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コートを着た女の子

今日は、お腹に来る前から、お腹に居た時の話でもしようかな。
私ね、産まれるまでの記憶が少しあるんよ。
そのごく1部なんだけど、覚える範囲で書くね。
まず、お腹に入る前。私は、道路にいたの。
道って言うのが正しいのかもしれないけど。
その日は、雪がいっぱい積もっていてすごく寒かったの。裸足で、コートを着てぼーっと突っ立ってたの。
夜だから、人通りは少なくて1人でどこに行こうか迷ってたの。
そしたら、1人の女の人が目の前に現れて、

「私の家に来ない?寒いでしょ、」

って声を掛けてくれたの。私はそのまま後ろをついて歩いたの。
家は、貧乏でダンボールの机ひとつしか無かったの。
でもその人は、とても優しくて私のために何でもしてくれた。お菓子を買ってくれたり、たくさんのことをしてくれた。すごく幸せだったんだ。
しばらくして、私はどこか違う世界に行ってしまったの。女の人が居なくなってまた1人になった。
さっきまでとは違う明るくてあたたかい世界。
私は、その環境に全く慣れなくて呼吸が上手く出来なかった。その30秒後ぐらいにある人の声が聞こえたの。

-深呼吸して-

聞き覚えがある声だった。
そう、あの日声を掛けてくれた、女の人だった。そして、その場所はお腹の中だった。
きっと、それが運命だったんだと思った。
これが、私の初めての幸せだった。
あの日、私を助けてくれたあの女の人に会えて嬉しかった。
そこから、何ヶ月もの時間を経てここに生まれた。

こんな感じだった。
これが、お腹に来るところから産まれるまでの話。そして、親にあった話。

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