわからないけど北海道ですごいことが起きてる”っていうような爆発力があった」って。「それに対する思いとか熱量が当時関わってた人たちはすごく熱かった」っていう言い方をされているので。きっとそうなんだろうなって。

 何もないところから立ち上げて、人を巻き込んで、地域の方々と年齢層を越えても仲良くなったりしてく環境って、きっと今とはちょっと違うのかなって。作られた今みたいこう、試行錯誤しながら今の形になったYOSAKOIソーランとはちがう。試行錯誤しえるときはパワーも必要だし失敗もいっぱいしたけどもそれが笑い話になってしまえる環境があったのかな。なんかこうチームにも勢いがすごくあった時期で、いろんなチームがいっぱいできてきてたんだよね。だからすごい、見てて楽しかったし、バラエティに富んでたというか。だからこう、「今年はどこが勝つんだろう」みたいなところも、全然違うジャンルから攻めてきたところもいっぱいあって、だから面白かったですよね。スポーツっていうジャンルの中でサッカーと野球が勝負するようなもので、今って野球で勝負してるようなもんだと思うだよね。なんとなく「YOSAKOIソーランっていうのはこういうもの」みたいなカラーが決められていて、吸い込まれてきて、全然違う発想からくるのって多分道外のチームが多いと思うんですよ。ソーラン節を背負ってないから。

 例えば嘉們-KAMON-²⁷⁾とかもそうだし、舞神楽²⁸⁾とかもそうだと思うんだけど。そういう全く違うところからの発想でくる人たちの方が、違うパワーがあるというか。でもあれがYOSAKOIソーランの良さ、よさこいの良さだと思うんですよね。「何でもあり」「結果いいものがいい」っていう、そういう何でもありな世界っていうのがウケた理由だと正直思っているので、自由なところが。
 最近この自由がなんとなく自由じゃない気がしてるんだよね。それは何かというと、30年経ってステレオタイプが決められて、「YOSAKOIソーランってこうじゃなきゃいけない、こうです」みたいな「これはYOSAKOIソーランじゃないじゃん」みたいなことネットで書かれたりとかするじゃない。チームとかも。でもそんなの関係ほんとはないのさ。だって、鳴子持ってソーラン節入れてたらそれはもうYOSAKOIソーランのチームだから。それの自由さがウケたものなのに、変にそういう風になってしまっていて、そうすると表現も限られるし、だったらあれならやらなくていいやって人たちが俺は増えたと思うんだよね。

25)大島さん:YOSAKOIソーランの曲を制作されている大島隆二さんのこと。YOSAKOIソーラン祭りに参加している多くのチームの楽曲を手掛けている。公式ホームページ
26)スペシャルストーリズ:YOSAKOIソーラン祭り30回を記念した取り組みで、YOSAKOIソーランに関わる方々にお話を聞くもの。
27)嘉們-KAMON-:大阪を拠点に活動するチーム。公式ホームページ
28)舞神楽:REDA舞神楽のこと。千葉県船橋市を拠点に活動するチーム。公式ホームページ

井原水産&北星学園のプロデュース


 僕は学生でいくと、「井原水産&北星学園 ²⁹⁾」のプロデュースを十何年プロデュースやってるんですけど、北星の子達もある時期から急に「法被を着たい」と言い出したんだよね。それまでの北星なんて過去のビデオとか見てるとわかるけど、ほんと自由なのさ。サファリとかチャイナとか意味わからないこといっぱいやってて。でもそれが学生の良さというか。とにかく楽しそう。で、衣装とかも最初に預けられる衣装があったら、今だったら許されないけど、どんどんどんどん本祭中に変わっていくの。派手にいろんなものくっつけたりだとか、袖切っちゃったたりだとか、すごい自由にいっぱいやっちゃうんだわ。お祭りをすごい楽しんでて、なんかわかんないけどパワーがあって、それが許されての。自由で。
 でも今っていうと、今の子達はみんな「半纏≪はんてん≫が着たいです」、「法被がきたいです」、「『和』をやりたいです」みたいに言い始めるというか、その良かったところがなくなってる感じがして。その、自分達のいいっていうのが1個のカラーしかないというか。
 なんかその辺が、嫌で、2018年から北星もちょっと変え始めたんですよ。そういう風な感じでやったとしても未来はないなって思っていて、もうある程度、井原水産&北星学園っていう形はこの十何年間で作りきってるので。次の形に進化をしていかないとダメだから、学生だからできることをやろうっていう風にして、ちょっと踊りに特化しているものを最近北星やり始めてるんですよね。2018年から。「和」だけではない、ちょっと「洋」の要素を入れて。最新の踊りっぽいものをちょっとぶっ込んで。っていうのを学生の中だけでも異色なものを作り始めてるのも挑戦というか。そういうのもまた評価されれば、そういうチームが増えていくのも楽しいなって思って。

29)井原水産&北星学園:北星学園の学生によって構成されるYOSAKOIソーランチーム。公式Twitterアカウント

オリジナルが勝つに決まっている

 なんか同じじゃない?これまた、いっつもみんなそうなんだけど、太鼓もってさ、いや、うち(倭奏)も太鼓持ってるから言えないんだけど(笑)。それこそさ、エイサー太鼓もってさ、半纏着てさ、踊りキレキレで踊っててさ。でもそういうチームっていっぱいいるわけじゃない?ファイナル³⁰⁾ にもいっぱいいるわけじゃない?そこで勝負しなくていいのに、と思うのさ。全然違うことやればいいんだけど、そこを全然違うことで評価されるっていう軸が今ないんだと思うんだよね。みんなも固まってるから。本当にいいものって多分違うと思うの。

