撮影後

潜入先の会社でなんらかのPRを兼ねた撮影が行われるということで、俺も参加させられることになったわけだが…
中層での撮影か…
あまり気が乗らないな…

撮影場所のBarって場所にきたが、そもそもここで何を撮るんだと考えていたら福利厚生課の課長が台本を渡してきた。
なになに?
「Barで酔い潰れているところで、撃退する役」
それと同時に何か渡してきた。

………お酒の瓶だ。60%とか数字が書いてある。
さも当たり前のように渡してきた。

酒を飲んだこともないし、ましてや未成年の俺に。
見たことはあるが、そんなの下層で大人たちがごく稀に飲んでいるのを見たことあるくらいだ。
「上からパクってきた」「こっちの酒のが酔いやすい」とか色々言っていたが。いやそんなこと今はどうでもいい、それよりも…
「そろそろ撮影始めますよ〜」
困惑している中、そんなのお構いなしに撮影が始まった。

とりあえず、下層の奴らと同じように瓶の口から直接喉に流し込んだ。
喉や胸が焼けるように熱い。
吐き出したいが、下手なことして撮影を止めてこっちに注目を集めたくはない。
我慢をして流し込んだ。
「カット」
よしこれでなんとかなった次のシーンか
「リテイクでお願いします」
ぶち殺すぞ。
思わず口に出しそうになったが、酒と共にその言葉は飲み込むことになる。
リテイクを何度かこなし、最後に持っていた酒瓶を投げるシーンになった。

思考も身体も限界に近いが、どうやら顔に出ない体質らしくなんとか誤魔化しながらこれた。
酒、福利厚生課の課長、中層、上層、諸々の恨みを込めて酒瓶をぶん投げた。
「カット。これで本日の撮影は終わります」

やっと終わった。そう思うと同時に帰路に着いた。
そういえばまだ仕事残ってたような。かすかに残る思考を頼りにラボへと帰還した。
外務部室は入り、ソファは倒れ込んだ。
少し休憩するかと思った瞬間、限界が来た。
「ウッ」
体内から毒素を吐き出し、急激な眠気が襲ってくる。
朦朧とする意識の中で、最後の思考を巡らせる
「あいつ…絶対殺してやる…」
そこで意識が途絶えた。

翌日、外務部部長からお叱りを受けた。
部屋はどこかのロボが掃除してくれたらしい。
何か説教をしてるのはわかるが、頭が痛く何も入ってこない。
今日は帰れとのことで、下層へと戻った。

そういえば、こっちの酒も飲んだことなかったな、拠点にある一本の酒瓶を持ち、一口呑む
「……まず」


※お酒は二十歳になってから


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