お金の無い医師達ー第7話
翌日の夜、僕は夜の街にいた。
宮崎くんが指定した店に向かう。
新鮮な魚介と、山葵を売りにした和食の店のようだった。
「お疲れ様です!」
店に着くと、店の前で2人が立っていた。
宮崎くんに続いて、田中さんも挨拶をしてくれた。
2人ともいつもと同じスーツだが、病院の外で見ると、2人のルックスの良さが余計に目立つ。
夜の街は煌びやかな人間が多いが、彼らに負けず劣らずだと思う。
「お疲れ様、お待たせしました」
「こちらにどうぞ」
そう言うと、宮崎くんが中に案内してくれた。
奥の完全個室だ。これなら、際どい話もできる。
僕らは席に座り、酒を飲み始めた。
2人の慶應大学時代の話から入り、僕の大学時代の話を少しして、昨今の不動産市場や、切丸製薬の業績拡大ぶりへと話は移っていった。
「切丸製薬、本当に業績スゴいよねえ」
僕は宮崎くんを見ながら、言った。
「ええ、まさに僕ら営業部の力ですよ」
宮崎くんは自慢げに答えた。
「しかし、本当に金本先生と一緒にいるよね」
「それが仕事なので!僕だって好きでいるわけじゃないですよ」
「やっぱり、切丸製薬がお金を金本先生に渡してるんじゃないの?」
「違いますって!渡しているのは、僕のトークです、営業力です」
そう言うと、宮崎は自分の腕をパシンパシンと叩いた。
「それでも、僕は社内で一向に評価されないんです」
「だから早くこんな会社やめて、起業するんです!」
いきなり会社への文句と、フワフワした起業物語を語り始めた。
どうやら、本当に切丸製薬は金本先生に資金提供をしていないようだ。少なくとも直接的にはしていないか、それを宮崎が知らないか、どちらかだ。
「話は変わるのですがー田中さんは、霧島社長はご存知ですか?」
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?