 今学生が本当にかっこいい衣装着ようと思ったらもっとあるとはずなんだよね半纏なんかよりもっとかっこいい衣装なんていっぱいあるはずだし。例えば俺東京でGARAN43/35°(ガラン)³¹⁾っていうチームやってるんだけどGARAN43/35°だってまさにそうなんだよね。
 最初に言われた時は、「どんな和風をやりますか」って言われたんだよね。「ソーランで勝つためにどんな和風をやったらいいですか」って言われて、「和である必要あるの?」「え、なんでですか」って。「東京っぽいものやろうよ」って。「どうせならば、かっこいい。東京って最先端じゃん、日本の。とんがったかっこいいので、東京しかできないのやろうよ」って言ってできたのがあれ(GARAN43/35°)なんだよね。
 そういう発想ってどこにもないじゃない。そのどこにもないのにみんな惹かれるっていうか、「いいね」ってなるのに、どこにでもあるのを作るってプロデュースする意味がないっていうか。倭奏をやってる俺がやってるから「和風になるんでしょ」っていうのよく言われるけど、全然違うんだよね。北星でも、違うし、倭奏でもちがうし、GARAN43/35°でも違う。他のチームをやろうとしたら、プロなので、全然違うものを作る。その人たちと相談しながらどんなものがいいんだろうって考えながら作るし。出ないと面白くないじゃない。倭奏の2番手を作ってもおもしろくないし。GARAN43/35°の2番手を作っても面白くない。比べたら、オリジナルが勝つに決まっている。
 だからそういうバラエティに富んだ世界っていうのを、YOSAKOIソーランで、それが魅力だったと思ってたんで。そこをチームをもうちょっとやっていかないといけないのかなって思ってますね。何でもいいと思うのさ。正直いうと。それが魅力だったと思うし、それはこう固定されて、「どうせまたここ勝つんでしょ」って「またおんなじだよ」とかそれは飽きることの原因にもなるのかなって思っちゃって見てる人の。そうじゃない「こんなのもあるんだ」ってなったら、詳しくはGARAN43/35°の話とストリートで踊ってる子たちが「これだったらYOSAKOIソーランやりたい」って思わせたら勝ちだなって思った。
 普通の人がYOSAKOIソーランって言われると、よさこいは鳴子もって半纏きて和風の何か踊りで、暴走族みたいので、金八先生がよこで踊ってるみたいな、決められたソーラン節どっこいしょどっこいしょって網をひいて海があってってことなんだあってみたいなことなんだって思った。とか、札幌市内とかでも、こんな楽しいお祭りで、そんな地域に密着してなくても、 自分たちでサークル活動として表現できるならやってみようよってなったんだと思うのさ、昔は。でもなんか今って、いいチームがいい作品を作れば作るだけちょっとプロっぽいというか。
 「あ、この中に入るには相当練習しなきゃいけないんだ」とか、「じゃあ見てるだけでいいかも」って思ったり、すごい壁が高い気がするの。俺の中ではね。昔と違って。この壁を取っ払わない限りは、新規参入してこないと思うのさ、みんな。決められたすごいチームに覚悟を持って入る人じゃないと。そんなのお祭りじゃないじゃない?
 だって、そしたら決められた人で、踊れる人しか入れないチームの方がまだ多くなっちゃって、そこに人が集まる仕組みになってちゃうとこれに未来はないとい思うんだよね。当然全然そうやって頑張るチームもあってもいいんだけど、そこにさっき言ったように多様性がないと。一個のカラーがそれがYOSAKOIソーランになっちゃうときっと誰も新しく入らないし、やろうと思わない。一部の人間、マニアだけがやりたい、ただそれが踊りに自信あったり、昔どこどこで踊ってたから、最終的にはどこどこのチームに入りたいという人しかいなくなってしまう。
 そしたらもう元々狭い世界がもっと狭くなってちゃって、その子達が踊り子をやめたら誰もやらなくなるお祭りになっちゃうしょ。それが嫌だなって最近思っているので、もっと多様性を求めるというか、それはホストであるチームが一番それがわかりやすいので、その多様性っていうものを何かこう違う形で表現したいというか。賞というものに対して、賞だけを追い求めなくても100人残るチームがあれば勝ちだと思っているで、最終的にはみんな賞を取って有名になって、人が増えて、メンバーが増えてみたいな感じっていうストーリーを描くと思うんだけど。そんなのもう俺は破綻してる事業だと思うので。
 実際そういうチームなんてないじゃない。U40³²⁾から勝ち上がって、100人になったチームって見たことある?ないんだよ。倭奏だけだよ。それは俺らはU40を、組織委員会が作った時に絶対成功事例作んないとなって思ったんだよ。それを結局はみんな40人で満足しちゃう。もっと群をやりたかったんだけど、「いや地方じゃ無理なんだよね」ってなったり。
 道外のチームが強い理由っていうのは、もともと100人とかいるんだよ道外のチーム。でも40人とかに絞ってきてちゃんとそれを表現できる人たちだから。そういうチームと40人になっちゃったチームが勝負したって勝てないじゃない。
 ここがやっぱり志の差だって思ってて、人数が少ないのを否定するわけではないし、それは仕方ないってわかってるんだけど、「ただじゃあどうやって増やせばいいの?」っていうところの”どうやって”が賞という結果以外のもので増やしていくことを考えた方がいいと思ってるの。一年に一回の、たった一回のお祭りで賞を取った取らないで、人数が左右されてしまうってすごいじゃん、正直言うと。結果が出なかったら人は集まらないのって話になっちゃうし。
 本当にいいチームって、多分高知行ったらわかるんだけど、結果出てなくても人数いるのさ。なぜならば楽しいから。原点がそこなんだよ。その原点を最近みんな忘れてるというか、「みんなで楽しく札幌で自己表現をして、自分たちのものをやって、打ち上げ楽しくやって、札幌で美味しいもの食べて、オラが町の自慢もちょっとしてきて、で、帰れたよー」で十分いいんだもん。本来ならば。
 その会場を学生実行委員や、組織委員会の人たちが用意してくれて、最高のステージとか最高の感動で踊れたら、本当はそれで良かったはずなのに。なんかちょっと違う方向に今みんなチームもそういうふうにいってるから、そのチームの感覚も変えていかなきゃっていうふうに思ってるんだよね。このコロナだからこそ。本当にいいチームって、結果じゃねえんだぞって。
 よく僕の中では最近使ってる言葉で「踊り子満足度」って言うんだけど、踊り子がいかにこのチーム楽しんで満足してるかによってそこのチームに残るか残らないか。それは結果が出てたらそりゃ残りやすいかもしれないね。ファイナル行った、楽しかった、あのステージで踊れたってなるけど、別にファイナル行かなくても、今年の作品よかったじゃん、みんなで楽しかったじゃんってなって来年もやろうって8割9割残ったら、もうその時点で勝ちだと思うんだよ。
 そういう文化っていうのを新しく、組織委員会も学生実行委員も、チームを、作っていく、今から。でないと、なくなると思う。結局いいチームの人って頑張るじゃない?でもそのいいチームっていうのは賞を取るのがいいチームだっていう感覚が今すごく強いから。「でもほんとは違う」って思うんだよね。出て楽しいのがお祭りだし、それをみんなが分かった上で進めないと、誤解しちゃうというか。
 ちょっと言い方悪いけど、トップチームとか有力チームっていう言い方するけど、じゃあ他のチームって無力なんですかって話になっちゃうじゃない。でも違うんだよね。お祭りに出てるチームって分け隔てないし。その辺をもうちょいなんかこう学生実行委員の人たちも共有したりとか。昔はそんな感じだったんだよ。だっていいチームとかわからないかったんだもん。三石³³⁾から来てくれてありがとうございましたって感じだったし。
 なんかさ、賞以外の選択肢をもっとフューチャーするような企画があったらいいのにな、っていっつも思うんだ。結局何が楽しいかっていうと、踊ることが楽しくてやってるから。やってるわけだから。ってことはたくさん踊れたらいいと思う。なぜファイナルをみんな目指すからっていうと、踊る回数が純粋に増えるからなんだよね。日曜日の夜までたっぷり踊れるじゃん。そこをやっぱりみんな自分たちで勝って、勝つことによってそこの会場を増やせるのがコンテスト。だからこそコンテストに夢中になると思う。お祭りを日曜の夜までたっぷり楽しむために。
 でもこれはお祭りの日曜日の夜まで楽しめるの会場が他にあったらどうなんだろうって発想があったとしたら、実はそうじゃなくても楽しめるかもしれない。だって早い人ってさ、日曜の昼間に結果が出たらもう終わっちゃう人たちいっぱいいるじゃない。したら、なんか満足はないところがあるじゃない。
 高知³⁴⁾のいいところって、発表って日曜日の7時くらいにどんと発表するのさ。よさこい大賞です、金賞です。金1です金2 ³⁵⁾です…。って。それまでの間ってみんなどこでも踊れる。どんなチームも。受賞しようが受賞しまいが。ファイナルとかないから。発表されたら、8時に代表者だけお城の会場に、高知城の会場に来てくださいっていわれて表彰されて、終わり。その代わり受賞したチームは次の日の全国大会に出れるとか、その次の年の前夜祭にいわゆるYOSAKOIソーランでいうソーランナイト³⁶⁾に出れるとかっていう特典はつくんだけども、基本的に本祭の2日間のびっしりはどんなチームも踊れる。だからなんか不満がないっていうか。もう踊りきったよねって明日は見ようよみたいに。
 その辺の価値観とかは高知のやっぱり良さだと俺はすごく思っているので、だからそういうところも(YOSAKOI)ソーラン(祭り)にちょっとでも加わったら、最後にもう一回踊れる会場あるよね、ってどこかにぶっこめて、みんなで最後に札幌で一回、もう一回踊れるからそれ踊って帰ろうよってなったら満足して帰る人多いと思うんだ。順番によってはもしかしたら踊れる会場があるかもしれないとか。そういう企画的なものをどこかで作ってワオドリ³⁷⁾なんかでもいいと思うんだけどさ、会場があったら面白いなと思うし、それでお腹いっぱいになって満足してくれて来年も来ようって言ってくれたら、それこそラッキーじゃない。
 なんか新しい「賞」とは違う価値観というものを学生実行委員の人たちと一緒に作っていきたいなって正直思ってる。多分そういう人たちってさ、満足すると思うんだよね。俺が作った企画のなかで、今も語り継がれてるものがあるんだけど、一次審査員賞演舞会³⁸⁾ってあるっしょ?ガーデンパーク会場³⁹⁾でやってるやつ、知らない?それがあってこれは結構ウケた。サッポロビールさんと一緒に作った企画なんだけど、サッポロガーデンパーク っていう会場が、それこそファイナル・セミファイナルのチームって西8丁目で踊れるじゃない。でも一時審査員賞のチームって、ブロック3位のチームってそういうのないんだよね。発表だけだったの。それが、かわいそうだから、そこを踊らせる会場にしましょうって、ガーデンパークに一次審査員賞演舞会っていうのを組織委員会と一緒に、サッポロビールの企画としてたてて、やったんだけど。これがすごい当たってて。
 なぜかというと西8丁目⁴⁰⁾には入れないけど、実はガーデンパークって西8丁目のまんま(同じように)踊れる。広いから。最後に自分たちも会場作れたってすごいウケてて。最初サッポロビールの人も順位つけたほうがいいんじゃない?ってなったんだけどそれはもうやめてくださいって。順位必要ないんすよ。ここでは最後に踊る会場でいいんですって言ったら、最初にやった企画でもうみんなボロ泣き。それを見てサッポロビールさんのスポンサーさんも喜んでしまって。これはいい企画だわって。お客さんもそれを見に来る人がいっぱいいる。学生チームとかそこで終わりだから、お祭りが。そこにこう感動とかさ、やっぱりなんだろ、生まれるのさ。だからそういう新しい価値観をいっぱいこう作って行ったらYOSAKOIソーランってすごい面白いってふうにもう一回なるのかなって思うし。
 いうても、もう俺もおじさんだから、企画者だけど企画をするにあたって差があるような気がしてるの。今の子たちがウケる企画なのかどうかとかって。だからそう自分の中でも疑問なんだよね。疑問っていうか悩んでるところもあって。ギャップは絶対出てくるじゃん。北星のプロデュースはやってるんだけど、メインのプロデューサーって2018年から降りたのね。で、実は10個下の後輩が一緒にやってるんだけど、その理由っていうのがまさにそうで、学生は変わらないんですよ、入れ替わるだけで年齢が。でも僕はどんどんどんどん歳を取るじゃないですか。その時に、学生から提案されたものが「これはかっこいいのか?」って疑問に思うことがいっぱいあって、それはきっと若い頃だったらそれがなんとなくこうあってっていうか修正できるんだけど、年取ってくると、取れば取るほど幅が小さくなってくるのか。これが合わなくなってきてるんじゃないかなって。今の学生がやりたいものと、勝つものと、新しいものとっていう3つのバランスがちょっと悪くなってる気がしてて。そういうものも含めて、今の学生の人たちとそういう話をしたいなって思ってる。だから自分の独りよがりじゃない企画になったりするのかなって思うんだよね。

30)ファイナル:本祭5日目に行われる。一次審査の各ブロック1位チーム及びセミファイナル審査1位チームの中からYOSAKOIソーラン大賞を決定する。
31)GARAN43/35°:下畑さんがプロデュースを担当し、東京を拠点に活動しているチーム。公式ホームページ
32)U40:U40大会のこと。本祭の審査区分のうち、祭りに40人未満で参加するチームを対象とした枠組み。
33)三石:旧三石町。現在は新ひだか町にある地名。
34)高知:ここでは高知のよさこい祭りのことを指す。
35)よさこい大賞、金賞、金1、金2:高知よさこい祭りはよさこい大賞が1チーム、金賞・銀賞、それぞれ3チームが選ばれる。そのほかにも審査員特別賞、地区競演連合会奨励賞、地区競演場連合会地方車奨励賞などの賞がある。
36)ソーランナイト:本祭3日目に行われるイベント。前年度の受賞チームを中心に、海外からのゲストチームなどが次々に登場する華やかなステージ。
37)ワオドリ:札幌市内会場の一つ。大通西7丁目に設置される参加型会場。子供から大人まで、誰でも気軽に飛び入り参加可能。
38)一次審査賞演舞会:ファイナル・セミファイナルに出場できなかった、各ブロック3位のチームがその年最後の演舞を披露するステージ。
39)ガーデンパーク:サッポロガーデンパーク会場のこと。サッポロビール園、サッポロビール博物館、Ario札幌、北海道日本ハムファイターズ練習場などの施設で構成されるエリアで、サッポロビール園の情緒あふれる赤れんがを背景に演舞が披露される。
40)西8丁目:西8丁目会場のこと。YOSAKOIソーラン祭りのメインステージがある会場で、参加全チームが演舞を披露する。

