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チャリンチャリン太郎【毎週ショートショートnote】

  4月のある日、転校生がやってきた。「茶林太郎です」耳慣れない苗字にどよめきがおこった。「チャバヤシって言いにくい。あだ名はないの?」「前はチャーリーって言われてたけど…」「チャーリーはかっこよすぎや…」
 俺たちの住む地区では巨大団地を造成中で、茶林太郎は土建会社の社員寮にオカンと住んでいた。遊びに行くといつもオカンがヤカンでカルピスを出してくれる。いつしか仲間の溜まり場になってしまった。夏の間、俺たちは造成現場を自転車で走りまわり、作業員のオッチャンにどやされたりした。太郎は自転車を持っておらず、いつも後ろを走ってついてきたが、その度に首から下げた巾着がチャリンチャリンと音をたてる。いつのまにか「チャリンチャリン太郎」というあだ名がついてしまった。

 秋になり造成工事が終わると、茶林太郎は突然転校していった。カルピスを飲むたび、太郎のことを思い出す。あの巾着には何が入っていたのだろうかと考える。

(404文字)


たらはかに様の企画に参加しています。今回のお題が面白いせいか、皆さんの作品が上がるのが早くて恐れをなし、今回はやめておこうかと考えたりもしました。怖くて他の方々の作にはまだ一切目を通してません。
#毎週ショートショートnote
#チャリンチャリン太郎

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