軌跡

今日は、生まれる数分前のお話。

4/28
私の産まれる予定日だった。
夜中に突然母のお腹に痛みが走った。
ぐううっと強く押される痛み。
息も出来なくなるような時間が続いた。
1時間程経って私は、母と父と病院に行くことになった。エコーをしても何も問題が無くただ時間は過ぎていった。
だが、そんな中でも陣痛は続いていた。
母は沢山もがいて沢山泣いた。

「私は、この子の母になる資格なんてない…」

もうメンタルも崩壊していたのだろう。

そのまま日にちが変わった。

4/29
陣痛は、3時間程収まっていた。
母は、自分のことよりも私のことを心配してくれて、たくさんお腹を撫でてくれた。

ここで待ってるからね

って。

そして陣痛促進剤を打ち続けた。
結局その日は、自然に陣痛が来ることは無く私にかなり負担がかかっていた。
酸素が回らなくなって、呼吸、心拍すらなくなる可能性があった。

何も、進展がないまま日にちが変わるのみだった。

4/30
夕方頃再び陣痛が来た。
だが、子宮口がなかなか開かず私が出てこれる状況ではなかった。そして、3日も私と戦っているのだ。体力なんか残っているはずも無く医者から

「帝王切開に切りかえます。」

と。
その頃祖母の自宅では、私が元気に出てこれる様に何度も何度も祖父の仏壇に願いを込め祈ってくれていた。その5分後父から「秋桜が産まれそう!」との連絡があった。
祖母は、急いで病院に戻り、私は帝王切開をする為に手術室に向かう所だった。そして、移動しようとした途端。「痛い!!!!!!」と叫び声が部屋中に広がった。
そう。陣痛が来たのだ。そして、1時間もしないまま私は自然分娩で産まれてきた。

母の身体にメスを入れることなく生まれることが出来た。外の世界に出てくるまで時間はかかった。
だが、この3日間を乗り越えて私を産んでくれた母には感謝しかない。

ここに存在することすら軌跡なのだ。
元気に成長する保証も安心もなかった。
それでも、両親は私を育て続けてくれた。
幸せだった。そして今に至る。

本当に地球に産まれてこれて良かった。

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