昔はチームも運営者も近かった 

 なんか、一番大事なことって、耕作と最近色々さ、このコロナになってから企画もそうだけど、いっぱいいろんなこと提案していっしょにやってるけどさ、わかってることがやっぱりあって、これはもう昔の学生実行委員もそうだったんだけど、チームも運営者も近かったんですよね。みんな自分たちの祭りっていう感覚だったの。新しくできた自分たちの祭り。だから「なんとかしないと」って。最初は長谷川さんに巻き込まれたりとかしたんだけどさ、でも作っていく面白さもあったし、なんだろう、それをこう子供がいたずらしたものをバンッて出す楽しさもあったし、今年こんなの作ったんだよって。それは学生実行委員もそうだったし、こんな企画作りました!って今年のソーラン祭り今までと違うこんなのありますみたいのだったり。
 例えばそれを楽しみにみんなでじゃあイリュージョンやろうとか、いろんなこと、ディズニーきたよとか。なんかそういうのみんなで分け合いながら、自分たちの祭りを毎年毎年こうアップグレードしてきたっていうのがあったときに、最近やっぱりこなれてきていて、その感覚ってちょっと遠くなったなって思ってるんだよね。お祭りってやっぱり見にくる人ががいて、運営する人がいて、出る人がいないと成り立たなくて、これがそれぞれ独りよがりになったら、ただのイベントだと思うの。主催者が金儲けのために人を呼びたいから、勝手に企画して、出る人たちは賞をとりたいとか、いろんな目的があるんだけど、別に祭りを盛り上げるとかじゃなくて、自分たちのやりたいことの実現のためだけにお祭りに出る、見てる人もいいもの見せてくれるんでしょとか、お金払ってるんだから、桟敷席買ったんだからいいもの見せてくれるんでしょっていう状態。

もう祭りじゃない

 そんな祭りってもう祭りじゃないって思うんだよね。そこになんかこう、言ったらあれだけど愛がないっていうか。お祭り対しての愛もないし、育てる気持ちもないし、一緒になんか作っているっていう感覚も共有もない、だと思うんだ。これって一番なんかダメなんだと思うのさ。遠くなりすぎても近くなりすぎてもダメなんだけど。チームともお客さんとも分かり合えなきゃダメな気がするの。
 「いや、見れないんですよ、ごめんなさい。立ち止まったらダメなんですよ」ってよく学生実行委員が言ってるよね、通路でね。怒られるから公園管理課とかから。でもみんなはわかっちゃってるのさ、きっとそれは。「なんでよ」ってクレーム言うけど。でも「そうだよな」って人かは中にもいっぱいいて、それが一緒にお祭りを作ってるってことなんじゃないかなとも思うの。分かり合えるというか。だって学生ずっと謝ってなきゃないんだよ、お祭りやるたんびに。いやでもそれは昔はあったし、その気持ちがすごくチームもあったと思うのさ。やってもらっていてほんも有難いというか。だからルールを守るし、ルール違反したらダメじゃないですか。そういうところをちゃんともっと話せたような気がする。

-辞めようと思ったときはありますか?
 めっちゃ思ってるよ(笑) ちなみにいうと。あーでも僕はそのもともと前中らのVOGUEっていうチーム、VOGUEっていうのは Vogue la ga-lereっていうのを2年やってて、ここからVOGUEってチームになったんですけど、そのタイミングでいろんな経緯があったんですけどvaia⁴¹⁾っていうチームを作ることになったんですよ。名前が似てて申し訳ないんですけど(笑)。
 vaiaっていうチームは元々合同チームだったんだよね。乙部と八雲町と浦幌町の合同チームだったんですよ。その振付師っていうのがVOGUEの先生と一緒だったので、この事務局をやってくれって言われて、チームの事務局をやることになったのが実はきっかけだったんだけど。このvaiaをやってる時は辞めたかった。終盤とかも、それは何かというと、僕も若かったのもあるし、自分たちがやるためにスポンサーをやっぱね、参加費を安くするためにスポンサーチームにしてるんですよ。名前の冠をしてもらって、その分お金もらって、だからそれを一人一人還元していく、それで参加費を安くする。っていうような仕組み。
 相手からしたら名前が売れたら、それこそ企業としてみたら、広告費を使ってるような感じなので、倭奏のグラフィックホールディングスさんもそうですね。っていう仕組みを使ってるからこそ結果を出さなければならない、プロとしてお金をもらってるんだから、っていう穴にハマってしまった時があって。そうすると、それこそ楽しめないんですよ。勝つためのことばっかり考えちゃって。で、そういうふうな人たちが集まってくるのさ。やっぱり。そのチームカラーで勝ちたい子達が集まってくる。でもそういう作り方してるとどんどんどんどん首が締まってくる、勝てなくなると。
 っていう時はやっぱりやめたかったし、実際10年やってやめたんですよね。チームを。辞めた時に北星の話が、もともとvaiaと被ってたんだけど、「じゃあプロデューサーやってくれ」ってことになって、プロデューサーをやることになったんですよね。単純な話でいうと、動画見て貰えばわかるんだけど、vaiaってとんがったチームだったんですよ。和洋折衷のもうほんと若者が好きな感じの。ちょっとYOSAKOIソーランの創成期のいきがったチームっていうか。ストライクゾーンがめちゃめちゃ狭いんですよね。その代わりマニアが好きで、だいたい100人集まるんですよ、負けても勝っても、それが好きだから踊りに来るようなチームだったの。
 でもこっちは勝つためにやっぱりやってるから、勝たないと苦しくなるのさ。チームを作り続けたときにそれこそ和風なものをやったら勝てるって思ってた自分がいたんだよね。俺和風やったら全然勝てるよ、俺が天舞作ったら勝てるよみたいなことずっと思ってたけど、vaiaでそれをやったら、それこそそれを求めてないからみんな。これが悩みになってて。「あーどうなんだろ、でもまあいいや解散しよ」、って解散して。

 北星のプロデューサーになったら自分が天神や天舞や夢想漣えさし作るんだったらこういうチームを学生で学生チームを北星で作ればいいっていうもののストライクを投げたらいきなりファイナルコンテストにいったの。それまで10年間携帯投票⁴²⁾でしか一回しか行ったことのないファイナルに、いきなりファイナルに行って、そこからファイナルコンテストに北星は行き続けるのさ。その時にまた悩み始めるのさ。「俺喜ばせたかったの10年一緒に頑張ってきたメンバーなのになんで、この球を投げなかったんだろう」みたいなことをやっぱ考え始めて、その時にやっぱり色々冷静なことを考え始めるんだよね。だから、作品のプロデュースすることってなんなんだろうとか、評価されることってなんなんだろうとか、そういうものをすごい考えた時期で。だから勝ちたい方向性とか、勝つべきにやることとかっていうのは北星ですごい学ばせてもらったというか。原点のvaiaよりもその次にやった北星で学ばせてもらったことがすごく多くて。

41)vaia:札幌市を拠点に活動していたチーム。
42)携帯投票:一次審査各ブロック3位チームの中で、観客からの得票数が最も多いチームがセミファイナル審査に進出する仕組みとなっていた。

倭奏を作った経緯

 なんで倭奏作ったかっていうと、25周年の時に、笑゛(じょう)⁴³⁾ に大賞取られたんですよ。愛知県のチーム。今までYOSAKOIソーラン祭りで道外チームで大賞を取ったことあるチームって知ってますか?
 実は30年の歴史の中で第1回のセントラルグループ⁴⁴⁾っていう高知のゲストチーム以外1チームもないんですよ。それが25周年の時に初めて道外の笑゛に大賞を取られたの。で、その時に北星負けたんですよね。予選で負けて。ファイナルパレードのチケットがもう大量に余ってて。「見に行かない」ってみんなが言ってるから、したらじゃあスタッフからもらうわって言ってファイナルパレード見に行って、桟敷席で。
 圧倒的に笑゛がよくて、その時に僕はこう、これ使わないで欲しいんだけど(笑)。天神⁴⁵⁾とか夢想漣えさし⁴⁶⁾に祈っちゃったの。いい作品であってくれって。「25周年で(道外のチームに)大賞とられるなんてすごいやだな」って思って。北海道のチームに祈ってる自分に、途中からだんだん腹が立ってきて。「え、なんで俺は自分でやらないんだろう」って。そういうことを人に任せるような人間になったらダメじゃないみたいに思って。
 「あ、じゃあこれ、自分でチーム作るしかないな」って思った時に、違う価値観で作ろうって思ったんだよね。それはやっぱり一回YOSAKOIソーランを離れた自分だからわかるところがすごくあって、辞めたら戻って来ないんですよね、踊り子って。戻れないんだよね、みんな。
 例えばなんけど、学生もそうだけど、北星の子達はYOSAKOIソーランを学生時代に辞めたら、9割もうやらない。学生チームで満足しちゃってるから。残り1割は天神、天舞、夢想漣えさし行く。なんかわかるっしょ?他の学生チームもそうじゃない?どうせ踊るならってそういうチームに流れちゃって、残り9割の人はほとんどやらないのさ。
 「この環境良くねえな」って思ったのが一点なんだよね、ずっと北星でやってて。これを5割くらいみんなどっかのチームいろんなチームに社会人チームに入らないと人も増えないって思ったのと、もう一個は社会人チームで、職場の環境もあるし、結婚とか出産とかあると、離れちゃうんだよね。
 うちの奥さんもそうなんだけど、踊り子だったんだけど、離れた時に戻ってくるチームがない。ファミリーチームばっかりになっちゃうんですよ。それはファミリーチームを否定しているわけではなくて、「親子で楽しんでます」っていうチームあるんだけど、すごくバリバリ踊ってた人たちがもう一回バリバリ踊る。例えば30代になってバリバリ踊るみたいなチームに入れないのさ、子育てしたら。うちもそうだけど、今ようやく小学校に下の子が上がって、なんとなく嫁さんも時間ができた。「手もあと5年くらいかかるかな」って。中学生くらいになったら手かからないから。
 そしたら踊り子に復帰するまでに十何年かかっちゃう。でも30代後半とかで、例えばなんだけどね。20代中盤くらいで一回やめて、30代後半くらいに復帰して、そこからの踊り子人生って長いじゃない。正直言って。だって60とかやろうと思ったらずっとできるはずなのにみんな戻って来ない。なぜかっていうと、それを踊らせるチームがないから。選択肢がすごい狭いのさ。
 実際、1回やめた人達の激しく踊れない中で、唯一それが許されてるのが天舞さんなんだよね。天舞さんって平均年齢高いし、もうちゃんとそれがしっかりしてる。激しく踊らなくてもちゃんと賞っていうものを、勝負したい人達には、その気持ちもちゃんと満たしてるっていうときに、札幌の社会人チームってすごく狭いじゃん。札幌っていうか北海道の社会人チームって選択肢がすごく狭くて。なんかその選択肢を増やしたいなって。その時に踊んなくてもいいやって。
 だから最近倭奏にお囃子隊≪おはやしたい≫ってものがある。そこで楽器演奏だけのチームを作ってるんですよね。これだけで20人いるの。これはYOSAKOIソーランじゃなくて演奏しましょうよって。踊り子はできないんでしょ。したら笛やろうよみたいな。1から和楽器やろうよって、一緒にお囃子をしながらっていうのを作ると、踊らなくても参加できる人たちが増える。最近そのお囃子隊に入ってくる子たちがめちゃめちゃ多くなってるの。
 お囃子隊入ると元々踊り子だから踊りも練習するのさ。したらたまに「いや、(踊り子として)イベント出てもいい?」って言われるの。で、踊り子復帰できやすい環境になったり。それって選択肢が増えるわけじゃない?だから、そういうチームの感覚っていうのをもっと増やしたほうがいいのかなって思って、今。そこはチームで挑戦してるんですよね。踊らなくても良い選択っていうか、さっき言ってたことが全部それに直結してるような気がしてて、気持ち的には。まさにそうなんだよね。撮影すら楽しまないと。辛いことをやって、YOSAKOIソーランをやりましたって言ったら、このコロナの中でリスク抱えてみんな来てるのに一番つまんないじゃない。だから、やっぱり楽しいからみんな来るっていう風にしなきゃいけなくて。
 それは踊りだけじゃないんだよね。そのメンバーと会うのが楽しい。メンバーと飲み会するのが楽しい。メンバーと何かするのが楽しい。その何かの一個がYOSAKOIソーランであって、そういうふうになってないとダメな感じがしてるので。倭奏はそういう作り方をしてるから、8割残るんですよ、メンバー。それはもうほんと有難い話なので。倭奏が好きだから残る子が多い。それはもうそういう雰囲気をつくってくれてるメンバーの人たち、スタッフの人たちがいるから、成り立っているとは思うので。そこ(雰囲気づくり)を高知のチームとかはすごく上手にできてる。
 1ヶ月しか活動しないからね、高知のチームって。北海道みたいにAll through the year じゃないのさ。「1年間通してイベント出ます」とかじゃなくて、よさこい祭りのためだけに作るから。ほんとに何チームか以外は、1ヶ月前か、2ヶ月前から練習し始めて、よさこい当日に終わったらもう解散、だから。だからもう夏の思い出みたいな感じなの。あっちは。だから楽は楽なのさ。
 「今年どこでおどるー?」「衣装いいからこのチームいこうか」っていうふうに友達同士で話して行ったりだとか、「去年よかったからこのチーム行こうか」みたいな、「この先生の踊り好きだからこの先生今年このチーム」みたいな感じの自由に選べる。毎年サークルを変わるような感じ。

