「ベルハー=熱狂」というイメージについて

■ベルハーの魅力


「ベルハーは音源だけじゃ良さが分からない」

ベルハーことBELLRING少女ハートのサブスク解禁に際して、こんなコメントをよく見る。メンバーの鬼気迫るパフォーマンスと、オタクの熱狂的な盛り上がりにこそベルハーの魅力があり、曲単体では評価できないというような意見だ。こうしたコメントに象徴されるように、今ベルハーと言うと、ライブ中ひっきりなしにリフトが何本も上がったり、人が上から飛んできたり、半裸になる人が多数いたりみたいな荒れ現場を思い浮かべる人が多いのではないかと思う。実際、最後の方のライブは毎回そんな感じでメチャクチャだったし、公式も「東京最凶」なんてキャッチフレーズを掲げていた。でも、ベルハーの活動期間を通して、ずっとそういう現場だったわけじゃないし、それが本質だとはまったく思わない。

自分がベルハーを初めて観たのはデビューから5カ月後、2012年9月のライブだったが、その時観た風景を簡潔に説明すると、素朴な見た目の女の子たちのいわゆる“学芸会”的な拙いパフォーマンスを20代〜30代くらいのオタク十数人がコールしたり、フリコピしたり、ケチャしたり、それぞれ自由に観ているという感じ。地蔵の人も多かったし、リフトやサーフが起きる気配はまったくなく、荒れ現場とはほど遠かった。

自分の目から見て、何が他の地下アイドルと違ったかと言えば、間違いなく楽曲の質の高さ。運営の田中さんがリツイートする観客の感想で「呪いみたい」なんてコメントをよく目にしたけど、ベルハーのサイケでダウナーな楽曲には圧倒的な独自性があり、なおかつキャッチーでクオリティが高かった。当時のオタクと車でベルハーの初期音源をかけながら「マジでいい曲しかないな…」と語り合ったのを覚えている。楽曲のクオリティが注目されていたというのは、このMARQUEE編集長の記事なんかを読んでもわかるんじゃないか。ベルハーはライブを観ずに音源だけ聴いてもメチャメチャ良い。

■初期現場の雰囲気

もちろん単に曲が良かっただけじゃなく、現場にも独特な面白さはあった。当時の自分がもっとも異常に感じたのは、少数のオタクが突然発する奇声(MIX)。汚いMIXなんて地下アイドルのライブではなんも珍しくないけど、ベルハーの初期曲は上に書いた通り、呪いみたいに暗く、普通のオタクならMIXを入れようと思わないような曲が多い。そこに入れようと思った時点でクリエイティブだし、「yOUらり」の特殊な節回しのMIXなんかは完璧にハマって曲の一部と化していた。今の自分はMIXをそんなに良いものだと思っていないが、最初にベルハーの曲にMIXを入れた人たちはすごいと思う。

また初期のフロアにリフトやサーフなんかの迷惑行為はほとんどなかったものの、落ちサビでサイリウムを折って突撃したり、柵に登ったりと、沸くところではしっかり沸き上がる熱量があり、ライブリーダーの小夜さんをはじめとする王道的なアイドルオタクの人たちと「楽曲派」やBiSの研究員などのサブカル的な人たちが一緒に盛り上がっていた。一方で、初期のメンバーのパフォーマンスに勢いがあったとは言いづらいが、ライブ中に握手会を行うなど、変わった試みも多く、「爪痕を残そう」という意気込みは強く感じられた。

  • サブカル受けするような楽曲の数々

  • メンバーの素朴なキャラクターと学芸会的パフォーマンス

  • オタクと運営の「面白いことをやろう」という姿勢

これが初期ベルハーの魅力であって、ステージとフロアが渾然一体となったライブでその名が知れわたるのは中期以降。「ベルハー=熱狂」というイメージだけで語るのは完全に偏ってるし、初期のステージは牧歌的な雰囲気すらあったと思う(※あくまでフロアから見た印象)。

とは言え、自分が通い始めた頃から荒れ現場化の兆候はあった。ベルハー屈指のキラーチューン「the Edge of Goodbye」ではモッシュが定番となっており、モッシュでスマホを破壊された他現場のオタクがキレる事件なども発生。初期の代表的な荒れ現場が、としまえんの出禁ライブだ。この日の「the Edge of Goodbye」ではメンバーがステージを降り、スタッフに追われながらオタクの熱狂を先導した。

余談だが、みずほはこのイベントでしかとしまえんに行ったことがなく、としまえんにはスタッフに追いかけられた思い出しかないらしい。

■現場の過激化の要因

ベルハーの現場が徐々に凶暴化していった要因は、通っていた自分でもハッキリわからないが、やっぱりBiSの影響が大きいのかなと思う。研究員の人たちがよくリフトしていたイメージがあるし、ベルハーに通っていた研究員が発していた「面白いことをやろう」というより「やらなくちゃいけない」というプレッシャーから、自分含むオタクのパフォーマンスが激化していった気がする。もえちさんの加入後、そうみくん(動物園界隈とかいう集団の象徴になっていた人)をはじめとするピンチケが増加したこともあるかな?

