何も考えていなかった高校時代。
中学の時も小学の時も何も考えていなかったけれど。
ただ毎日友達と遊んで、
黙っていれば大学に入れると思っていたし、
大学を卒業すればなんとなく仕事ができると思っていた。
バイトをすればそこそこ重宝されるし、
仕事をすること、お金を稼ぐことは難しいことだとは思っていなかった。

大学を受けたけどそもそも勉強をしていないし受かるはずもなかった。
予備校に行くことになった。
勉強はしていたけれど遊びもすごいスピードで加速していった。
どんな仕事をすれば良いのか全く考えられなかったし、わからなかった。
目標なんて何もなかった。

作業療法士という仕事を知った。
この仕事なら続けていけると思ったし、
とても興味のある仕事だと直感的に感じた。
この目標に定まったのは予備校時代の秋。
いつもギリギリのところで重要な選択をしているのかもしれない。

運良く願書の締切にも間に合い、
入学試験もなんとかという感じで作業療法士の学校に通った。
思っていたよりも深い広い勉強内容についていけなかった。
ただ、ここにも大切な友達がいた。
遊びもだいぶしたけれど、生意気にも飲みながら作業療法を語り合った。
素敵な先生方や先輩方にも会った。
飲みに連れ回されたり(すいません)、始発待ちを大通公園で過ごしたり、
酔って電柱や看板に絡む先生を止めたこともあった。
いま思うと本を出しているような著名な先生ともお会いすることができていた。
というよりも先生に連れ回された結果、そうなった。
臨床実習に行くと眠れない日々が続いた。
今では考えられないほどの患者さんを担当させていただき、
そのレポート作成に追われた。
休日前だけではなく、平日にも飲みに連れていってもらった。
実習で学ぶことはとても多かった。

就職先はあまり考えていなかった。
当時、作業療法士はまだまだ少ない時代。
いろいろな就職先があったけれど、あまり自由に選べる感じではなかった。
学校や先生の方針もあったのだと思う。

後志にある余市町の病院に就職先が決まった。
一応面接はあったけれど、面接後に余市町の繁華街を案内された。
ここでも飲みに連れ回される気がした(すいません)。
初めて働いた病院で高齢者への作業療法に少しずつ興味を持っていった。
院長や副院長、先輩、同僚、後輩と飲んで歩く生活は変わらなかった。
ただ、飲むたびに学ぶことも多くなっていった。

その後、札幌に戻り、老健施設2ヵ所へ就職した。
入所だけではなく、通所、訪問も経験させていただいた。
こちら側もあちら側も思うところがあったらしく退職(実際には勧奨?)した。

お金は全然なかったが、自信と意欲、根性だけはあったような気がする。
現在の会社を設立し、小さいながらもデイサービスを開設した。
もうすぐ11周年を迎えることになるデイサービス。
今までもこれからもいろいろなことが起こると思う。
けれど、作業療法士という仕事をしていることに誇りを持っているし。
これからも続けていく仕事なんだな、と感じている。

「ちょっと話を聞いてほしい。患者さんにそう言われることがあったら、明日ね、と簡単に答えるな」
「たとえ大切な用事があったとしても何分でも向き合え」
僕らにとってはたったの5分でも、その患者さんは眠れない悶々とした数時間を過ごすことになるから。

「野球が好きだから野球選手になった」
自分の作業療法士という仕事もそう堂々と言えるように日々好きを続けなければならない。

「患者さんのことを掘り起こすな。掘り起こすのなら自分のことを先に掘りおこしてからだ。」

「どれだけ現実的な時間を一緒に過ごすことができるか。それが作業療法士の仕事だ。」

いろいろなことを先生、先輩、同僚、後輩、そして利用者さんに教わってきた。
そして、作業療法とは全く関係のない仕事をしている友達にもいろいろなことを教えてもらった。
今でもそう。

私自身、人と接することがとても苦手な人間だ。
初対面であればなおさら人見知りもするし、緊張もする。
できれば人と関わりたくないのかもしれないと思うときもあるくらいだ。
でも、仕事の時は自分でも不思議になる。
人と接したくて、関わりたくて、話したくて仕方がない。
利用者さんのことが気になるし、何よりも利用者さんのいろいろなことを勝手に考えている。

ここからは完全な思い込みになってしまうけれど、
この仕事をしていて無駄になる経験は一つもないような気がしている。
遊びまわっていた頃、飲み歩いていた頃。
明日食べるお金もなかった頃。少しだけ余裕ができて調子に乗っていた頃。
精神的にも落ち込んで何も食べられなかった頃。
何もかも許せなく当たり散らしていた頃。

ひたすら教科書を読み続けていた頃。
今までもこれからもそういう日々が続くんだろう、きっと。

自分の知識や経験、技術だけでは図ることのできない世界。
教科書のようには進まない世界。
パソコン、スマホだけでは教えてくれない世界。

分かった気になるな。
勘違いするな。おごるな。
正しい方法なんてひとつもない。
自分の定規はだいぶ狂っていると自覚しろ。
柔軟になれ。
職種に上も下もない。それぞれがその道のプロだ。
目の前にあるものだけが真実だと思うな。
穴を掘ったのなら必ずその穴を埋めろ。

むしろ、掘った分以上に盛れ。


ただ、これは自分への戒めのために。


おこがましくも、あなたに少しでも伝われば。

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