 昔はYOSAKOIソーランチーム移籍結構難しかったんだよ。今って結構移籍するじゃない。でもこれの感覚ってなくて、それこそまっことえぇ⁴⁷⁾さんとかは、チームを辞めたら2年間他のチームに行けないってルールあったりしたんだよ。だから地方のチームからすると、踊り子取られるっていうのが、すごい、言い方も良くないんだけど、致命傷になっちゃうから、縛りたいというか括りたい。
 でもこれって良いことではないんだよね。正直。だから今はどんどんどんどん変わっていかなければいけなくて、その発想も変えていかなければいけないのさ。やっぱりいい意味でも悪い意味でも作ってきた過程に高知っていうものの要素が少なかったんだと思う。

 これまたね、街の雰囲気もあって、高知って高々30万人都市ぐらいだから。札幌って190万人都市だから(笑)都市の規模が全然違うのさ。だから一個何かルールを作るにも、高知は案外ゆるくて良くて、それが町の中で許されるの。別に踊り子がたまってても、町の人からクレームはくるけど、でも祭りだから仕方ないって感じなのさ。その辺はやっぱり規模感なんだよね。札幌でやったらNGだけど、高知でやったらそれは。その緩さも含めてポジティブさもあるっていうか。札幌はそれやっちゃうとルール違反で公園貸せないよってなっちゃうじゃない。したらチームとしても結構びしびしやんなきゃいけないところも出てくるんだと思うんだよね。この辺はやっぱね、ちょっと町の規模感っていうのはあるなと。
 さっきみたいに、可能性や選択肢の話だと僕は思ってるので、お祭りが楽しいっていう原点はみんな共通してると思うから、これをいかに賞だけじゃないところに、持ってくかだと思ってるんだよね。その辺がこう楽しくないと、基本的にやらないからさ、なんかこうみんなから聞いてもさ、学生実行委員から聞いてもさ、「どこのチーム好きですか?」って言うと特定のチームしか俺名前でないと思う。YOSAKOIソーランで。これがもうダメだと思うんだよね。だから、見てないと思うのさ。昔の人たちはすごい見てたと思うんだ。だから、何かって言うと、それぞれのチームにいいところはいっぱいあって、その中で自分のセンスに合うところがあるはずなのさ。そういうのをもっと知ればもっと面白いのにな、って思う。

43)笑゛(じょう):愛知県犬山市のチーム。第25回YOSAKOIソーラン大賞を受賞した。公式Twitterアカウント
44)セントラルグループ:高知県を拠点に活動しているよさこいのチーム。公式Twitterアカウント
45)天神:平岸天神のこと。札幌市豊平区平岸を拠点に活動しているチーム。過去大賞10回、準大賞10回の最多受賞チームである。公式ホームページ
46)夢想漣えさし:枝幸町と札幌市を拠点に活動しているチーム。前回の本祭である第28回YOSAKOIソーラン祭りではYOSAKOIソーラン大賞を受賞している。公式ホームページ
47)まっことえぇ:正式名称は江別まっことえぇ&北海道情報大学。江別市を拠点に活動しているチーム。公式ホームページ

いいチームはたくさんある

 これはね、北星やってても思うんですけど、学生チームって自分のチームしか見ないんですよ。もしくは勝ったチームしか見ないから、いっつも会議をやってても、紛糾するのがその辺なんだよね。どこいい?こうでこうでこういうチームで。「でもそれって、違うチームないの?別に天神見たって天舞みたって、そんなんみんな見てっから。違う、この全体見た中でいっぱい200チーム出てるから、全国のいろんなチームYouTubeでも見れるじゃんって。その中で『ここのこういうところいいんです』って俺の知らない情報教えて来んない?」って。「そこにきっとヒントあるんじゃない?」って。みんなが知らないってことはここをもうちょっとやったら上手くいけるとか、でもそういうところ興味ないのさ。そこが多分探究心の差なんだと思うんだよね。
 なんかでもさ、それもまた声を大にして言いたいのが間違ってると思う。そこをパクったとしても結局はそのチームに勝てないわけじゃない。だって、それを見て作ったとしてもそれ以下にしかならないんだから。どんなに上手くアレンジしたって、オリジナルには勝てないじゃない。天神より上手く波ができるチームなんてないよ。どんなに上手くパクったって。その辺とかをわかったら違うところから発想が来るんだと思うんだけど、そこまで考えが至らないんだよね、みんな。だからそこまで好きじゃないのさ。俺からすると。いや、あんのよ。いいチームいっぱい。YOSAKOIソーランじゃなくてもいいチームいっぱいあるのよ。

 例えば僕の先生がやってる天空もめちゃめちゃいいチームだし、それを生で見たら構成とか全く入ってないけど、泣けるぐらいパワーすごい。だから昔セントラルグループが来た時にそう思ったみんな思ったんだろうなっていうことを感じさせるようなパワーっていうか、それが東京のチームなんだけどね。だから、いろんな全国のやっぱりよさこいやってるチームの中でいろんなカラーがある。高知のとらっくさん⁴⁹⁾っていう(よさこい)大賞取ったチームは、揃わせたらすごい綺麗だから、隊列美は天舞とか天神さんとかより数段上。回転すら揃っている。見たらわかるよ。調べたら、高知のとらっくっていうチーム。めちゃめちゃ綺麗だから。パレードさせたら物凄く綺麗。

48)天空:天空しなと屋。ダンス&よさこいクリエイター集団
公式ホームページ
49)とらっく:高知県のよさこい祭りを中心に活動しているクラブチーム「とらっくよさこい(ちふれ)」のこと。公式ホームページ

衣装へのこだわり

 ほにや⁵⁰⁾っていうチームも高知のチームなんだけど、このチームも軽いノリの曲だけど女の子好きそうな衣装着てんの。可愛い柄。ほにや さんって洋服屋さんなんだよね。洋服屋さんが作っているチームでものすごく人気。ほにやの衣装が着たいから、みんなほにやに入る。
 お祭りの時には可愛い衣装着たい。でもこれも一個選択肢だと思うって言って、倭奏で取り入れたのそこなんだけど、衣装が可愛くなきゃダメ。選ばれる、今の時代の選ばれるのものって、曲とか作品とかってものじゃないんだよね。やっぱり衣装がいい。どうせなら可愛いの着たいんだよ。だからやっぱり、衣装がいいっていうものを作らなきゃいけないのと、じゃあその衣装作る時に、どこに金をかけるか。
 最近のチームって、みんな衣装替えするじゃないですか。衣装替えするってことは裏側に生地を貼らなきゃなくて、リミットを作らなきゃならなくて、北星なんかもそうで、でもそれで生地代かかるんですよ。ってことは出た目の衣装をよくはできない。お金の配分的に、同じ3枚使っても。なので、倭奏衣装替えしてないんですよね。だから、出た目の衣装がいいってふうにするために、そこにお金使うために衣装替えなんてしなくていい。むしろ衣装替えをしないために、楽器とか構成とか見せ方変えようみたいな感じにしていて。
 でもそれって天舞がそうじゃん。天神もそうだよね、法被脱ぐくらいじゃん。夢想漣えさしもそうだよね。だから、実のところ言うと、ちょっと研究すれば、そういうチームって踊りやちゃんと自分たちの武器を持ってるチームは、衣装替えしなくてもいいんすよ。てことは、お金のかけ方とかに関しても、チームの運営からすると出た目の衣装がちゃんと綺麗に作れるっていう。出た目の衣装にお金をかけれる。ちょっと研究するだけでいろんなヒントがある。衣装で選ばれるチームになる。
 だからうちとかは本祭でた後にめちゃめちゃ人が入ってくるんですよ。で、それは、YOSAKOIやってた子たちが、「この衣装着たかったんです」って言って、特に女の子がすごい入ってくるようになった。で、それは理由として、それこそみんなテレどま⁵¹⁾見たんだったら、常磐⁵²⁾っていうチームとか…知ってる?百花夢想⁵³⁾とか常盤ってけっこう準大賞取ったりするようなすごい、衣装もど派手ないい衣装なんだけど、いおり屋さん⁵⁴⁾ってとこが作ってるんですよね。名古屋の。そのいおり屋さんに倭奏も衣装お願いしてて、デザインは、こっちで作ってるんだけど。