あと多くのベルハーヲタはピンとこないかもしれないが、個人的に大きいと思っているのは、NATURE DANGER GANG、Have a Nice Day!に代表される新宿LOFTのスカム現場。自分は伝説的べルハーヲタ・オシャ番さんに教えてもらってスカム現場に何回か足を運んだが、「ここまでやっていいんだ」という学びがあり、盛り上がり方を取り入れていったところがある。スカム現場化した後期ベルハーは、ネイチャーやハバナイと対バンもしていた。

メンバーのパフォーマンスが変化した理由はフロアの変化以上に分からないけど、1つあるかなと思うのは、激しいライブで知られる後藤まりこさんの影響。後藤さんとの対バン以降、やたらメンバーが柵に登るようになった記憶があり、あーやんを中心にパフォーマンスが激情的になっていったと思う。まあ舞台裏の様子などは知らないし、メンバーについて確かなことは何も言えない。ライブの持ち時間がどんどん長くなり、120分のロングセットなんかもこなすようになった結果、シンプルに成長したってだけかも。フロアとステージでそれぞれ変化があり、その相互作用で暴動化していった。

以上、現場の雰囲気の変化を長々と書いたが、単に違ったっていうだけで、初期と後期のどちらが良いという話では全然ない。どの時期もそれぞれ良さがあって最高に楽しかった。後期のライブは団体競技やってるみたいな爽快感があったし、あんなにメチャクチャだった割には揉め事も少なかったと思う。つーか肩を叩いたら知らない人が持ち上げてくれるって今考えるとすごすぎ。

■BELLRING少女ハート’22について

ついでにこないだ始動した別人少女ハートことBELLRING少女ハート’22についてもちょっと書いておきたい。みずほが出るのかと思って「nestなんか絶対当たらねえだろうが……」と悪態を吐きながらチケット申し込んだら、なぜか当選してしまい、オリメンが出ないとわかっても譲渡できなかったので、ちょっとだけ観に行った。

事前の匂わせツイートなどから完全新メンバーを期待していたため、現アクビレック所属メンバーで構成されていると知ってガックリきたが、数曲観て「いや、これは全然やる意味あるな」と思った。なぜなら過去のベルハーと明確に音が違ったから。キックでズンズン体を揺さぶられて、すげー今っぽく感じたし、めちゃめちゃカッコよかった。後期ベルハーのライブも爆音ではあったけど、低音をそんなに強調してなかったと思う。MIGMA SHELTERを経たクラブ仕様のベルハーって感じ? と言っても、みずほの10周年ライブがあったから数曲で退場しちゃったし、自分は耳が良いわけでもないので、見当外れの可能性も全然あるけど、あの音を毎回浴びれるなら、リフトとかモッシュとかなくても楽しめるなと思った。

そしてメンバーも可愛いし、それぞれ個性があって良い。MIGMA SHELTERのメンバーはベルハーのオリメンとだいぶ雰囲気が違うが、違う方が絶対面白い。メンバーやそのファンの人たちは過去のベルハーが築き上げたものを尊重しなければとか思ってるみたいだけど、そんなの別に気にしなくても良くない? 新しい人たちで新しい盛り上がり方したらいいし、昔のベルハーができなかったことを成し遂げてほしい。

壁をぶち破れ!!!

こんなこと書くと「お前、また現場来てデカいツラするつもりか?」と思われそうなので言っとくけど、僕は通うつもりないです!こないだは内容不明でチケット買っちゃっただけなんで勘弁してください!これまで本当にすみませんでした!ベルハーにはマジで感謝してます!

皆さんご存知かと思いますが、僕は今、ベルハーオリメンのみずほが所属するSAKA-SAMAに夢中になっています。SAKA-SAMAがどんな現場かって一言で分かりやすく説明するなら「ちいかわ」。あんな生き物たちがニコニコ笑い合いながら、めちゃくちゃ良い曲を歌ってるのを想像してください。そんな夢みたいな現場が実在しています。SAKA-SAMAはこないだヤバすぎる2曲入りシングルを出したんですが、6月にはアルバムが出て、7月2日にはワンマンライブがあります。信じられないことに、このライブをもってみずほはSAKA-SAMAを抜けてしまうとのこと……😭

発表されてからマジで毎日泣いてるんですが、少しでも多くの人たちに今の奇跡みたいなSAKA-SAMAを観てもらいたいです。是非シングルを聴いて、ライブの予定をチェックしてみてください。僕がこの記事で伝えたいのはマジでそれだけです。

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