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夜明け

「BANANA FISH」The Stage-後編-
観劇しました。

日に日に史也さんが前編を上演する前に言っていた言葉が大切に思えてきます。

舞台で死を描くことの意味は、カーテンコールでもう一度その役者が舞台上に現れることができるということ
(ニュアンスなので正確ではないです)

私が見たのはアニメだけれど話を大体知っていたので、この言葉が励みとなって後編を見に行きました。

前編から見るのが怖かったけれど、史也さんの言葉に何度も励まされてきた。


見たくないけれど目を背けてはいけないような、後ろめたいけれど美しいと感じずにはいられないような、アッシュの運命や英二の言葉が、そのまま舞台に乗っているといいなと思って迎えた観劇日。

BANANA FISHって、二度と見たくなくて、ずっと見ていたい
とよく思います。
舞台に乗ったBANANA FISHも、まったく同じでした。

(以下、ネタバレ注意)

役者がすごい。アンサブル含めすべての役者が役として生きていました。後編から入った二人が、ものすごい空気を動かしていたなあ。谷口賢志さんが圧倒的に恐ろしく、藤田玲さんのブランカは静かで熱くて暖かかった。
二人が声を発すると、空気がピンと張り詰めることが何度もあったな・・・

アッシュがゴルツィネの元に戻り、気が狂いそうになっている時のお芝居、もう見ていられないくらいでした。

これは他作品の感想含む余談ですが、A3!という作品の劇中劇で水江くん演じる万里が演じているドムという役の狂った演技を見たことがありますが、あの時とは比べものにならなかった。(もちろん万里という役を通していないのもあるのですが。)

穏やかで静かな声の繊細な芝居が、後編は増えたかな。でも凛とした声を、本当は助けてと叫んでるのかも?という声を、こちらは息を呑んで見守っているわけです。

そこに英二が来ると、安心する。英二は英二。震えが止まらないアッシュを抱きしめて、一瞬で安心するアッシュ。英二にはよく光が当たる。本当に神々しくて天使みたいな神様みたいな、どちらもこの作品では意味が色々含まれるから例えるのは軽率かもしれないけどそのどちらにもなり得る英二が時に恐ろしいくらい。強くて真っ直ぐで優しい。

おまけに解釈一致の私のツイートも載せときます。笑

月龍役の佐奈くんは、私は少し前に知ったばかりだけれどお芝居が好きで、楽しみにしていました。
月龍の複雑な心境や、年相応、もしくは経験してきた人生に対すれば当然の弱さや怒りがあって、美しくて醜くて強そうで弱くてでも燃えているようで、一筋縄では演じられない役。

わたしはたまたま史也さんと佐奈くんの出会いから共演歴を見守ることができていたので、史也さんが託したことに、なんとなく納得していました。

シンが最後に月龍のところに再び訪れて、言わば彼を許すシーン。あそこが一番幼くてどうしようもなくて、でもそれも月龍で、ブランカが言うように無償の愛を注いでくれる人に出会えたのかな、となんだが心が温まってしまうような可愛らしさ。それまでの真っ暗闇の中で生きてきた姿とはまったく違っていて、でもそんな月龍が存在することはもう既にこちらにも伝わっていたのに見られなかったものを今見られた、みたいな感覚。その差を演じ切れるのすごいなぁと思います。見てる時は、あらかわいい少年に戻っちゃって、ふふ。くらいに思ってるんですけどね!あの時のシンと月龍は、大変ないろんなものを乗り越えてきた、けれどまだまだ少年の二人が出会えてよかったなと思えました。

シンの、ボスになんてならなきゃよかった
これはもうかわいそうで弱々しくて、シンが背負ったものも本当に大きいなと。圧倒的なアッシュのもと、ショーターのようにはなりきれず、仲間が囚われたり殺されたり裏切られたり。やるせないこともあっただろうけど優しさと強さで真っ直ぐ最後まで自分の道を進んでいく。すごい子だと思います。椎名さん演じてくれてありがとう。

アクションがすごい。これは前編からすごい。身体能力がすごい。シン役の椎名さんはビルから落ちそうになるシーンを見事にやってのけました。後編の方が舞台上の段差や装置移動も多くって動かしてパルクールして動かしてバック転してやられ役が飛んで落ちてみたいな、とんでもない。あれ、毎日やっているんだと思うと、とんでもない!

そして史也さんの演出もすごい。

フォックスとアッシュが舞台上の上と下、縦になるように座って、手足となって動く周りの人たちがアクションを繰り広げるシーンは圧巻。社会の上層部で蠢く闇とそれに刃向かうアッシュたちの真っ向勝負、ボス同士頭脳のぶつかり合いを見せつけられた・・・。

アッシュと英二、どちらも互いのために神様に祈るシーンがあるけれど、一筋光が入って、神々しいこと。お互いが神様よりも頼りになる存在なんだよなあ

アッシュが最後に手紙を読む。手紙は絶対生で語ってくれると思っていたけれど、くるむくんに一つ課題を与えたような。空港からアメリカを離れる英二の行動を演じながら、アッシュを思う手紙をセリフとして話す。

これって、役者としてやってることは複雑で大変なんだけど、英二の生き方そのものですよね。

常に英二はアッシュのことを考えていて、それを体現しているような時間でした。

そして、舞台でしか描けない、最後、アッシュの元に駆け降りて、図書館で眠るアッシュの椅子に手をかけて言う

「僕の魂はいつも君と共にある」

まさにそこに英二の魂が寄り添ったのでした。

アッシュはあの瞬間幸福でたまらないんだ。
私にとってはアニメで見た最後のシーン、あまりに穏やかな寝顔をしていて、図書館の学芸員が声をかけずに去るところ。

舞台ではセリフもなく、ただ肩を叩こうとしてやめて帰っていく学芸員の姿。舞台でできる最善の正解。英二の手紙の声で幕を閉じる。アッシュの最後の記憶で幕を閉じる。

あの瞬間を夜明けとして、この舞台は終わります。

この作品を最高の形で、演劇として見られたこと、本当に幸せだと思いました。

何を言っても安い、少しまわりくどく言葉を並べ過ぎた気もしますが、書かずにはいられなかったので。

この作品がこの作品のまま、作る人、演じる人、観る人すべての愛に支えられて目の前に存在したことが、奇跡的だと思いました。

BANANA FISHが愛されて、アニメ化されて、舞台化されて、私が気づいて出会えてよかった。当時アニメをおすすめしてくれた人にも、誘ってくれたくるむくん推しにも感謝しなくちゃね!

もちろん、3時間そこらで描くために駆け足にはなっていると思います。でも、演劇にするにあたって描きたいシーンをぎゅっと詰め込んでくれている。やる意味があったと思います。原作で全てを知っている方こそ、その中で選ばれ描かれたシーンひとつひとつを感情移入して見れるはずです。動作ひとつひとつの真意を見抜けるのはあなた方だけです。どうか観に行ってみてほしい。

私はというとこんな文章を書いているわりには原作も同じようにもしくはそれ以上に怖くて見たくて見られなくてしていますが、やっぱり見届けないとな、と思ったので、そうします。番外編とかも。つまり、にわかが偉そうにごめんなさい。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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