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夜光おみくじ #毎週ショートショートnote

 この町の神社は「くらがりさん」と呼ばれている。名物は「夜光おみくじ」だ。くらがりでおみくじを引き、思い人と手を繋ぎ、片方の手でおみくじを結ぶ事ができれば御利益は倍になり、思い人とも結ばれるという。
 正月、俺は彼女を連れ「くらがりさん」を訪れた。ぎこちない関係が続く俺たち。今よりもっと仲を深めたい。俺はそんな思いを秘めていた。
 参拝の後、おみくじ小屋の扉を開く。彼女の背中を押し、真っ暗な小屋の中に入ると、人でいっぱいだ。手探りでおみくじを一枚掴み取る。夜光おみくじはぼうっと光り、文字が浮かび上がる。大吉だ!俺は隣にあった柔らかい手をぎゅっと掴んだ。もう片方の手で、おみくじを奉納所の棒になんとか結びつけた。
 扉を開けて外に出ると、冬の日差しが眩しい…。
「ちょっとお兄さん、離して」驚いて手を離すと、そこには見知らぬおばさんが立っていた。その後ろに半笑いで俺を見る彼女…。
 これから一年。どんなご利益があるだろうか。

(410文字)

 2024年1回目のたらはかに様の企画に参加させていただきます。
 あけましておめでとうございます。大地震や大事故などで不穏な新年のスタートとなりました。そんな時に創作していられる事は幸せですね。

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