 その理由がいおり屋さんの衣装って、いおり屋さんのチームって、SNSで一番写真撮られてるんですよ。見たらわかるけど、よさこいって検索するといおり屋の衣装ばっかり。ぶわーって。名古屋で言ったらkagura⁵⁵⁾とか常笑⁵⁶⁾とか有名。だから、いおり屋さんの衣装が今トレンドというかドレスみたいな和服だったり、それも女の子がすごく映えるような、男の子だったらかっこいいみたいな衣装。それを作ってる人とやりたくて倭奏を作った時に最初にその人にお願いした。
 今でいうと、GOGO’s⁵⁷⁾ がいおり屋 プロデュースのチームに去年からなったので、その前はずっと倭奏がやってた。それも何が今求められていて、選択肢として選んでもらいやすいのは、例えば衣装だったら、衣装のいいところと組んだ方がいいなって思うんですよ。やっぱりいおりやさんと組んでみてわかるのは、帯。あの帯はいおりやさんしか作れない。普通の帯じゃないんだよね。それこそ、うちらでいうとコルセット帯って言ってるんだけど、ちょっと形に立体裁断されてて、だから女の子とかちゃんとウエストがくびれているように見えるんですよ。
 俺は衣装大好きだから、形が和服でも綺麗に見えて、それが成立するようにできてるから、衣装作ってからが俺うるさいから、直しがうるさいから、辞める子がいるくらい(笑)。細かいですよね。丈揃えたりとかするかるね。これは乃木坂がそうなんですよ。乃木坂46 ってみんなスカートの丈揃ってるじゃないですか。写真撮ったら。背の高さいっぱいあるのに。あれなんでかって、あれが綺麗に見えるから。清楚に見えますよね。で、そういうのとかを研究して、倭奏も全部揃えさせる。これ何cmね〜って。全部衣装チェック日があって、着せて、どこに出しても可愛く見えるように、揃え方とかも3点そろえて合わせにしなさいとか、すごい細かく指示出して直させる。
 でもそういうのをやると、やっぱそれが好きな子たちが、入ってくれる。そうすると、それこそよく言われるのが「踊り子を集めるのが大変だ」ってチームいうじゃないですか。でも、あんまり努力してないと思うんですよ、正直。今みたいに、例えばなんですけど衣装一個にしても、こだわって、自分たちの中でお金ないんだったらどこまでこだわってやってるのかなとか。
 例えばSNSもそう。今はSNSで人を集める時代なので、チームでいうとそれこそ、写真なんですよ。いかにいい写真撮られて、そのいい写真を見た上で「あ!このチームで踊りたい」ってなったり、いい動画が載ってて「あ!踊りたい」ってなるかどうかなので。まさにだからカメラマンさんっていうのもすごく大事な要素なので、いいカメラマンをいかに自分のチームに寄せるか。

50)ほにや:高知県のよさこいチーム。公式ホームページ
51)テレどま:正式名称はテレどまつり。名古屋で開催されている日本ど真ん中祭りのリアル開催の代替策として実施したもの。
52)常盤:正式名称はよさこいサークル常盤。愛知県の大学生によって構成されるチーム。公式ホームページ
53)百花夢想:名古屋を中心に活動する社会人チーム。公式ホームページ
54)いおり屋:衣装制作・振付・映像制作などお祭りの総合プロデュースを行っている名古屋の会社。公式ホームページ
55)kagura:にっぽんど真ん中祭りを中心に活動する名古屋市のダンスチーム。公式ホームページ
56)常笑:愛知学院大学のよさこいサークル。正式名称は愛知学院大学常笑。愛知県を拠点に活動している。公式Twitterアカウント
57)GOGO’s:GOGO’s&クワザワグループ。札幌を中心に活動するYOSAKOIソーランチーム。2022年をもって活動を終了することを発表している。公式ホームページ

SNSを使った研究

 いまその、「よさかめ」さんって言うんだけど、よさこいのカメラマンのことを。よさかめさんたちっていま名古屋の人がすごい上手いから。やっぱね、中部地方の人たちってめちゃめちゃ上手くて、特定の上手い人たちがいる。その人たちと知り合いになると、わざわざ北海道まで撮りに来てくれる。もうそれで知り合いになって、最初にもうSNSでアプローチしといて、「撮ってください」って言ったら、撮ってくれたデータ全部くれるの。商売してるわけじゃないから。それを募集に使ったりだとか。そういうのも実はネットをやってたらいろいろ手はあるんだよね、自分達のチームを見せようと思ったら。でもそこをみんな踏み込まないじゃない?
 で、これはもう学生実行委員もそうだけど、ちょっと研究すれば今の流行りとか、今何がってところをもうちょい踏み込めるのに、みんなそこまで行かないの。めんどくさいから。そこが面白いのになって思うんだよね、企画してて。ネットやってても1番それが面白いのにって思う。検索してても。よさこいのチームを見て、全国の人たちいっぱい知り合いいるけど、「このチームここいい」とか、「このチームのこう言うやり方面白いとか」「このチームの転換面白い」とか、成功事例って実は北海道以外にいっぱい転がってるのさ。
 何回も例に出してるけど、かんしゃら⁵⁸⁾さんってチームがあって、大阪のチームで高知系のチームで。全然賞とかにもエントリーしないんだけど、常に70人、80人いる。で、代表が仲良しになって、いろいろ教えてもらってるんだけど、30歳の代表で、あいつとかものすごい優秀で。必ず年に3回くらいはバズらせる。ジブリでよさこいみたいなことやったりだとか、それはもうすごい、万のいいねがつくから。だからそう言うのをやるだけでもチームって話題になるし、面白いってなるから、さすが大阪人って(笑)そういうのとか、学べるところっていっぱいあるはずなんだよね、チームとして。じゃあそこを、その人と知り合いになりたいって思ったら、今の時代は、ネットでなんぼでも知り合いになれるから。そこがもったいない。

 僕は置いてかれるのが嫌だって言うのもあって、最初は様子見なんですよ。間違いもいっぱいするし。でもその中で使い方が上手いチームを研究し始めるんですよね。そうした時に代表者として間違ったことを発言しないとか、いろんなチームの代表のスタンスがいっぱい見えてくるんですよ。でも、それで自分なりに研究するというか。どういう風にしたら、ウケるんだろうとか、友人になりやすいんだろうとか、をやってく。
 (観察とか研究が)好きですね。ある意味オタクなんですよ。結局そういうので、自分が研究した内容が、合ってるかどうか答え合わせしたくなるというか。だからそういう企画ごととか、調べることから始まる。最初は多分仕事だったので、好きよりも、研究して結果出さなきゃってやってたと思ったんだと思うんですよ。でもやってくうちに好きなことなのでどんどん夢中になっていくんですよね。だから、今はどっちかっていうと好きが先行していると思います。好きなことだから研究できるし。
 これも難しいんだけど、今はなんとなく形になってるんだけど、今後どうなるか正直わからないじゃないですか。チームので、このコロナの中で。倭奏だって、来年どれくらい残るかわからないから。だとしても、多分次40人集まらなかったとしても、またU-40 からやるんだと思うんですよ。で、また100人にするんだと思うんですよ。そこが多分大事なところかなって思うんですよ。それこそ、減っちゃったら、減った人たちとまた楽しく作って、「どうやって広げていけばいいんだろう」ってことを考えるし、そこを考えないで今まで通りのことをやってたら、多分、今まで通りの結果しか出ないんですよね。
 北星でよく会議で、いっつも怒ってるのが、「先輩去年こうでした」って言うんですよ。「いやいや、わかったわかった」って。「今年って去年よりいい成績取りたいんだよね?」って。「あ、そうです」「したらなんで去年のことやるの?」って。先輩がやってきた道って正しかったのか正しくないのかって検証した?って。で、それってルールに縛られてない?って。何日に合宿やらなきゃないって。その時間あったら新しいものを付け足していけばいいじゃって。自分達の効果あると思うものを。結果それが効果なかったら、次の年に辞めればいいだけなんだから。それは挑戦じゃん。そこが多分できてないと思うんだよね。それは仕方ないんだと思う。
 ある意味学生の気持ちもめっちゃわかる。何故かっていうと、たった1年や2年でリーダーにならなきゃないじゃない?よさこいやって2年くらいでさ。でもね、20年も30年もやってる人からすると、「何毎年同じことやってんのよ」って思っちゃうの。そりゃどうせ知識では勝てない。けども、気持ちの面で最初にそこがあれば、多分変わると思うんだよね。変えていこうって思ったり、毎年毎年違うやり方で、いいやり方があったら残す。ダメなものはダメ。でも挑戦するっていうことを、繰り返していったら強いチームになると思いますよ。いいチームになると思う。
 でもそれを、楽だからみんなやりたくなくなるのさ。先輩たちがやってきたことを踏襲したら楽だもん。何にも挑戦しないでやったら、失敗もしないし、怒られもしないし。でもこれが1番ダメになる原因なんだと思うのさ。おもしくなかったよねって。「今年何やった?」って言った時に、「衣装替えしました!」みたいな感じで(笑)。うん、まあ、わかんなくはないけどみたいな。多分そういうところをもうちょいこう、学生実行委員の人たちもそうだけど、先輩のいいところ悪いところを検証すればいいと思うんだよね。
 社会人なるとさ結構時間あるからできるわけさ。これ失敗した道だからこれやめようみたいな。

58)かんしゃら:大阪・東京・名古屋の3つの拠点を置くよさこいチーム。高知県のよさこい祭りを中心に関西・関東をメインに日本各地のよさこい祭りに出演。公式ホームページ

