オバケレインコート　#毎週ショートショートnote

午前1時。男はコンビニで買ったレインコートを袋から取り出そうとする。震える手でようやく身につけると雨の中へ駆け出した。「急がなければ」そう呟き駆けていく男。焦りのためか、次の交差点に赤信号を無視して走り込んでいく。折悪しく一台の車と衝突、男は激しく飛ばされて、車は走り去った。
午前2時。ホームレスの男がコンビニ前を通り過ぎる。空腹だが所持金はなく、コンビニには入れない。やがて交差点に差し掛かると、道端に倒れている若者に気づいた。駆け寄り意識がない事がわかると、若者の懐に手を入れ財布を抜き取った。
　午前4時の警察署。ホームレスの男は窃盗の容疑で事情を聞かれている。「財布を盗んだ時どんな様子だったんだ？」「ずぶ濡れで倒れていました…」
それからしばらくして街に噂が流れ始める。深夜のコンビニ前から大通りを走るレインコート。実体は無くレインコートだけが走るように動いている。そして微かな声が聞こえる。「急がなければ…」と。

（410文字）

たらはかに様の企画に参加させていただきます。オバケというワードでかわいいファンタジーが描ける人。気味が悪い暗い話しか描けない人。私は後者です。