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お題【桜回線】 #毎週ショートショートnote

「春の空の下、輝く桜よ」「はるか遠く光の回廊を作る桜よ」「溢れる力は、否応なく我等を励ます」「桜は全力で春を表現しているのだ」
1974年、14歳の春に僕らは出会い、同人誌「桜回線」をはじめた。「桜回廊」を「桜回線」と印刷してしまい、そのまま定着してしまったのだ。春を迎えるたび、僕らは桜の詩を創り、唱和し、桜並木を歩いた。一本の桜を「同人の木」と定め、毎年春にこの木の下で集まろうと誓いあった。
 あれから50年。64才になった僕らは、久しぶりに桜の木の下に集う事にした。いつもの場所へ向かうと、そこには切り株だけがあった。やがて、苗木とスコップを持って数人の仲間が合流してきた。
「間に合ってよかった」
「木は枯れてしまったんだ」
「皆が集まる時に、新しく植樹をしようと思ってね」
花が咲くには数年はかかるだろう。残りの人生、何度か皆と楽しむ事ができるかもしれない。「俺たちが死んだ後も木は残るさ」春の空の下、僕らは笑い合った。
(410文字)

たらはかに様の企画に参加させていただきます。シンプルだけど難しいお題でした。

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