ー確かに先輩方のやり方に疑問を持つときはありますよね。
 メモっといた方がいいと思う。自分が疑問に思ったことで「これは必要か?」っていうことだったりのルールを考えた方がいいと思うのさ。それを書いておいて、次の年とかに、これ必要だったかどうかっていうことを検証した方がいいと思うんだよね。
 なんか、それこそ社会人になってからよく北星のOB来るんだ。そのときに、よく言われるんだ。「あのとき下畑さんに言われたこと全然意味わからなかったけど今わかりました」「全く意味なかったすね。帰りの挨拶長いとか。ずっと気合い入れをさせるとか。全く意味ないことで、こんなことやってるなら練習やれよとか。その意味が全然わからなかったけど、今すごくわかります。」とか。時間がないからもっと効率よくやろうよみたいな感じで。でもほら学生って時間があるから、どんなに長くやってもいいわけさ。むしろ長くやりたいのよ。みんなと一緒にいたいから。でもそれが勿体無い。その30分あったらもっと踊り上手くなれるのにみたいな。
 それもよくわかるのが、悩むのさ。こっちも、なまじっか経験があるからここ行ったら落ちますよってところに旗を立てたくなるのさ。ここで曲がらないと、坂落ちて結構それで何週間か無駄にするよって旗立てたくなるの。上まで行くための、完成するための、仕組みを作りたくなるじゃない?目印とか。でも、ある程度自分で開拓しないと身にはならないのさ。何か教えてもらった道をただ歩いてるだけ、みたいになって考えなくなるの。で、これもダメで、だから旗の立て方とかはすごく悩むんだよね。自分たちでやったっていう気持ちにならない限り、身にならないというか。大人の言うことに任せておいたら、上手くいくんじゃねみたいな感じに学生ってなりがちだから、ここが経験をどうやってさせるかが大事。

 社会人のチームってそんなことないんだよ。なぜかって、自分がそうだから、自分の経験をそのままやって、それが好きかどうかで人が集まってくるから。そこはもう学生と全然違うんだよね。嫌いだったらやめればいいだけだもん。あ、このやり方合わないな、このチーム合わないな、ってなったら、やめて他のチーム行けばいいだけなので。
 それはもうほんとに相性もあるじゃない?もっとガツガツやりたい人もいれば、倭奏みたいにゆるくやってても全然いいって人もいれば、いろんな、それが選べるのが良さでもあるじゃない。自分に合ったチーム。それ、移籍は別に妨げてないからさ。来年夢翔舞(ゆめしょうぶ)⁵⁹⁾行きますもありだし、夢翔舞から倭奏来ますも全然ありだから、そういうのがもっと広くできればいいとも思ってるし、選択肢があるのが社会人チーム。それぞれのやり方でそれぞれのYOSAKOIのスタンスに合うチームを選べる。
 学生はそうじゃないから。選べないよね。だからこそ、北人とか実行委員との繋がりってすごい大事なんだと思うのさ。他のやり方を学ぶっていうか。そこが最近希薄になってて、自分のチームのことしか考えないやつが増えてる気がするのさ。だからここをちゃんとわかってやらないと、ただ単純に自分たちだけがやってりゃいいみたいになっちゃうでしょ。だからもっと密にいろいろなことやって、共有するというか。なのかなって思う。他のチームのやり方を学んだ方がいいと思うんだよね。

ーご時世的に集まれないんですよね。
 でもオンラインでやればいいじゃん。そういうのが、リアルで会う楽しさにつながる可能性があるよね。学年で繋がるの結構いいかもしれないね。「一年生だから一年生の人たちと交流しましょう」みたいな。粋⁶⁰⁾の一年生だったり、北星の一年生だったり、縁⁶¹⁾の一年生だったり、いろんなとこの一年生と交流しながら情報交換して、それがまた学年が繰り上がるからさ。
 どんどん濃くなっていけばいいし、それぞれの学年同士しっかり繋がっていけばいいかなって。さっきも言ったけど、学生チームっていうのは実行委員会もそうだけど、もうなくてはならない、このお祭りにとっては。そこから始まったし、その人たちがいかにYOSAKOIソーランを続けられるか。学生実行委員もそうなんだけど、っていうのが次の課題だと思ってるんだよね。そういう人たちがやめなければ人は増え続けるわけだから、社会人になっても。そういうのをちゃんと文化として改めて磨いていないといけなくて、若い人たちがやれる環境を作りたい。この人がやってるからやりたいって人もいるだろうし。

59)夢翔舞:JCB夢翔舞。札幌で活動するYOSAKOIソーランチーム。公式ホームページ
60)粋:粋~IKI~北海学園大学。北海学園大学に所属するYOSAKOIソーランチーム。札幌市を拠点に活動している。公式ホームページ
61)縁:北海道大学”縁”。北海道大学のYOSAKOIソーランサークル。公式ホームページ

北星の変わったところ

 さっきも言ったことが大人の言うこと聞いとけばいいやってなった瞬間がある。元々は実は勝つっていうチームを作るってときにも葛藤があったチームなの。何かっていうとずっと楽しんでやってきたチームだったから、それが北星のカラーだったから。ある年の代表が、「やっぱりファイナル行って勝ちたいです」って言い始めてから、「じゃあそしたらそういうスタンスに変えるか」ってなって。それから北星ってやっぱり変わっちゃって、前の先輩たちと分断したこともあった。せっかく学生なのに、スポンサーがお金出してくれるんだから楽しくやりゃいいじゃん、それでいいって言ってくれてるんだし。でもそれが許されてたの全然。
 でも、勝ちたいっていうふうになってから、勝つ方向に行ったら練習とかも厳しくなるし。で、まあそれで勝てるようなはなった。ファイナルに行くことが、イコール勝てるということなら勝てるようにはなった。なんとなく勝てるようにはなってきた時に、考えなくなったんだよね。自分たちのやりたいことよりも、勝てるものっていうものになっちゃってそれはプロデュースしてる側からすると、勝つことがやっぱり使命だからこれは、お祭りとはいえ。僕らのプロとしてやってる側からすると、それはある意味いいんだけど、ある意味祭りとしてはダメなんじゃないかなと思うところもあるのさ。楽しんでないっていうか。そこでこの人たちを燃え尽きさせてしまって、学生終わったらやらないってしてるのがつまらないし。だからそのバランスの取り方だったり考えなきゃないなってところが、すごい出た年だなと。
 ただ今の子達はまた変化してて、例えば今までの北星のカラーじゃないカラーに挑戦しようとするのはある意味昔に戻った感じなんだよね。「和じゃなくてもいいからとりあえず学生でしかできないことやろう」って考えてくれたり、なんかその思い切りの良さだったりはすごい尊敬するっていうかいいね、覚悟あるねって感じでやっぱり捉えてるし、そういう子達が出てきてくれたのも嬉しいなって思ったし。
 でもさ、なんだろう、、すごいなって思う時いっぱいあるのさ。昔は社会人チームと学生チームって結構差があったの。作るものが。だから所詮学生でしょって感じだったの。ほんとに。でもそれがある時から、学生チームのクオリティもすごいグーンとあがっちゃって、もうすごいんだもん。やっぱりレベルとか、粋 が大賞獲ったときとかほんとすごかったし。なんだろうね、どの学生チームも舐めたもんじゃなくて、むしろ学生の方がすごい。と、思うよ。変わったと思う。今は学生のレベルはすごい高いと思うよ、踊りのレベルは。だからどこが勝ってもおかしくないし、どこの学生チームがファイナルコンテストにに行ったとしても全然普通に納得できるようなものを作ってるし。
 そう言う意味ではすごいものを積み上げてきてるなって思ってるんだけど、そこに自由があんのかってことだけだよね。なんか同じようなものばっかりで、名前変えたらチームわかんないみたいな感じになっちゃうと、おもしくないじゃん。「あ、今年のここの新作なの?」みたいに言われてしまうようなカラーじゃなくて、このチームだからこうだよねみたいにならないと、いけないかなって。難しいんだけどね(笑)

唯一無二のチームであること

 3年前かな、こばやししんご さんって知ってる?天舞龍神の。特別代表。しんごさんに、千歳トーナメント のときに、ホールに呼ばれて、「下畑きたか」って言われて「あ〜どうもどうも」って。話した時に、「これ縁 の代表だ」って言われて、縁の代表から悩んでるから相談を受けて欲しいって言われて、「縁で大道具出すべきですかね」みたいなこと言われて、それはやっぱり勝てなくなってきて、縁が。だからどうしていいかやっぱり悩んでた。
 っていう話になったときに「縁ってそういうチームじゃないんじゃない」って思っちゃうのさ。持ってるパワーとかもすごい圧倒的な強いチームなのに小手先に行ってしまったら縁じゃないから。「もちろん面白いことしたらいいんじゃない?」って。
 「じゃあ例えばなんですか」って。赤フン⁶²⁾になるのとかもう飽きられてるんですよね、って。20年もやってたらって。確かに最初のインパクトはすごいし、赤フンになり方とか何パターンもやってるから、多分もうないんだろうなっていうのはあるんだけど。例えばイベント、あれだけ縁って出てるじゃない?だから1人金フンとか入れてみたら?それを見つけてら、結構ラッキーだとか。いろいろ考えてみて、ウケるものをなんか、お前ら頭いいんだから北大生で。少しこうこれうけたパターンで、MCでウケましたとか、それを来年リニューアルどんどんしてくとかしてったらいいんじゃない?って。
 縁はそういう勝負の仕方がいいと思うんだよね。幕出すとかそんな必要ねえよって。その辺って、どうなんだろうね。そういうことを伝えてあげたらいいと思うんだよね。自分たちのいいとこってわかんないんだと思うんだ。でも、なんかその中身って、なぜ今ダメになったかじゃなくて、自分たちが勝てないとか言い始めた方でいうと、最近の縁ってあんまり交流してないんじゃないかなって。
 昔って、よく知ってるけど、夏が始まったら、みんなでずっと遠征してた。縁が。で、どまつりで集合するっていうので。勝手にみんなでいろんなとこ行って出まくって、2、3人で。2人でも3人でも踊りまくって、で、名古屋に集合みたいな。でどんどん南下して行って、夏休みが終わったら戻ってくるみたいな感じでやってたの。どこにでも縁いたし、たった何人でも踊って盛り上げてくるし、交流して、知り合いのところに泊めてもらって、知り合いじゃない人のところにも泊めてもらって。でなんかその、YOSAKOIソーランもちゃんとPRしてくれるし、で、どこに行っても可愛がられてたんだよね。
 そういう祭りのつながりや人のつながりの泥臭さみたいのが、縁の力になってたような気がしてて、そのなんかパワーっていうのが、多分魅力なんじゃないかなって思ってて。踊りが上手いとか、構成がいいとか、どうやって赤フンになるとかではないんだと思うよ。そういう小手先のものではないマインドとかで、だって盛り上がるじゃん。盛り上げてくれんじゃん。それだけでも唯一無二な感じだと思っているので、そういうところのパワーを出すための、方策っていっぱいあると思うんだよね。
 これほんとに難しくて、よく練習でもあるんだけど、昔スイッチが入る入らないって話あって、YOSAKOIのチームだったら、一回の演舞で、どんってくる時と、ダメだなって時が結構あるんだよね。それはノってるかどうか。でもどうやったら、ノらせるかだったりがあって。それが学生でいうところの気合い入れみたいなところもであるんだけど。社会人のチームでよくやってたのは、体育館真っ暗にして踊らせるとかした。みんなを感じて踊りましょうって言って。照明一個だけボンってつけて、西8丁目想像して踊ってくださいって言って、バンってなったら気合い入って、スイッチ入って、そこから結構踊り変わったりとか、各チームそういうスイッチの入れ方みたいなだったりとかは伝統として結構みんなあって。そういうのも含めてYOSAKOIのチームって気持ち次第のところもあるので。

とりとめのない話をしてしまいました(笑)

 面白い話なんていっぱいあるんですよ。組織委員会にいた頃とかも、とんでもないことばっかりがおこったから。でもそのとんでもないことが、やっぱり楽しかったし、今でもそのとんでもない人たちと20年以上経っても繋がってるところが面白いんだよね。その人たちが来てくれるのもまた嬉しいんですよ。
 なんか地方車⁶³⁾作って来てくれる人たちってすごいんだよ。あの、名古屋に地方車持って行ったことあるんだけど、どまつりでね。倭奏ほらどまつり出てるから。名古屋で作んなくて、じゃあいいや札幌の持っていこうって。で、持ってって耕作くんに紹介してもらって。太平洋フェリーさん紹介してもらって。でも持ってくだけで20万くらいするの。フェリーで。地方車持ってくだけで。で、作ってなんだかんだってしてたら、あっちで作った方が安いことがわかったりとかがあって(笑)。
 でも、そういう気持ちで100万、200万かけて、やっぱりこう道外から地方車持ってくる人たちは並大抵の気持ちじゃないんだよね。そういうのとかを見た時にやっぱりなんか、地方車賞のありかたとかもやっぱり考えてあげた方がいいかなって思うし、だって凄いんだもん。それはなんていうの、神輿だって言い方をするんだよね。他人のふんどしで相撲とんのかっていう意見も。レンタル地方車あるけども、自分たちの作った地方車をちゃんと持ってくるっていうことが大事だし、お金かかっても俺は持ってくるよっていう代表たちはいるし。だからそういう代表の話を聞くと、札幌のチームじゃあ地元なのに地方車作らなかった自分たちチームがいたときに、これはダメだなって思って絶対作ろうって思ったんだよね。そういうのは先輩たちから教えられるというか。まあでもお金ないチームは仕方ないと思うけど。

62)赤フン:北海道大学”縁”の演舞では、曲のクライマックスで衣装が赤ふんどしになるという特徴がある。
63)地方車:パレード会場で音を流すトラック。チームによって個性があふれている。

昔と今で変わったところ

 (今は)システムが成り立ってる上でみんなやってるのさ。で、昔はシステムが成り立ってなくて、「システムって何なの?」ってところから始まってるから。祭りの運営すること自体が。で、それを試行錯誤してた時のパワーと、今それを治めるシステムがある程度成り立ってる上で、運営することとの違いがあると思うんだよね。
 どっちがいい悪いじゃない、もう時代だからしゃーないよね。ただ、この時の熱量って、失敗も含めてみんなで頑張ったトライアルしたものと、今ある程度失敗しないルートが見えてるのさ。だったら、他にもっとパワーかけれるところあるんじゃないかなって思う。これが、例えばなんだけど、チームのケアだったり、お客さんへのケアだったり、もうちょい例えば運営はもう全然大丈夫です、仕組みができてるからこのままやれば大丈夫です、だったら、それプラスアルファで、やれたらいいかなって。

 俺色々インタビューとかしてて最近わかってきたのが、やっぱり北海道いいよねって言ってくれる人結構いるんですよ。道外の人でも。西8丁目とか大通のパレード最高だよねって。その人たちにもう一回来たいなってやっぱり思ってもらえるような、運営の仕方だったり、来てよかったなって、言ってくれるようなことって、ほんのちょっとのことのような気がすんの。
 例えば、ウェルカム感っていうか、学生実行委員の人が「来てくれてありがとうございます!楽しく踊ってください」って言って、踊り終わった後に「よかったです!!!!!」っていうだけでも、きっとそのチームからしてみたら一生の思い出、な感じがするんだよ。でもそれが、120~200チームの1チームみたいな感じで、「あーじゃあ次踊ってくださーい」「踊ってくださーい」「ありがとうございましたー」って流したら多分、たったこの学生実行委員の1人の対応や、組織委員会の運営の1人の対応で、「あ、もう来なくていいかな」って思ったりすると思うのさ。だからその心配りをいかに徹底できるかが大事な気がするんだよね。
 今わざわざ北海道までそうやって来てくれてる人たちに、何を返せるかって言ったら、やっぱり楽しんでもらうことじゃない。必死に運営することは大事なんだけど、必死になるところはここで終わってるんだからもうできていて、まちがいないように今はできる。それでも、気を配らなきゃないところはあると思うんだけど、だからこそもっとなんか手厚くしていくことが今一番必要とされてるし、もう一回来たいとか思うような、それはでも学生実行委員とか組織委員会にしかできない。

 あと、チームもそう。他のチームが来ても、チームの運営だけでいっぱいで拍手すらしないみたいな、祭りすら見ないみたいなことが結構あるんだよね。でも、うちのチームとか、よくバラすって言うんだけど、時間になったらお祭りを見に行ってっていう時間を作るんだよね。
 チームとしてみたらバラバラにするってことはすごく勇気のいることなのさ。なぜかっていうと、そこでどんなクレーム起こすかわかんないじゃない?衣装のままタバコ吸ったり、ゴミポイ捨てしたり。トイレに長く入って髪セットし直したりとか。チームとしてみたら、「縛って、はい集まった、解散した、家まで帰った。」で何もない方が要はクレームにならないしょ。でもそしたらお祭りが楽しめないから、だから一回じゃあ現地集合現地解散でここで解散するから、ちゃんとお祭りを見て楽しんでねっていうことってすごく勇気がいるんだけど、でもそれをやることによって、いろんなチームを見れたりするんだけど、そういうこう楽しみみたいのを最近やってないと思うんだよね。
 お祭りの期間に北のフードパーク⁶⁴⁾に何チーム行ってるんだろうと思う。だから余裕がみんなないんじゃないかなとも思っていて、でもそこをもう一回ちゃんと考えて方がいいんじゃないかなと思う。チームの代表たちも。それがさっきも言ったように賞じゃない楽しみだったりもするし。だからその置かれた立場は違うけど熱量の持っていきかたをどう変えるかなのかな、そこが違いなのかなと思う。

64)北のフードパーク:本祭期間中に西5・6丁目で開かれるイベント。丁目ごとにテーマを設けており、北海道内・外の名物料理が提供される。

一番のターニングポイント

 キーパーソン…でもね、初代の空知北支部長の高橋ちえみさん⁶⁵⁾って方がいるんだけど、いたんですけど、亡くなっちゃったんで。このちえみさんがもたらした影響って結構強いなって思った。組織委員会のときに爆破事件⁶⁶⁾があったの。2000年かな、にあって。その時僕は組織委員会だったので、てんやわんやの大騒ぎですよ。ほんとにね。傷ついて、それこそICUに入るような状況になってるから、学生実行委員がね。あの、くぎ…みんな知ってるかどうかわからないけど、爆弾が仕込まれてて、それを置いた瞬間に爆発して、ゴミを回収していた学生実行委員の人たちが、傷付いたわけさ。1人は肺に入っちゃって、緊急手術をしたっていう状況があって。その犯人まだ捕まってないんだよ。
 そんな時に長谷川岳さんは責任者だから、その緊急手術の人のずっと立ち会いしてたし、五十嵐さん⁶⁷⁾は警察に呼ばれて、もうすごいもうちょっとやらされてるときに。俺が組織委員会だった時代だったので、学生実行委員の人たちがじゃあ何人怪我して、学生実行委員ってそのとき、MC班は特に、会場運営で他の会場に行ってたりもしたのさ。だから、その何人傷ついて何人できないからっていうのを全部みんな呼び出して、今この現状でこうでこうでって言って、明日ここで今足りない人たちをどう埋めるかっていう段取りしなくちゃいけなくて、っていうのをやってたのさ。
 で、運営の上司も帰ってこれなくて、明日お祭りがあるのかもわからなくて、学生実行委員は自分の仲間たちが傷ついて、手術して、死ぬかもしれないっなってる段階でもお祭りやんなきゃいけなくて、次の日になった時に結局警察からの許可が降りなくて、全会場が止まったんだよね。安全を確認しないとお祭りはできませんってなって、全会場午前中中止になった。
 午前中中止になるってことは審査とかもできないわけさ。だからもうノーコンテスト。それに対してのクレームも凄かったし、要はお客さんからのクレームも凄かったの。桟敷席のチケット買ったんだけど、これどうなってんのみたいのを学生実行委員にクレームを言ってくるのさ。今昨日傷ついた人がいて、一番やりたいの学生実行委員なのに、それをクレーム言ってくる人がいっぱいいて、その場にいたからすごい反論したの。「いや、気持ちはわかるんだけど、わかってあげてくださいよ」って。そういうことがあって、結構疲弊をしてたし、チームからのクレームも凄かったの。

 なんだろうな、何様だって感じで…いややりたいのはみんななんだよって。でも、お祭りってそうだけじゃ成り立たないじゃない。だから今僕らも審査をやりたいし、みんなも審査受けたかったんだろうし、踊りたかったけど踊れない理由ってこうで、それわかってるじゃんって。いわゆるテロだから、誰もどうしようもないものを今ここにクレームつけられても、今それみんな必死でやってるんですよみたいな感じになった時に、最後に結局、ファイナルコンテストのチケットもう売っちゃってるから、フィナーレっていう形にしちゃって、前の年のファイナリストに踊ってもらったの。そしたらその時にちえみさんのチーム、深川粋人会憲乱組⁶⁸⁾っていうチームで、もう今ないんだけどね。
 俺は自主的に警備をしたんだけど、学生実行委員の数も足りてないし、警備会社の人も結構ビビってしまって、爆破事件があって。っていうから、次にまたテロが起こる可能性があるから、っていうときに、わざわざそのチームの子たちが来てくれたの。「俺たちファイナルもう関係ないから警備手伝うよ」って言ってくれたの。全部って。40~60人のメンバーが、深川に帰るの遅らせて、自分達のお祭りだからって言って全部警備してくれたの。西8丁目の。衣装着たまま。
 なんかそれをみた時に、ちょっとこうグッとくるものがやっぱあって、今まで学生実行委員も俺たちも組織委員会もお祭りができないことに関するクレームばっかり言われてたから、でもちゃんとなんかそのお祭りっていうものを考えてくれてるチームがいて、一緒になって、なんとかしようって、思ってくれた人がいてくれたっていうのが、その高橋ちえみさんで、有難かったね。でそれの時に初めてチームっていうのとお祭りって近いというか一緒にやってんだなっていう感覚になった。反面そのクレームを言ってくるチームもいっぱいいたけど、でも反面そういうふうにすごく親身になって、危険を顧みず、一緒に作ってくれて人もいたなっていうのがあって、あれからやっぱりハマったというか、変わったし、チームに対する想いも変わったし、ことがあったかな。

 当時はまたね、それこそiモード(docomoの携端末で利用できたサービス)っていう時代だったので、メールとかがあんまり頻繁じゃない時代だったんですよ。なのでこう、SNSも当然ないし、ネットっていうものも全然ない時代だったから、情報の発信がテレビのニュースでしかないのさ。メールも細かく打てないのよ今みたいに。そうなってくるとチームに情報が行かないからこそクレームになったり、お客さんのクレームがっていうわけさ、わからないから。
 (いきなり)ファイナルなくなって、審査ノーコンテストになって、午前中中止になったよって、いやいや爆破事件があったからって別にできるでしょって感じなのさ。でもこっちからすると警察がダメだって言ってて許可が出ないことだから、って言ってもそこに来ないとやっぱりわからないから。発信ができないじゃない?西8丁目にきて、その本部にクレームを言うことでしか、発信ができない。張り出しをしてもみんな納得しないというか。ほんとに可哀想だったというか、ほんと大変だったよ。その時はね。
 だから、先輩たちはすごい頑張ったんだと思うんだよね。怖いし、当然なんだけど次にテロあったらどうしようって思うじゃん、一回あったことって。次の年ないなんてないし犯人は捕まってないし、未だに。そんなものがあるお祭りの実行委員なんてなんでなるのって親から言われたらさ、学生にまでなって、傷つけるためにやってるわけじゃないよ。死人出なかったけど死人に近いもの出たでしょって、言われたら誰もバトンを受け継げなかったんだと思うんだけど、その時の人たちはやっぱり頑張ったんだよね。きっと。頑張んなきゃって思ってやってくれたから今あるんだなって思うけど。やってくれた人たちに感謝だと思うし。

 難しいんだけどきっとそうなんだと思うのさ。でもさっき言ったように挑戦しないことにはできなくなって辞めていく文化になっちゃうじゃない?せっかく30年続いたのに。ってことはどういうところが変わっていけばいいかって人の感覚でしかないと思うんだよね。やってもいいなってもうやんなきゃなってみんなが思い始めてくれたら、いいし、そのために最低限でもこういうルールを守りましょうみたいなものがあって、それだったらYOSAKOIソーラン祭りやってもいいよねってなって。
 西8丁目に5000人しか入らないんだったら、野球やってるのと変わらないんだもん。プロ野球で5000人入れてるでしょ?今。それとおんなじなんだよ。だからそれがダメだっていう理屈はないのさ。だって片や毎日やってるんだよ。プロ野球、全国で。それが認められてるのになぜこっちがダメなのってルールはないのさ。これもすごく変な感覚なんだよね。だからこれを変えていくのがすごく大事で、「最低限このルールを守って開催します」はありだと思うし、それをいいって風にしていかないと、いろんなものができなくなっちゃうから。ここをやっぱみんなで積み上げていくしかないと思うんだよね。

 で、例えばなんだけど、チームの練習でコロナのクラスターが起こったとしても、それに対する対応の仕方ちゃんと組織委員会学生実行委員も含めてちゃんと決まっていて、で、対応ができるとか。もしくは学生実行委員会の会議の中で例えばそういうクラスターが起こったとしても、例えばわかんないけども、大事な時に全員がそうやってクラスターになっちゃったら大変じゃない。動けなくなるから。半分はオンラインで参加させて、半分はリアルで参加させたら、リスクが半分になる。こっちがクラスター起きてもこっちが稼働できるとか。なんか考え方によってそこまでちゃんと対応してたんだなって言われたら、何も文句言えないと思うんだよね。「あーちゃんと考えてたんだ」っていうなんかそういうこう相手が納得するようなものがこのコロナの中でなんなんだろうってことをやっぱり考えていく、段階に来たのかなって…思うので。今まで通りじゃ行かないから…と思うのさ、もう。
 今までの2019年の時みたいにチームも普通に練習できると思っていないんだ。その人の感覚が変わらない限りできないと思ってるから、じゃあどうやってやれば、上手くやれるんだろうとか。考えなきゃな。

 俺も今日話してて、チームさっきみたいに人集められないってなったときにどうしようかなっていうのを今考えないといけないんだ。その時になんとなく今、ああ、自分で喋ってて思ったのが、やっぱ今まで通りじゃだめだから、例えばなんだけど練習しないでお祭りに出れる方法ないんだろうかって思ったりした。もうだから、当日ドンって合わせて、だからそれまでリスク全くなしで、ネットで例えばやっててとか、ほんとにA隊、B隊、C隊みたいに、20人ずつしかやってなくて、それが当日だけバスってあわせて、踊れるとか、なんかそういうこう新しいやり方っていうか、を、作ってみたらどうなんだろうって。練習しなくて良いですって。みんなで練習来なくていいって。そのかわりネットで覚えて、今年に関しては6月にそうやって、一回だけ踊りましょっていうスタンスだとか、できてもいいのかなって思うね。
 その、この時代に合ったやり方みたいなのを作れたらまた面白いのかなと。だからなんか考えれるところもいっぱいあると思うのさ。踊り簡単にした上でじゃあどうやったら面白く盛り上がるのかとか、うん。なんかだから、いまこそ、リスクあると思っている支部の若いチームで人数いないチームを一緒に出ませんかって言ってもいいと思ってる。倭奏で。出れないからみんな。その代わりとにかく練習しなくていいから、これだけ練習して、当日衣装だけ着てきてって。パレード一緒にやりましょっていうことだったり、今だからできる方法だったりが、やれば面白いかなって思うし。だからそのクオリティさえ求めなければ、如何様にでももしかしたらできるんだよね。きっとね。だから逆にそこでクオリティ求めなくても、評価されるものを作るっていうのが腕の見せ所だったりするわけだから、そういうのは考えたら面白いかもね。

 どっこいしょ⁶⁹⁾さんも宮本⁷⁰⁾さん ね、それこそ20年来の友人ですけど、悩んでるのさ。あそこも医療従事者が多くて、それこそ不特定多数が集まるから練習するのがリスクなんだって。出自がはっきりしない人が集まってくるからあそこは、それがよさなんだけどそういうのをやろうと思ったときに、クレームがすごく多いというかチーム内での反発も多いんだって。だからその、どっこいしょの良さが今回コロナによって結構削られてるから、悩んでるって言ってた。
 あのチームが1番大賞だと思うんだよね。だって、変わってないんだもん踊りがずっと。それずっと練習しなくても出れる。それってすごいことじゃない?お祭りを常に楽しめるから。で、毎年毎年おじいちゃんおばあちゃんも出れるし子供も出れるしだからあれはもうあれですごい成立している世界だなって、やっぱ宮本さんの作る世界すごいなって、本人は傑作はあれ一個しかないって言ってたけどね(笑)。名作は1個しかなくてそれ以上のものは20年かかっても1個もつくってないってすごい本人は言ってるけど。でも、すごい、それはすごいことだよね。

 なんか楽しそう入りたいみたいな感じで入れるのってすごい大事で、最近総踊り⁷¹⁾論争って言うのがネットSNSで多くて、総踊りを覚えなきゃいけないっていうのがそれは総踊りなのかって話なんですよ。例えばなんだけど名古屋って結構総踊り多くて、晴レルヤ!⁷¹⁾とかあるんだよね。20周年でできたやつなんだけど、めっちゃ難しいのさ。であれは、練習しないと踊れない総踊りで、でもそれって総踊りとしてどうなんだろうってやっぱなんのよ。総踊りってやっぱ曲がかかって人が踊ってるのをみて踊れるくらいが、ちょうどよくて。だからその練習しなきゃ踊れない総踊りは総踊りじゃないんじゃないかとかが結構みんな議論になるくらいになっていて、お客さんが楽しめないんだよね。
 天神の踊りをぼんってやってみんな総踊りですからって言ってもできないじゃない?だからその見よう見まねでできるものこそが、みんなが一体になれるみたいな感じなのかもしれないよね。ただどっこいしょとかはそうなのかもしれん。宮本さんに聞いたことあるんだよね。「ここの振りって一回ちっちゃくなってから出すんですか、それともなんかこうこのまま流すんですか」って言ったら「どっちでもいいよ」って言われたんだよね(笑)。それはなんかもうそういうもんなのさ。下畑さんあんま考えなくていいから。どうでも形も良くて、振りもどうでもよくて、なんとなくこういう形であって、それをみんなが楽しくやってくれればいいんだもんって言ってくれたときにあ、なるほどって思ったよね。考え方として、なんかお祭りだなって思った。

 宮本さんから話聞いたら面白いかもよ。いろんなネタ持ってると思うし、もともと第1回から参加してるので、先輩でもあるから。
宮本さんいいかもしれないね。話聞いたら歴史語れるかもしれないし。

65)高橋ちえみさん:初代空知北支部長。空知北支部は現在、空知支部となっている。
66)爆破事件:第9回YOSAKOIソーラン祭り(2000年)、6月10日(土)夜、西6丁目公園のごみ箱が爆発し、当時の学生実行委員会の学生が被害を受けた事件。
67)五十嵐さん:一般社団法人北海道ライブ・エンターテインメント連絡協議会 事務局 五十嵐聡さんのこと。
68)深川粋人会憲乱組:かつて深川市を拠点に活動していたチーム。
60)どっこいしょ:「さぁさみんなでどっこいしょ」札幌を中心に活動するYOSAKOIソーランチーム。
70)宮本さん:YOSAKOIソーランチーム「さぁさみんなでどっこいしょ」の代表。
71)総踊り:チームなどの違い関係なく、ステージにいる全員が一つの踊りを踊ること。「総踊り曲」という総踊り専用の曲で踊ることが多い。
72)晴れルヤ!:にっぽんど真ん中祭りで使用される総踊り曲。


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